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25:襲来


マイラが目を覚ましてから二日後…。


「レイル殿は居られますか!?」


練兵場で鍛練をしていたレイル達の所に兵士が慌てて駆け込む、レイルとイデアル、控えていたキリムを見ると足早に近付きまくし立てた。


「さ、山岳地帯より竜種の群れが侵攻して防衛線を突破!至急謁見の間に集まる様にと!!」


「「「っ!?」」」


届けられた一報にその場にいた全員が驚愕した。






―――――


「一体どういう事だ!?」


謁見の間に集まるとゾルガの声が響く、伝令役の兵士は使い魔によって届けられた情報を伝えた。


「宿場町を基点に布陣した防衛線に竜種の群れが侵攻!先頭にいた黒竜の攻撃によって陣を破壊されました!防衛線の司令官から命じられ離れていた伝令によりますと防衛線を突破した竜達はまっすぐに王都に向かっており侵攻速度からして飛竜(ワイバーン)や上位個体は間もなく目視できる距離まで来ると!!」


「…くっ!陛下、すぐに兵士達を総動員させて迎撃準備を行います!!」


「お前も行け、ここでやられたら元も子もねえ」


ゾルガは言うや否や身を翻して部屋を後にする、バルセドは配下の白騎士に命じると騎士達も足早に部屋を後にした。


「フラウ、貴方の魔術で群れをまとめてとはいきませんかな?」


「無理よ、竜種となれば生半可な魔術で倒す事は出来ないもの、それに飛竜や翼持ちの群れを相手にするなら地上にまで気が回らないわ」


「だとすると地上の群れは軍で対応するしかないな…」


「チッ!そもそも侵攻は一週間後じゃなかったのかよ、別に信じちゃいなかったがまだ三日しか経ってねえぞ」


「…ひとつ聞いても良いですか?」


一人思案に沈黙していたレイルは伝令役の兵士に視線を向ける、兵士が首肯するのを見て問い掛けた。


「こちらに向かってる群れは竜種だけなんですか?他の魔物や竜と行動を共にしてる者はいなかったんですか?」


「は、はい!使い魔より得た情報の中には他の魔物や人影は見当たらず、群れは全て竜種で構成されています!」


兵士の情報にレイルは顔をしかめながらも思案する、グリモアはそれを見るとレイルに声を掛けた。


「何か気になる事が?」


「いえ…もしかするとこれは侵攻ではないんじゃないかと思いまして」


「侵攻じゃねぇ?今まさに奴等はこっちに来てんだぞ」


レイルの発言にバルセドが声を上げる、レイルはバルセドに向き直ると自分の考えを述べる。


「アスタルツに侵攻する時は連絡手段を断ち、逃げられない様に周囲を大群で包囲してから断続的に襲撃して心身共に休む間もなく追い込んでいた」


「それがなんだってんだ」


「これだけの手間を掛けて合理的な侵攻をした相手がこんな雑な襲撃をするのは違和感があります」


レイルの意見にバルセドを始めとしてその場にいたものは口を閉じて続きを促した。


「嘘の宣言をして襲撃するならこんな白昼堂々に竜種だけで侵攻するよりも他の魔物も連れて魔物が活発化する夜に襲撃する方がより効果的でしょう、なのに相手はそれを指揮する者どころか他の魔物すらいない」


「…確かに、連絡手段を把握してるならそれを真っ先に潰す様に動いておかしくない筈なのに」


「なら今回のこれはなんだってんだ?現に防衛線を突破してきてる奴等は何の為にこっちに来てる?」


「…おそらく」


レイルが疑問に答えようとした瞬間、勢い良く扉が開けられ兵士が片膝をつきながら報告をする。


「じょ、城壁の物見が黒竜の姿を確認しました!その背後に続く様にワイバーンの群れの姿も!!」


届けられた報告を聞いたレイルは急いで部屋を後にしようとする。


「あ、おい!」


部屋を出ようとするレイルは一瞬だけ振り返ると先程言いそびれた内容を口にする。


「おそらく相手の狙いは…俺です」


そう言って部屋を出たレイルにセラ達も後を追った。







―――――


「飛ぶわよ、掴まりなさい」


城を出るとフラウの魔術によって城壁の前に一瞬で到着する、見れば隊列を組んだ軍の先には黒竜=クロムバイトの姿があった。


ワイバーンの群れは軍を無視して空から王都に入り込もうとする、フラウは一人飛び上がると魔術で群れを牽制する。


「レイル君、私は将軍と合流して下位種の相手をするわ」


「了解した」


シャルはそう言うとレイルとセラから離れる、視線の先にはクロムバイトの背後から土煙を上げて迫る竜の群れが見えた。


クロムバイトを避けてふたつに別れた竜の群れは布陣した軍に向けて突き進む。


クロムバイトはレイルの姿を見ると翼を拡げてすぐ近くに降り立つ、その周囲だけ穴が空いた様に竜も人も避けた空間が生まれた。


「かかか、こうして相対するのが久しく感じるぞ」


「…何故こんな事を」


「邪魔が入らぬ様にしたまでよ、まあ万全にとはいかん様だったがな」


クロムバイトはそう言って傍らにいるセラを見る、だがすぐに顔を歪めて笑う。


「その娘も中々の力を持つ様だな、良いだろう…貴様にも喰らい合う資格をくれてやる」


クロムバイトが翼を拡げて魔力を放出する、かつて戦った時よりも更に圧が増していた。


「さあ…始めようぞ!!!」


二人に目掛けてクロムバイトの口からブレスが放たれた…。

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新作書き始めました、良ければご覧ください。 侯爵次男は家出する~才能がないので全部捨てて冒険者になります~ https://book1.adouzi.eu.org/n3774ih/
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