閑話:親としては
明けましておめでとうございますorz
「あー…」
ウクブ・カキシュとの戦いからレイルが目覚めた直後、王城のテラスでフラウはテーブルに突っ伏していた。
「些かはしたないですねぇ、フラウ」
「…部屋から出たかと思ったらどうしたんですか?」
向かい側にはライブスが座っており、その傍にシャルロッテが佇みながら問いかける。
テーブルには紅茶と菓子が置かれているがフラウは紅茶を一息に呷ると再び机に突っ伏してしまう、その姿は仕草だけならば完全に酔いが回った中年であった。
「…久々に寝ずの研究して聖具の解析やら対抗魔術の構築やらやってたのよ、太陽が眩しいったらありゃしないわ」
「でももう目処がついたんですよね?でしたらすぐにお休みになられた方が良いのでは…」
「それはさほど問題じゃないわ、私は最悪寝なくてもなんとかなるもの」
「では何が…」
「やる事やったから目を逸らせなくなったのよ…」
シャルが何の事かと問おうとするとフラウはがばりと顔を上げて椅子から立ち上がる。
「セラに男が出来たって事よ!しかもゼルシドの弟子よ!?」
「やはりそういう事でしたか」
フラウの叫びにライブスは確信を得たとばかりに頷く、長年共に戦い続けた友がどういう人物かを理解しているからこそ出来た予測だった。
「えっと…要はレイル君とセラちゃんの間が気になるという事でしょうか?」
「まあ当たらずとも遠からず、と言った所でしょうねぇ」
シャルがそう呟くとライブスがにこやかに答える。
「なにぶん彼女にとってセラ君は実の娘と変わらぬほどの愛情を注いだ子ですからねぇ、親としては色々と思うところがあるのでしょう」
「喜ばしい事では?」
「そうではありますが彼女はゼルシド君とは口喧嘩が絶えない仲でしてね、その弟子であるレイル君がその相手であるという事に複雑なのでしょうな」
訳知り顔で語るライブスは昔を思い出す様にして頷く、かつてパーティを組んでいた際は直感的なゼルシドと理論的なフラウは反りが合わず度々喧嘩をしてはライブスが止めるという事が多かった。
「そりゃいつかはと思ってたわよ、でもいざ前にしたら…」
再びテーブルに顔を突っ伏してしまったフラウはぶつぶつと呟く、仮に酒場の店主がいたら無言で水を差し出してるだろう雰囲気を出していた。
「心配する必要はないと思いますがねえ、私見ですがレイル君とセラ君はとても良き縁だったと思いますよ」
「そうですね、レイル君は歳の割に落ち着いた考えや判断力を持っていますし端から見てもお互い大好きっていうのが伝わってきますしね」
なにせセラにこっそり渡してた避妊薬がなくなるくらいには仲睦まじい、とは流石に言わなかったが心の中でシャルは付け足した。
「それに今や私と同じ黄金級冒険者ですからね、しかもセラちゃんに対して一途ですし…こう言ってはなんですがかなりの優良物件ですよレイル君」
「なにせ私も最初は分からなかったですよ、ゼルシド君の弟子とは思えないくらい聡明で礼節を通していましたからねぇ」
反面教師にでもなったのでしょうか、と笑いながらライブスは語った、雰囲気や言葉からライブスの方から見てもレイルは評価は高いと分かる。
「…分かってるわよ、それくらい」
フラウはそう言いながらむすっと頬を膨らませる、セラから話を聞いた際の嬉しそうな様子を思い出せば良い出会いをしたという事ぐらい理解できる。
だからこそレイルともきちんと話してみたいとは思うのだが…。
「誤解して襲い掛かったのが気まずくて話せないわ」
「…謝れば良いのでは?」
「拗れに拗れてセラにまで嫌われるのが怖い」
「どれだけ悲観的なんですか!?」
「セラに嫌われるくらいなら私は世界を敵に回すわ!!」
「…謝らないままなのもセラ君に嫌われそうな気がしますがねぇ」
ライブスの一言にフラウは「ぐふっ!?」っと言い残してテーブルに突っ伏してしまう。
「…なんでしたら私がとりなしますから謝りに行きましょう?レイル君も話してみればどういう人か分かるでしょうから」
「…お願いするわ」
弱々しく呟かれた言葉にシャルは頷く、気付けば魔女帝と謳われる存在に対する緊張はいつの間にかなくなっていた。
フラウの人となりをようやく書けました




