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ひめみこ  作者: 転々
第十七章 中学校最後の半年
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神子たち

 入浴後はホテルのレストランで食事。残念ながら洋食だ。

 酒精の薄い食前酒で乾杯して食べ始める。沙耶香さんはソムリエと思しき人を呼ぶと、ワインをフルボトルで一本。グラスは二つ。

 ちょっと期待して見てたけど、そのグラスは直子さんの前に置かれる。残念。

 まぁ外見から言って順当か。神子はほぼ全員が童顔だけど、直子さんはしっとりとした和風美人だ。




 みな、ぼちぼちと箸を進める。ナイフとフォークは沙耶香さんと優奈さんだけ。他の神子たちは、初めこそナイフとフォークだったけど、二皿目の前菜盛り合わせから箸になった。ちなみに、私だけは初めから箸。箸が一番似合わなそうな外見だけど。


 料理は、スープ、軽めの魚料理と進む。沙耶香さんはなかなかのペースで飲む。大丈夫かな? あ、またソムリエっぽい人を呼んだ。今度は冷酒の冊子を受け取った。


「昌ちゃん。どれがオススメ?」


 うーん? 洋食と日本酒はどうだろう?


「今日の料理に合わせてとなると、ちょっと難しいかな。

 単に飲むだけならコレが美味しいですけど、料理に合うか分かりません。

 こっちの辛口のが無難だと思います。でも、ソムリエの人に訊いた方が確実かと」


 沙耶香さんはソムリエの人にも訊いていたが、結局は無難な選択をしたようだ。でも、ワインと冷酒のちゃんぽんなんて、悪酔いしないかな?


 直子さんは二杯目のワインを持て余しているが、冷酒の瓶もチラチラ見ている。結局、ワインを千鶴さんに処理してもらい、冷酒に行った。あ、千鶴さんもグラスを持ってる。ズルい。

 ところが、千鶴さんは辛口が苦手だったのか、あるいは肉料理と合わなかったのか、ちょっと苦い顔。




 私たちは健啖家ぶりを発揮してレストランを後にした。舞ちゃんだけは「太らないかな?」と心配顔だ。もともと彼女は太りやすい体質だったからだろうか、そういうのが身についている。

 でも、これから部屋で第二ラウンドだぞ。




 開けて日曜、七時半に朝食場所で集合。


 昨日あれだけ飲んだのに、沙耶香さんはいつも通り。他の神子たちも同様で、この姿から昨日の部屋呑みを想像できる人はいないだろう。


 七人で六人掛けのテーブルを二つ占領すると、各々取りに向かう。温泉の朝ご飯も好きだけど、こういうビュッフェ形式もいい。つい食べ過ぎてしまうのが良くないけど。


 とりあえず、小さな皿に盛り付けたサラダと、フルーツサラダにプレーンヨーグルトを取ってくる。まぁ、この辺は私の外見通りではあるが……、改めてもう一度取りに行く。こっちがメイン!

 今度は、大きめの鉢に味噌汁の乾燥わかめとネギを入れ、おつゆではなくお粥を入れる。そして温泉卵とホウレンソウのおひたし、アラレ入りの海苔を入れ、湯豆腐用の薬味を乗せる。


「何を取りに行ったかと思ったら……」


 沙耶香さんは私の朝粥に呆れ顔だ。沙耶香さんはクロワッサンとベーグル、カップ入りのポタージュ、別の皿にはスクランブルエッグとサラダ、そしてコーヒー。

 ちょっと多めだけど、外見とバッチリ合っている。


「へー、美味しそうなことするわね」


 後ろから声をかけてきた留美子さんも、沙耶香さんと似たようなメニューで、スープはタマネギとベーコンのだ。びっくりしたのが千鶴さんのお盆の上。パンの代わりにカレーライスが乗っている。


「あれ? カレーなんてありました?」


 私が訊くと「あっちにあったわよ」と指を指した。よし、お替わり確定だ。


「「いただきます」」


 それぞれ手を合わせ、食べ始める。いち早く食べ終わった私はお替わりだ。カレーの方に行くが、私が作ったのはカレーうどん。セルフなのをいいことに、湯がいたうどんにカレーとつゆを半々に入れれば完成。


「あーっ、それは思いつかなかった!」


 千鶴さんは悔しそう。




 食べていると、周囲りから視線を感じる。他の宿泊客、特に女性客が、今日も朝から健啖家ぶりを発揮する私たちをチラチラ見ていくのだ。


 いや、こっちのテーブルだけじゃないぞ。隣のテーブルじゃ直子さんだってすごいし、優奈さんは……、お替わりを取りに行ってる。

 舞ちゃんだけが、呆気(あっけ)に取られているといったところ。


 でも、女優のような沙耶香さんと、デビューを控えたアイドルグループのような私たちが、この分量を食べる姿はいろいろ見ごたえがあるに違いない。




 その後、いつも通り勉強会をして解散となったが、私と舞ちゃんはもう一つ訓練が残っている。


『格』の制御だ。


「『格』ってなんですか?」


 思わず笑ってしまった。それに舞ちゃんは「どうして笑うんですか!」と憤慨する。うん。少しはくだけてきたかな?


「ゴメン、ゴメン。

 実は私も初めて顔合わせをした日に、沙耶香さんに同じことを訊いたから、それを思い出しちゃって」


 私は、概要を説明する。現在の中高生にはゲームやアニメに喩えるのが一番伝わる。私も光紀さんに勧められて深夜アニメを見ていた。当たり外れは大きかったけど。

 そう言えば、変容してすぐの冬に見たアレは下品だった。当時は『私』の感性が強く残っていたから笑えたけど、今の私だとちょっと受け容れられないかも知れない。って、今は関係ない。


「とりあえず、感じて貰うのが一番手っ取り早いかな。

 ほんのちょっとだけ、『格』を出してみるね」


 出力は五パーセント未満。最低レベルだ。

 舞ちゃんは眉根を寄せる。


「これが『格』だよ。神子と普通の女の子の違い」


「何となく、気迫、みたいなモノを感じます」


 とりあえず、今日の目標はコレをオン・オフ出来るようになることだ。自分の経験からいろいろと説明する。やはり、意思を通すという気持ちを外に出すことがカギになるようだ。




 かなり集中してオンにすることだけが出来た私と違い、舞ちゃんは初めてなのに、徐々に強くするというレベルの制御が出来ている。

 それでも、狙った強さを保つとか、徐々に弱くするといった制御はまだ出来ない。『格』自体も、これが最大かどうかは分からないが、私の一割強といったところか。


「まずは、こんな所じゃないかな。集中してオンに出来るだけだった私よりも、十分に制御できてるよ」


「ありがとうございます」


 その後、訓練は可能な限り毎日続けること、訓練のときはなるべく人と距離をおくことを指示する。最低でも五メートル。出来れば十メートルは離したい。




 新横浜で別れる前に、喫茶店でお茶の時間にする。


「初めての合宿、どうだった? 楽しかった?」


「はい!

 初めて会った人ばかりだけど、みんなで一緒に武術をしたり、勉強したり……、お酒を飲んだり。こんなの、初めてです。

 お風呂はちょっと恥ずかしかったですけど……。

 あと、みんな沢山食べるのにびっくりです」


「よかった。辛いとかがなくて。

 でも、言われてみると確かに、神子って大食いばっかりだね」


「みんなすごいなぁって。勉強も、私より全然出来るし、特に昌さんって、中三なのに大学受験の勉強を教えてるし……」


「そりゃ、詳しくは口外できないけど、私は大学出てたから。他の神子たちもみんな年上だよ。一月前の舞ちゃんより。

 そして舞ちゃんも、今はそのすごい集団の一人だからね」


 その後、当たり障りのない会話をして駅に向かう。


「舞ちゃんは、もっと胸を張って、自信を持って歩けばいいよ。

 客観的には容姿端麗、成績優秀な美少女なんだから。

 いずれはここに品行方正、文武両道が加わればいいね」


「私は品行方正です!」


「なら、あとは文武両道だけだね。頑張ろ!

 じゃ、また。次の合宿でね」


 そう言って、私は新幹線の改札に向かった。

 舞ちゃんの二度目の中学生。実りの多い時間になればいいな。それに比べれば、神子の立場なんて大した意味は無い。

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