6-2
瞬間、得体の知れないこの状況……私は本能的にそう思ってしまった。
……ど、どうしよう? いっそ、桜花か泰介さんがくるのを待ってから、教室に――その時だった。
「――おい、小出ぇ? 何そんなとこで突っ立ってんだよ? 早く入れよ? ……くくっ」
真ん中の列の、後ろから三番目の席……。
確か昨日、日直をやっていた……そう、〝長山〟…くん、とかいう人だ。その人が突然、不気味に口元だけで笑いながら、私に声をかけてきたのである。
「あ! は、はい……ごめんなさい…………」――と、半ば反射的にそう答えてしまった私は、それから仕方なく、教室に足を踏み入れた。
変わることのない、痛いほどの〝視線〟……私はなるべくそれを直視しないように、そして、できる限り音を立てないように、真っ直ぐに自分の席へと向かった。……たかだが三~四メートルの距離が、妙に長く感じられる。
そして、ようやくの思いで自分の席にたどり着いた私は、ポス、とこれもなるべく静かにカバンを机の上に置き、ノートを手に持ったまま席に座った。そこで、誰にもわからないようにゆっくりと、俯いて一度ため息をつく。
…………冗談を抜きに、本当にいったい、これはどうしたということなのだろう? 知らぬ間に私は何か……〝悪いこと〟でも……してしまったのだろうか?
心当たりは……ない。何度探しても、私の中には全くと言っていいほどに、何も思い当たる節は見つからなかった。
……それなら、どうして……???
ぎゅっ……私はそれから、膝の上に乗せていた手を……ノートを持っていた手を、強く握った。
……あれ? ――と、ほぼ同時だった。
私の目線の先……そう、それはちょうど、私が置いたカバンの下……つまり机だ。机そのものに、何か〝キズ〟が……違う。〝文字〟が、〝直接机に刻みこまれていた〟のである。
……な、なに……これ……? こんなの、昨日まではなかったはず……だよね…………?
ドクン、ドクン、ドクン……言いようのない〝不安〟が、心臓の音となって私の身体中を駆け巡った。
ごくん、と私はそれに思わず唾を飲み込み、しかし、どんな方法でもいいから、この不安から一刻も早く〝解放〟されたい……その気持ちから、むしろ、自らカバンに向かって手を伸ばしていた。
そして……カバンを掴み、横にずらした――瞬間だった。私の眼に、〝それ〟は飛び込んできた。
【 この、〝露出狂〟が!!! 】
――ドサッ。
「ひっっ!? ――いやああああああああああぁぁぁぁぁっっッッッ!!!!!!!!!!」




