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……ここはもう、何も言わない方が身のためだな。言われたことだけに答えるようにしよう。
ボクはそう考え、口を閉じた。
――しかし、突然、だった。
「――よしっ! じゃあ〝こうしよう〟じゃねーか!」
……え?
――その言葉に思わず顔を上げた先には、なんと〝笑顔〟……そう、長山くんはなぜか、先ほどの怒りがまるで〝ウソ〟だったかのように、唐突に〝笑顔〟になったのだ。
え? え??? とボクは混乱から戻れない。
そんなボクに長山くんはゆっくりと近づき、耳元でささやいた。
「……くくっ、聞く話によると、オメェーも相当な〝ワル〟みてーじゃねーか……どうだ? ここは一つ、俺と〝取り引き〟でもしねーか?」
……ボク、学校中でいったいどんな噂をされているんだろう? 何ゆえにボクが〝ワル〟なの? 何かしたっけ、ボク???
「…………」
「……ダンマリか? まぁ、それでもいいけどよ」
どうやら長山くんはそれを何か勘違いしたらしい。構わず続けた。
「じゃあこっちの言いたいことだけ言うが……お前、〝小出 愛梨〟とはどんな関係なんだ?」
「え? 〝愛梨さん〟??? 愛梨さんとは……って、何でそんなこと聞くの? 今のことと何も関係ないんじゃ――」
「いいから答えろボケェ!!!」――そう強く言われ、仕方なくボクは話した。
「た……ただの、〝友だち〟だけど…………」
……本当だ。ウソは何も言ってはいない。愛梨さんとはこの学校にきて出会った、初めての〝友だち〟だ。
だけど……それがいったいどうしたというのだろうか? 気になったけれど、ボクは静かに、長山くんの答えを待った。
すると、次の瞬間だった。
「そうか、ただの〝お友だち〟か……だったらそれ、俺に〝くれ〟よ…………!!」




