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――校庭の一角。
そこに着いたボクは、さっそく先ほどの窓の場所を確認し、地面に〝へばり付いて〟スマホの捜索を開始した。
もはやなりふりなど構ってはいられない! なぜならスマホとはご存じのとおり、〝高い〟のだ。いくら激安のが出ているとはいえ、現在のボクの全財産……〝十四円〟でどうにかなるとはとても思えない! ――そう! つまり、と何度も言うけれど、ボクはあれを失ってしまったら〝破産〟してしまうのだ。その瞬間、それを知ったボクの〝お母ちゃん〟が……ぶるる! 考えただけでも恐ろしい。とにかく早く見つけなくては!
そう決意したボクは、シャカシャカ、とコードネーム〝G〟のように地面を這いずり回る。
……え? 〝体裁〟? ナニソレ? ボクにそんなものがあるとでも思ってるの? ――って! 悲しいこと言わせないでよ! これでも一応気にしてるんだから!!
くぅぅ! ボクは、そんな情けない自分に涙した。
――次の瞬間だった。
――ドンッ! 「うおっ!?」
探し中にも関わらず、しっかりと前を見ていなかったせいで、ボクは人にぶつかってしまったのだ。
しかも足下……その人は文字どおり足下をすくわれ、すてーん、と地面にしりもちをついてしまった。
――あ! しまった!!
後悔してももう遅い。ボクは慌てて方向転換し、とにかくその人に謝っ――
――ボトッ!
――その時だった。
振り返ったボクの目の前。突然降ってきたのは、青い〝スマホ〟……
――〝ボクのスマホ〟!!?
がばあっ!!
思わず跳びついた。そしてすぐさま座り直して画面を開くと……間違いない! お姉ちゃんとウチで撮ったツーショットの待ち受け画面! これは〝ボクのスマホ〟だ!! しかもどこも壊れてはいないぞ!!
「――ぃやったー!!!」
ドーン! グオン――ツ○ペリ男爵を彷彿させるかのような、座ったままの高い跳躍……地面に降り立ったボクは、同時に、グワシィ! 思いっきりスマホを抱きしめた。
「お帰りボクのスマホ! よくぞ無事だったボクのスマホ! もう離さないぞボクのスマホ!」
うわーん! ボクは泣いて喜んだ。――当たり前だ。
失ってしまった〝不安〟。
破産への〝恐怖〟。
お母ちゃんからの〝絶望〟……。
それら〝全て〟から一気に解放されたのだ。これで泣くな、という方が無理である。
よかったよかった……そう思った、その時だった。




