5-11改
ミッション【1】
女子生徒のスカートに付いたホコリを〝何とかしろ〟!
「――あ、ねぇちょっとそこのキミ? スカートがホコリまみれになってるよ?」
女子生徒たちの姿がすぐ目の前に見えるくらいにまで近づいたボクが、そう声をかけると、女子生徒はすぐに汚れたスカートに気がついて声を上げた。
「――えっ!? ウッソ! ……ガチじゃん!! うわぁ! ちょっ! サイアクなんだけどマジで~!!」
パンパン! 女子生徒は必死に自分のおしりを叩いてそれを掃ったけれど……ダメだ。見えないせいか、全然見当違いの所を叩いてしまっている。
「しょーがないな~」
やれやれ、ボクはため息をつき、それからさらに数歩女子生徒に近づき、手を伸ばした。
そして、
「ほら、〝ここ〟だよ〝ここ〟!」
「へ?」
――パンパンパン……。
見えていない女子生徒の代わりに、ボクはそれを〝手で〟掃ってあげた。
「……はい、きれいになったよ! ……ダメだよ? 座る時はちゃんと、座る所がきれいかどうか確認しなくちゃ? 今回はホコリだったからよかったけど、これがもし――」
――次の瞬間だった。
「――くぅぉぬぅぉ〝変態〟があああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
パンパンパンパンパン……パアアッンッッッ!!!!! 「――ッッッ!!!??????」
――突然、だった。
突然、ボクの頬を襲ったのは〝往復ビンタ〟――だけではない。
女子生徒が放つ最後の〝一撃〟……まるで野球のボールを投げるがごとく、大きく振りかぶられたそれは、グーではなく、〝パー〟……女子生徒はそれを何のためらいもなく、すでに燃えるように熱く、そして腫れ上がっていたボクの顔……〝顔面〟に向けて、叩きつけたのである。
声……なんて、出せるわけがなかった。――当たり前だ。鼻を、口を、〝平手〟で思いっきり叩かれたのだ。声どころか、〝呼吸〟すらままならない。
――どさあっっ!!
……それからボクが床に倒れるまでにかかった時間は、ほんの僅かなものだった。
「かッッ……!!! く…か……ッッッ!!!!!」
ボタボタボタ、と鼻血やら口血が流れ続ける顔面を両手で押さえ、床の上をのたうち回るボク……当然、激痛による涙で目も開けていられるはずもなかったため、実際のところはどうなのかは分からなかったけれど……たぶん、それを〝虫けら〟でも見るかのような、冷たい視線で見降ろしていた女子生徒は、禍々(まがまが)しい〝殺気〟と共にボクに言い放った。
「……次やったら、〝サツ〟に突き出す!!!!!」
……〝サツ〟、じゃなくて、〝警察〟って言おうね? せめて……何てことを考えている余裕は、もちろんなかった。
――それからボクに聞こえてきたのは、その女子生徒が去って行く足音だけだった……。




