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4-14改


            【視点・泰介→〝愛梨〟】


 ――テーブルに並べられた料理は、チャーハン。レタスとベーコンの中華卵スープ。そしてから揚げの、計三品だった。

 〝それ〟を見る前は、あわよくば私の料理の腕前を泰介さんに披露(ひろう)しよう……なんて、考えていたのだけれど、見た後で、本当にそんなことを言い出さなくて〝よかった〟……と、私は心の底から〝安堵〟していた。

 ――なぜか? それは……泰介さんは運んできたお姉さんをすぐ近くにあったソファーに寝かせると、それから信じられないような〝手際の良さ〟で、私が手を出す隙も一切ないままに、瞬く間にその料理を作り上げてしまったからである。

 ……とは、具体的に説明すると……まず、急に私が加わってしまったことにより足りなくなってしまったご飯の分を、冷凍保存してあった予備の冷凍ご飯をレンジにかけることにより、これをクリア。

 それが温まる間に行ったのは、油鍋とフライパンと手鍋を……なんと〝三つ同時〟だ。設置してあるコンロ〝全部〟を使ってそれらを火にかけ、手鍋の方には、時間短縮のために水ではなく、最初から電気ポットに入っていたお湯を入れる。

 泰介さんはそこに手でちぎったベーコンを入れて、その流れでさらにベーコンを今度は包丁を使って細かく切っていく……ちなみにこちらはチャーハン用だ。泰介さんはそれを切ったそばからフライパンに入れて炒めつつ、隣で葱をみじん切りにしていた。

 そして、葱のみじん切りとベーコンの炒め作業を終えた泰介さんは、続いて冷凍庫から取り出した(こちらもすでに作って冷凍してあった)から揚げをちょうど温まった油の中に入れ、その後レタスをちぎって沸騰した手鍋の中に入れて火を弱める。と、ほぼ同時にレンジが、チンッ♪ と鳴り、泰介さんはそれを取り出して、炊いたご飯、そして炒めたベーコンとをいっしょに混ぜ、かつその際空いたフライパンを熱し、その間に卵を三個ずつ二つに分けて割り溶き、その片方をベーコンごはんに流し入れた。そしてさらに、そこに塩コショウ、味の素を加えて混ぜ、熱くなったフライパンに入れる(ちなみに油はベーコンを炒めた時に十分出ているため一切加えない)。――あとは普通強火でやるところをまさかの〝中火〟で程よくかき混ぜながら、油の中のから揚げを焦げないようにひっくり返しつつ、ある程度ご飯を炒めたところで、みじん切りの葱、そして少々の醤油を加えてそのままチャーハンを完成させ、さらにスープも同様に固形中華スープの素を入れて塩コショウで味を調え、残ったもう片方の溶き卵を入れてこちらも完成。そしてそのすぐ後に揚げ終わったから揚げを揚げ台に乗せて余分な油を切りつつ、その間に完成した三人分の料理を盛り付けて………………。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……って、え? ナニコレ? ……え??? 泰介さんって、実はプロの料理人……とか言わないよね? ……料理をしたことがない人にはわからないことかもしれないけど、こんなの手際が良いとか、〝そんなレベルじゃない〟んだけど? 見てるだけでこっちの目が回っちゃうよ。

 「――あの、泰介さん? ……いつも、こんな速さで料理を……?」

 着いた席で思わず聞くと、泰介さんは、え? と首を傾げながらも、私の質問に答えてくれた。

 「うん。まぁね? だってお姉ちゃんを待たせるとぐずっちゃうし……それに、愛梨さんだってお腹空いてるでしょ? せっかくきてくれたお客さんを待たせるわけにはいかないよ」

 「え!? いえ! そ、そんな! お気を使わずに!」

 まぁまぁそう言わずに。そう微笑みながら、泰介さんは続けた。

 「――そんなことより、温かいうちに食べてよ。即席の簡単な料理だから、愛梨さんの口に合うかどうか分からないけど」

 「そんな! 絶対合いますからだいじょうぶですよ! 喜んでいただきます!」

 「は~い❤ お姉ちゃんも喜んでいただきま~す❤」

 「うん。じゃあ、ボクも……いただきます!」

 ――パクッ。

 ……この日、この料理を食べた、その瞬間からだった。


 私は、この先何があろうとも、泰介さんの前では決して「私も料理は得意なんですよ❤」などと言うまいと、心に誓った……。


 ……〝格〟が……違いすぎです……泰介さん………………。






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