4-11改
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――数分後。
「――ゆりちゃん先生。終わったよ」
「あら、早かったわね?」
ボクがミニ実力テストを受けている間、愛梨さんたちと談笑していたゆりちゃん先生は、それを聞いてすぐに赤ペンを持って立ち上がり、ボクが差し出したテストを笑顔で受け取った。
「――では、お手並み拝見……」
――ただ今採点中。少々お待ちください……。ただ今採点中。少々お待ちください……。
三…二…一…チーン。採点完了。――さて、結果は?
「……〝30点〟…………」
……え? 〝30点〟??? いやいや、何かの聞き間違いだろう。
そう思ったボクは今一度ゆりちゃん先生の発表を待った。
――しかし、
「……一問10点で、十問中〝三問〟正解……うん。間違いなく〝30点〟だね」
〝30点〟……答えは、変わらなかった。
……あ、あれ? 変だな? ボクは確かに〝手を抜いて〟このテストを受けたけど……それでも六問正解……つまりは、倍の〝60点〟くらいを採っていても、おかしくはない……はずなんだけどなぁ???
――ぽむ、とその時だった。いつの間にか後ろにいた甲呀が、また、ボクの肩に手を置いて呟いた。
「ふむ……部長として、譬え相手の甘さにつけ込むような〝汚い手〟を使ってでも、とにかく〝100%の勝利〟を掴みに行くというその精神……天晴だ、泰介。お前は正しいことをした。我らの部長として誇るがいい」
「――あ、一瞬びっくりしたんですけど、そういうことだったんですね! 〝さすが〟です、泰介さん!」
「よっ! ナイス〝卑怯〟! お前は全世界の〝敵〟だ!」
「たいちゃん〝グッジョブ〟~❤ 〝カッコイイ〟よ~☆」
……なぜだろう? 褒められているはずなのに、〝責められている〟ような気が…………?
……。
……。
……。
「――じゃ、なくて! いや! ちょっと待ってよ!」
自分の中でイメージしていた結果とあまりにも違っていたため、ボクは思わず声を上げた。
「ボクは確かに、〝多少〟手は抜いたよ? でも、それでも〝60点〟くらいは採れるように書いたはずなんだ! 〝30点〟は何かの間違いだよ! ――ゆりちゃん先生! もう一度最初から採点してみてよ! 絶対に〝60点〟は採れているはずだから!!」
「え……う、うん……べつにいいけど、たぶん、変わらないと思うよ? だって……」
明らかに〝間違っている〟から……。
……。
……。
……。
ズババッ! 全員が……それこそ、離れていた鏡さんまでもがゆりちゃん先生の近くに集まり、ボクの答案を覗き込んだ。
それから、各々回答を読み上げる……。
「……問1、手足の指の関節は合計でいくつあるでしょう? ――泰介の答え、〝十コ〟」
「……問3、足の指先のことを〝爪先〟と言いますが、では頭のテッペンのことを何と言うでしょうか? ――泰介さんの答え、〝髪〟」
「……問5、たばこを吸うことによって発病する確率が高くなる肺の病気を一つ答えなさい。――〝へんた〟…ごほん。……の答え、〝ニコ中〟」
「問6! お酒を飲んで車を運転することを、何と言いますか~? ――たいちゃんの答え……えーと……あれ? 〝ニコ中〟ってもう一回書いてあるよ? ……あ、上の問題と間違えちゃったんだね? もう、たいちゃんってばおっちょこちょいなんだから~❤」
……あ、あれ……???
「違った???」
ボクが聞くと、うん、うん、とみんなは頷いて、それから改めて各々の意見を述べ始めた。
「……〝違う〟というよりも……泰介? これは〝わざと〟ふざけて書いたもの……ではないのか? 確かに手の親指の関節は、実は〝三つ〟ある、という引っかけ問題ではあるんだが……さすがに〝十コ〟はないだろ……それでは〝片手〟ですら足りん」
「……あ……あの……えっと……あ、ある意味! 私は当たっていると思いますよ! だ、だって! 頭のテッペンは確かに〝髪〟ですし! ……あ、でも……おじいちゃんとかは、答えが〝皮膚〟になっちゃいますけど……」
「〝ニコ中〟はそもそも肺の病気じゃないだろ……しかも、テストでそういうふうに略しちゃダメって小学校の時に習わなかったのか? ……お前は〝園児〟か?」
「たいちゃん! 間違いは誰にだってあるよ! 気にしない気にしない♪」
「……みんな…………」
……ごめん……なさい…………。




