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「〝テスト〟? 〝テスト〟ってあの……問題を解く方のテスト……のことだよね?」
とりあえず、高級ステーキ店などではなかったことに安堵したボクではあったけれど、あまりにも当たり前すぎて逆に予想外だったその勝負方法に、思わず聞き返してしまった。
もちろん! すぐにゆりちゃん先生は答える。
「先生はこれでも一応、ちゃんとした先生だからね! だからこれまたもちろん、そんな先生が出題する教科は、専門分野の〝保健体育〟から! うふふ、がんばって解いてね☆」
「ゆりちゃん質問!!」
シュバッ! 言い終わった刹那、光速に等しいスピードでお姉ちゃんは手を挙げた。
「はい? どうしたの、緒方さん?」
「そのテスト……まさかとは思うけど、〝昨日のプリント〟と同じような内容……とか言わないよね?」
ああ、なんだそんなこと? ゆりちゃん先生は笑顔で即答した。
「安心していいよ。テストに出るのは〝現代社会の健康〟についてだから。……より正確に言うと、〝タバコ〟と〝飲酒〟と〝(危険)ドラッグ〟の害について……問題は全部で三十問。( )埋め式で、各問によって点数は違うけど、とにかく合計で〝60点〟以上採れれば合格っていうことにしたいと思うんだけど……どうかな?」
「〝60点〟……〝80点〟とかならわかりますけど、いいんですか、伊東先生? そんな〝破格〟の条件で?」
愛梨さんが聞いた。しかしゆりちゃん先生は相変わらずの優しい笑顔で、いいのいいの、と簡単に答えた。
「ただし、ともう一度はっきり言っておくけど、このテストを受けることができるのは、部長である緒方くん〝一人だけ〟……他のみんなは、テストが終わるまで外で待機しててもらうからね? あ、あと、一応言っておくけど、このテストはもちろん〝一回勝負〟……つまり、泣いても笑っても、全ては部長である緒方くん〝一人の実力〟にかかっている……っていうことになるね♪」
「なるほど、〝責任重大〟、っていうことか……分かったよ、ゆりちゃん先生! じゃあさっそく始めよう!」
「――え? それはダメだよ」
ズルッ! ……せっかく入ったボクの気合が、その一言で一気に流れ落ちてしまった。
え? 何で? ドユコト???
【?】マークが止まらないボクに、ゆりちゃん先生は慌てて説明した。
「ご、ごめんね? だって、いくら出る問題の種類が分かってても、例えば教科書の、どこどこ、の部分から出ますよ~。とか教えていないわけじゃない? それじゃあ、あまりにも緒方くんが〝不利〟になちゃうかと思って……」
「いやいやいや、どんだけ甘いんだよ先生?」
……どうやら鏡さんはツッコミ職人にジョブチェンジしたらしい。みんなの言葉をたった一人で見事に代弁してくれている。
……って、そんなことはどうでもいいとしても、だ。それならゆりちゃん先生はいったい、どのようにしてボクと〝勝負〟をしようというのだろうか?
「というわけで、とりあえず……」
――と、それを聞こうとした、その時だった。
ゆりちゃん先生は自身が座っていた椅子の、すぐ脇にあった引き出しから一枚の紙と筆記用具を取り出し、それをボクに渡してきた。
「? これは?」
「うん! それは、〝ミニ実力テスト〟だよ!」




