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 ……ん!? 待てよ!!

「え~と? 〝レイモンキー〟を二つ……ん? 〝モンキー〟って何だ? サル???」

「――はっ! 泰介さん!」

 思いついた、その時だった。オーダーを受けた泰介さんがちょうどこちらに戻ってきたのだ。

 私はそれを、逃がすまい! とつい大声を上げてしまったことにより、「わっ! びっくりした~!」と泰介さんを驚かせてしまったけれど、声だけ大きくならないように抑えつつも、構わずすぐに続けた。

「あの、実は泰介さんに〝提案〟があるんですけど、よかったら聞いてもらえませんか?」

「え? 〝提案〟??? ……何のことか分からないけど、うん? そりゃあ、まぁ……愛梨さんが提案してくれるって言うんだったらいくらでも聞くけど……でも、ボク今お客さんの所に〝レイモンキー〟なるモノを届けに行かなきゃならないんだ。それ以前に、見つけるためにまた店中を探し回らなきゃだし……」

「だいじょうぶです! 提案と言っても、すぐに終わるようなことですから! ――ちなみに〝レモンティー〟ならコーヒーが出てくる機械のすぐ脇にあります!」

 ああ! なるほど〝レモンティー〟かぁ~! 納得しつつ、泰介さんは応えた。

「うん! それならいいよ? さっそく話してよ」

「では……泰介さん、まずはお姉さんのことを見てください!」

 ズビシッ! 私は接客中のお姉さんのことを指差すと、ある意味予想どおり、え? と泰介さんは首を傾げた。

「お姉ちゃん? ……お姉ちゃんがどうかしたの???」

「はい。実は……」

 私は差していた手を下ろし、泰介さんを納得させるための〝ストーリー〟を語り始めた。

「……実は私、ここでレジ番をしている時に、お会計を済ませたお客さんにこっそり聞いていたんですよ。――泰介さんとお姉さん、桜花の三人の中で、〝一番接客が上手〟なのは誰ですか? って……そうしたら、何と! 皆さん一番上手なのは〝お姉さん〟だと答えるんですよ! 逆に、〝一番下手〟なのは……〝泰介さん〟。あなただと言うんです! しかも〝圧倒的〟に! それこそ〝完膚なきまで〟に!! ……まぁ、あくまでも私が聞いたお客さんたちの意見の中では、なのですが……」

「な……ぁ……!?!」

 ズガガガ~ンッ! ……私の言葉を聞いた、瞬間だった。

 泰介さんの身体には、決して実際には音もしないし、見えもしなかったけれど……精神に大ダメージを与える、〝カミナリ的なモノ〟が直撃した。それによって泰介さんの足は、フラフラ、と力を失い、二~三歩後によろめいてしまう。

「そ、んな……」それから、壁に手をついた泰介さんは、プルプル、と身体を震わせながら私に聞いてきた。

「愛梨さん……ボ、ボクの、いったい何が悪かったって……言う、の……? ボク、ちゃんと真面目に、一生懸命、がんばっていたよね……?」

「……ぅ」

 ……若干、大ダメージを負ってしまったが故に、その産まれたばかりの小鹿のような弱々しさを見せる泰介さんに私は怯んでしまったけれど……しかしここはおじさんのため、お客さんのため、そして泰介さんのため! と心を鬼にして、〝ウソ〟を貫き通した。




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