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 ――五月三日、金曜日の朝。ゴールデンウィーク初日。【カフェ・どり~む】

 ちりん、ちりりん♪ 「こんにちは~! おじさ~ん!」

 一昨日のお昼休みに話し合って決めたメンバー。学校はお休みだけど、学生ということで全員制服姿の、泰介さんとお姉さん。そして桜花の三人と共に、私はおじさんのカフェへと足を踏み入れると……すぐに、ドアが開けっぱなしにされていた奥の部屋からおじさんの声が聞こえた。

「おお、愛梨ちゃん! 待ってたよ! ――よいしょっと!」

 カチャカチャ、という音。おそらく、お客さんに出す皿やコップなどの準備をしていたのだろう。声が返ってきてから数秒後におじさんは姿を現した。

「いや~、ごめんごめん。今食器の準備をしててさ? ――っと、それより、後ろにいるのが一昨日話していた助っ人の子たちかい?」

 奥さん手作りの、アニマル~な柄のエプロンを装備した、ちょっとだけ小太りの男性。間違いない。私のお父さんの弟。小出 義二(よしじ)おじさんだ!

 ちなみにおじさんのモットーは、【少しくらいお腹が出てても、幸せなら良し!】なんだけれど……まぁ、どうでもいいか。

「紹介します!」

 私はおじさんにもよく見えるように横にズレて、未だバンソウコウだらけの手で泰介さんたちを順に、なるべく簡単に紹介した。

「こちらがクラスメートの緒方 泰介さんで、その隣がお姉さんのなずなさん。そして、もう紹介の必要はないかもしれないですけど、よく私とおじさんのお店にくる、桜花です!」

「泰介君になずなさん、そして桜花ちゃんだね!」

 おじさんは確認するようにそう言い、改めてあいさつをした。

「オジサンは小出 義二って言うんだ。お客さんたちからはいつも、マスター、って呼ばれてるから、ま、そんな感じで呼んでよ。――それより悪いね、みんな? こんな忙しい時にバイトを頼んじゃったりなんかして……。でも、バイト代もはずむから、四日間、よろしくね!」

「任せてくださいマスター! 精いっぱいがんばりますよ!」「お姉ちゃんもがんばるよ~!」「よろしくお願いしま~す。……って、お、桜花ちゃん…………」

 うんうん! みんなのあいさつを聞いたおじさんは笑顔で頷き、じゃあさっそく、と自宅へと繋がる扉の方を指差して話した。

「あっちの部屋に()(なえ)……オジサンの嫁さんがいるから、聞いてこのカフェの制服に着替えてきてよ。ああ、ちなみに、チーフ、って呼ぶといいよ。――オジサンはその間にさっきの準備を終わらせておくからさ?」

「了解!」「は~い!」「桜花ちゃん……」

 各々返事(?)をしたみんなは、それから言われたとおり、奥の部屋の方へと歩いて行った。

 おじさんはそれを笑顔で見送ってから、改めて私の方を向いて話す。

「いや~、それにしてもホント助かったよ! さすがは愛梨ちゃん! 顔が利くなぁ! 愛梨ちゃんのおかげで何とかこの連休を乗りきれそうだよ!」

「い、いえ! そんな、私なんか……」

「またまたぁ! 謙遜しちゃってぇ! ははは!」

 いや、本当に……って、聞いてないか。

 私が言葉を発する前に、おじさんは笑いながらテーブルのセットを始めていた。それを見て、私もまぁいいかと開き直る。

 ――あ、それより……と今度は私の方からおじさんに話しかけた。

「おじさん、あの、私も一応できることを手伝いたいと思っているんですけど……衛生面とか、今の私でも問題がないような仕事はありませんか?」

「ん? そうだなぁ……」

 おじさんはテーブルのセットを続けながら答えた。

「それならレジとか、伝票のまとめ作業。売り上げの計算とかをしていてくれるかい? 愛梨ちゃんってそういうのも得意でしょ?」

「あ、なるほど。それなら確かにできますね! わかりました。任せておいてください!」

 ――ということは、私も一応お店の制服を着ていた方がいいよね?

 そう思った私は、泰介さんたちが入って行った扉の方に向かいつつ、おじさんに話した。

「じゃあ、一応私も着替えてきますね? 学校の制服のままじゃいくら何でもアレですし」

「ああ、うん。それもそうだね。――っと!」

 ちょっと待って! ――突然、私はおじさんに呼び止められた。

「え? あ、はい? 何ですか?」

 どうしたんだろう? 何か他に仕事があったのかな? ……そう、不思議に思っていると、おじさんはさらに、ちょいちょい、と私に向かって〝手招き〟をしてきた。

「???」

 いったい何だというのだろうか? 気になった私はおじさんに近づいてみると、おじさんはなぜか、自分の口に手を添えて小声で話し始めた。とっさに私は耳を傾ける。

 ……と、




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