8-5
――お昼休み。部室(保健室)。
愛梨さんから事情を聞き、そういうことならみんなにも聞いてみよう!
そう提案して、メンバーが揃う中。ボクたちは誰かが決めたわけでもなく、自然と決まったいつもの自分の席……長方形のテーブルに向かい合うように三人ずつ。左手前にボク。その正面に愛梨さんが座る(ちなみに、ボクの隣には順に、お姉ちゃんとゆりちゃん先生。愛梨さんの隣には、鏡さんと甲呀だ)――と、さっそく甲呀が……
「――さて、ではアイリサンの叔父が経営するカフェの、ゴールデンウィーク中の人員不足についてだが……泰介、我らが〝変態を迎える人生〟部の大切な部員の一人、アイリサンの頼みだ。当然、部長であるお前は引き受けることにしたのだろう?」
「もちろんさ!! ボクは困っている部員を見放せるほど、冷酷な部長じゃないよ! ――でもさ、それより……」
すぅぅ……ボクは思いっきり息を吸い込んだ。
そして一息に――
「まだ何も話してもいないのに何で甲呀がさも当然のようにその話を切り出すのさッッッ!!!???」
ガタタンッ! 椅子から立ち上がってさらにボクは続けた。
「オカシイよね太郎くん!? キミってば確か四組だよね!? ボクらの一組からは遠く離れてるよね!? それなのに何でこと細かく内容まで知っているのさ!? 糸電話でも使って盗聴してるっていうの!!?」
「何をバカな。糸電話などという正確性に欠ける物よりも、今はコンセントに直接繋ぐタイプの……ゲフンゲフン……さて、そんなことよりも、だ。――おい、アイリサン。お前の話を聞いた限りでは、実際、まだ必要な人数は集まってはいないのだろう?」
今、さりげなくとんでもないことを言おうとしたよね、甲呀?
背中に大汗をかき始めたボクを無視して、甲呀は愛梨さんに聞くと、愛梨さんは慌てて答えた。
「あ、はい! そうですね! おじさんの話によると、できれば三人……泰介さんがきてくれるということなので、あとふた――」
ちょっと待ってください。
ビシッ! とそこまで言いかけて、愛梨さんは突然手を前に突き出した。そのポーズのまま、死んだ魚のような目で続ける。
「……何で、太郎くんはバイトの人数が足りないことまで知ってるんですか? しかも、私の話を〝聞いた限り〟では、って……ひょっとして太郎くん。私の部屋に……?」
…………。
ボタボタボタ……今度は、顔に大汗をかき始めた。
……甲呀の答えは?
「――ふっ、安心しろ」
スチャ。甲呀はメガネを直してから、涼しい顔で答えた。
「里からの重要な任務でもない限り、さすがの俺もそんなことはしないさ。――ただ単に、今朝お前と話していた、くーちゃん、こと織部 久美の〝中身〟が俺だったというだけの話だ」
「――あ、な~んだ! そうだったんですね? もう、びっくりしちゃいましたよ! てっきり太郎くんってば私の部屋に〝盗聴器〟でも仕掛けたのかな~? とか思っちゃいました! 通報しなくてよかった~」
「いやいやいや。愛梨、お前太郎にかなり毒されてるぞ。絶対他にツッコムところあんだろ?」
愛梨さんの隣に座っていた鏡さんからの、ツッコめというツッコミ……鏡さんもレベルが上がったな~。なんて思う反面、ボクも何気に、仕掛けられてなくてよかった~、とだけ思ってしまったのは、甲呀に毒されているせいなんだろうか?
「う~んと、話を戻すけど……」
と、そんな中。ここぞという時のまとめ役。ゆりちゃん先生が話した。




