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7-11



「――あ、あのあの! 本当にだいじょうぶなんですか、泰介さん!?」

 ――昼休みの後半。一年生クラス前廊下。

「大丈夫だって!」ボクはそう、心配そうにボクのことを見つめる愛梨さんに向かって話した。

「訓練でもあんなに上手にできたんだ! だから実際にやっても、きっとうまくいくよ!」

「で、でも~!」

「――まぁ、いいじゃないか、アイリサン」

 と、そこに、ボクの援護に入ったのは甲呀だった。

 甲呀は変わらず無表情のまま、カチャ、といつものようにメガネを直して話した。

「スポーツなどでもそうだろう? 勝ちが続いているチームは、そのまま連勝することがかなり多い。――つまりは、〝流れ〟というやつだな。――今の泰介はその〝流れ〟に充分に乗っている状態にある。ならば、ここはあえて泰介の言うことを信用し、そして任せてみようではないか。案外、呆気なく成功し、そして〝変態〟から〝変態〟するという夢が叶うやも分からんぞ?」

「うぅ……た、太郎くんがそう言うんでしたら、私は……その、心配は心配ですけど、もう何も言いません……でも! 応援だけはさせてくださいね! がんばってください、泰介さん!」

「うん! 任せておいてよ、愛梨さん! そして他のみんなも!!」

 ボクの声に一度頷いてから、みんなは改めて話した。

「ふっ、まぁ、期待しているぞ。油断せず、気を引き締めていけ」

「頼むからさっさと〝変態〟してくれ。……いや、マジで」

「ごめんね、たいちゃん! お姉ちゃん、〝たいちゃんのために〟絶対手伝うな、って言われてるの……でも、信じてるから! がんばって、たいちゃん!!」

「いざとなっても先生がいるから大丈夫だよ~! 自分を信じて、がんばってね~☆」

「分かった! じゃあ、行ってくるよ!!」

 ばっ! ボクは手を挙げてそれらに返事を返し、昼休みの残り時間も少なかったことから、〝目標〟に向かって独り、さっそく駆け出した。

 ――さて、説明が遅くなってしまったけれど……いったい、ボクたちは何の話をしているのか? それを、順を追って説明すると、次のようになる。


 ・まず、訓練で成功を収め、ボクの中に〝自信〟という感情が湧く。

 ・次に、ボクから提案。――「この自信がなくならないうちに〝実戦〟で戦果を挙げよう!」

 ・で、現在。


 ――というわけさ! どう? 実に分かりやすい説明だったでしょ? やっぱりボクは今、〝絶好調〟なんだよ!

 ふんふん♪ と気分も上々に、ある程度みんなから離れたところで、ボクは一度足を止めた。

 それから、さてと……と、改めて辺りを見回し、ターゲットを捜す。

 ……訓練が絶好調なのはいいけど、問題なのは、実際にそういう困った状況になるか、または、困っている人がいるか、なんだよね~?

 ボクはそのまま、きょろきょろ、と十数秒そこを見回してみたけれど……見た限りじゃどうにも、ここにはそういう人はいないらしい。

 ……まさか、訓練の時のように自分からバケツで水をかけるわけにもいかないし…………。

「……仕方がない。場所を変えようか?」

 思い、呟いたボクは、今度は二年生のクラス前廊下に向かって歩き――


「――あ~、ちょ~困った~……」





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