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【視点・桜花→〝泰介〟】




「――何やってんだてめぇぇえええええええっっっッッ!!!!!」


「――え? はっ! ごっっふぁああッッッ!!?」

 ――部室(保健室)。

 突然の叫び声と共に……否、突然の〝拳〟と共にそこに現れた、文字どおり鏡さんの手によって、ボクは一瞬にして宙を舞ってしまうこととなった。

 だが、そこはやはり鏡さんだ。左わき腹が死ぬほど痛いのがはっきりと分かるのに、ボクは死ぬどころか、気絶によってその痛みから逃れることすらできなかったのだ。

 痛い痛い痛い!!!

 死ぬ死ぬ死ぬ!!!

 でも意識だけはさらにはっきりとしていく!?!

 いったいどうすればいいんだ!? ――わけも分からず、まるでゴールドエ○スペリエンスの一撃をくらったブ○ャラティがごとく、永遠とさえ思える時間、空中を舞い続けたボクは……しかしやがてその効力がきれ、重力によって床へと叩き落とされた。

 それから、痛み続けるわき腹を押さえながら、ボクは〝()()〟だからこそ〝命乞い〟をする。

「ま゛……ま゛っで……!! はなぜ……はなぜば、わがる……ッッ!!」

「黙れ〝変態〟が。もう二度と地べたから起き上がれなくしてやる」

「ひっ……ひぃぃっっっ!!!」

 捨てられるゴミの見るかのような、冷たい眼……それがボクに向けられた瞬間、ボクは、もうダメだ!! と全てを諦め、目を閉じた。

 だけど、その時だった。

 ボクの救いの女神、愛梨さんが降臨した。

「ま、待ってってば、桜花! これは〝部活〟! 〝部活〟なの!!」

「ああん? 部活ぅ~???」

 ゆらり、と怒気を纏いながら、鏡さんは胸元を隠しながら必死に叫ぶ愛梨さんの方を振り向いた。

「お前の服を脱がせる部活って……どんな部活だよ? いったい服を脱がせて、〝ナニ〟をするつもりだったんだ? ――ああっ!?」

 やはり、鏡さんは不良まっしぐらなようだ。……てゆーか、こんなシーン前にもあったよね。場所と理由が全然違うけど。

「つーわけで、殺す!!」

 ――って!? そんなこと考えてる場合じゃないっ!? 助けて愛梨さん!!

「ちょっ!!? せ、説明くらいさせて!!」

 ボクの心の悲鳴が聞こえたのか、愛梨さんは鏡さんの前に……ボクの前に回り込んで、必死に両手を広げた。

「今やってたことはね!? ――【掃除中に誤って女子生徒に水をかけてしまった場合、どうするか?】――という内容の〝訓練〟だったの! だから、泰介さんは何も悪くないの!!」

「あ? 訓練だ?」

「そう! 〝訓練〟! ――ほら、前にもやったでしょ!? スカートに付いたホコリをどうするのか? とか! めくれたスカートを、どうやって相手に気づかせるのか? とか!! 詳しくは【#5,〝始動〟と〝変態〟。】を読んでみて!!」

「……ああ、なるほど。つまりこれは前の続きってことか…………」

 ――おい、〝変態〟。そう鏡さんに呼ばれ、ボクはすぐに見上げると、鏡さんは一転、なぜか〝満面の笑顔〟でボクに聞いてきた。

「【掃除中に誤って女子生徒に水をかけてしまった場合、どうするか?】……だったよな? それで? お前はどんな答えを出したんだ?」

 ……何だかよく分からないけど、どうやら鏡さんは勘違いに気づき、ボクのことを許してくれたらしい! ……それならまずは殴ったことを謝ってほしいな……何て思ったけれど、ボクの心は宇宙よりも広い! 細かいことは言わず、ようやく引いてきた痛みの中、とにかく質問にだけ答えた。

「……あ、ああ、それなら……そのままだとかぜをひいちゃうでしょ? だから、まずはブラウスを〝脱がせ〟て、その後家庭科室とか、保健室に置いてあるアイロンで乾かして……って、あ、あれ? 鏡さん? どうし――」

 ――たの? までは言えなかった……なぜなら、これもまたなぜか、と言っておこう。なぜか、笑顔のままだった鏡さんの背中には、怒気によって作られた、〝鬼〟の形相が浮かび上がっていたのだ。

 ダラダラ、と……それに気づいた瞬間だった。ボクの全身からは汗が噴き出し、ボクが転がる床には、それによって小さな〝池〟ができつつあった。

 ……あ、あれ!? もしかしてボク、また何か間違ってた!!? ででで、でも、いったいどんなところを!?

 ――落ち着け!! ボクは恐怖を押し殺し、今一度冷静になって考えてみた。

 ……え、えっと? ブラウスを脱がして乾かす。これはまず間違いなく合っているはずだ。だって、そのままじゃ絶対にかぜをひいちゃうもんね? ……だったら、鏡さんは何が間違っていると言いたんだ? ……もしかして、乾かす、その方法??? ――いやいやいや! いくら鏡さんがボクよりも家事スキルが低くても、服がちょっと水で濡れたくらいなら、乾燥機に入れるよりもアイロンで乾かした方が早い、ということに気づくはずだ!

 ……では、いったい何だと言うんだ? ボクはいったい、何を見落として…………あっっ!!

 そうか!!! ――その瞬間だった。ボクは、本来であれば最初に気づかなければならない〝そのこと〟に、今さらながら気がついた。

 くっっ!! ボクとしたことが! こんな簡単なことに気づけないだなんて!!!

「ごめん! 今やっと分かったよ、鏡さん!!」

 ボクはそう叫んでから、改めてそのミスを鏡さんに謝った。

「そうだよね! 濡れてるのはブラウスだけじゃないよね! 女の子は〝ブラジャー〟もしてるんだもん! それもちゃんと〝脱がせて〟乾かしてあげないと意味が――」


「脱 が せ ん じ ゃ ね ぇ ぇ ぇ ッ ッ ッ ! ! ! ! !」


 ドグシャアアアァァアッッ!!!!!!!!!!







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