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 ……。

 ……。

 ……。

 ……い、いやいやいやいや! あたしは何度も首を横に振った。

 さすがの〝変態〟も、あんな学校最強クラスの美人に〝告白〟なんてされたら、断れるわけがない。この学校には〝変態〟の知り合いは太郎くらいしかいないって言っていたわけだし、何よりも、今まで〝変態〟にはあの凶悪な姉ちゃんが寄り添っていたんだ。ただでさえ人から動物から物から何から何までに避けられている〝変態〟に、あの姉ちゃんが加算されるんだぞ? 地球を滅ぼすような巨大隕石だって慌てて軌道を変えて逃げるっての! そんな状態のあいつに、まさか他に好きなやつができるようなフラグなんて立つわけもないし、仮に立っていたとしてもだ。誰もあんな〝変態〟と仲良くしようとなんて思わない。それこそフラれて終わるだけだろう。……となれば、やはり、〝変態〟に愛梨の〝告白〟を断る理由なんてな――


 ――でも、相手はあの〝変態〟で、しかもあたしは〝答え〟を聞く前に〝逃げた〟。


 ………………くっ!

 ばしっ! ……あたしは、顔面を手で覆った。

 ……そう。あたしは〝聞いていない〟のだ。〝変態〟の〝答え〟を。どんなに心の中で正論を並び立てようとも、あたしは〝聞いていない〟のだ。


 〝変態〟の〝答え〟をッッッ!!!!!


 チクショ~っっ!! あたしは覆っていた手を頭に移動させ、わしゃわしゃ、と髪をかきむしった。

 ……〝変態〟の言動は、普通のやつには絶対に読むことはできない!! それこそ当たることで超・有名な占い師だって、「分かるわけねーだろこんな〝変態〟の行動なんてよーッッ!!」とか言って水晶玉を床に叩きつけるに違いない。……そんなやつの〝答え〟だ。ヤブを突いて出てくるのは鬼でもヘビでもないかもしれない! 〝変態〟は世界が〝恐怖〟する、とんでもないパンドラボックスなのだ!!

 ……。

 ……。

 ……。

 ……も、戻って確認するか…………???

 いやいやいや! 頭から手を離し、今度はその手を顔の前で横に振って、あたしは心の中で叫んだ。

 いくら〝変態〟の〝答え〟が気になっても、それだけは絶対にできない! なぜなら、愛梨のことがあるからだ!

 愛梨は〝親友〟のあたしにも黙って〝告白〟を決行したんだ! それはつまり、誰にも知られたくないということ! それなのにあたしがそんなことを確認しに行ってしまったら……愛梨はきっと、ひどく傷ついてしまうことになるだろう! そんなことはあたしには絶対にできない!!

 ――だが!! ……だったら、どうする? このまま知らないフリを続けるのか? それであたしの気が収まるのか!?


 収まるわけがないッッッ!!!!!


 ……。

 ……。

 ……。

 決めたッッ!!

 がしぃ!! あたしはガッツポーズがごとく、拳を思いっきり握り締めた。

 そして、


 ――あたしは決めたぞ! 噂話は女にとって極上のスイーツなんだ! これを前にして我慢なんかできるか! 見ちまった以上は何としてでも結果を確かめてやる!!!


 ただし、愛梨を傷つけてしまわないように、細心の注意を払いつつな!! ――そう心に誓ったあたしは、それから、とりあえず今日はこのまま引こう。と考え、帰り道二人に出会ってしまわないように、回り道をして適当に時間を潰しながら、いつもどおり電車で家に帰った。





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