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 ――同日。放課後、帰り道。……愛梨さんと出会った公園。

 「……寄って行きませんか?」

 事件について先生たちに色々聞かれたものの、とりあえずは帰ることが許されたボクは、そう、同じく帰ることが許された愛梨さんに誘われて、そこに立ち寄ることにした。

 ボクたちはそれから、あの日と同じく、もうだいぶ日も沈み、暗くなりつつあった公園のベンチに腰を下ろし、互いに今回の事件のことを振り返った。

 「……ボク、この一週間ほど時間を〝永く〟感じたことはないよ。……もしかしたら、ずっとこのまま、〝終わらないんじゃないか〟? って……そう、心配に思っていたんだ」

 「……私も、です。……私、ずっと考えていました。何で、泰介さんに〝キライ〟なんて言ってしまったのか? って……全部、悪いのは全部、私でしょ! って、何度も自分に言い聞かせたんですけど、全然ダメで……」

 「そ、そんな! 愛梨さんは悪くないよ! だって、実際バラしてしまったのはボクだったわけだし……」

 「ち、違います! だってそれは、私が元々……」

 「「…………」」

 ――くすっ。

 あはははは! ボクと愛梨さんは同時に笑ってしまった。それから二人でまた意見を交わす。

 「やめよう! こんな話……たぶん、今度はそれでケンカになっちゃうよ! せっかく仲直りできたのに、それじゃあ意味がないからね!」

 「ふふっ♪ そうですね! ――あ、でも、もしまたケンカしちゃっても、今度は私……すぐに仲直りできる自信がありますよ? だって、今回これだけのことがあっても、仲直りすることができたんですから!」

 確かに……ボクは思わず頷いてしまった。

 確かに、これだけのことがあった後だ。たぶんこの先、どんなことがあったとしても、ボクたちは絶対に〝仲直りすることができる〟。……そう言いきれてしまえるほどに、今回のことは二人にとっては重大なできごとだったのだ。

 「あ、でも……そういえば、愛梨さん? ケンカの原因になってた、〝秘密〟のことなんだけど……本当によかったの? あんな〝全校生徒の前〟で言っちゃって? ……たぶん、だけど、今や愛梨さんの〝秘密〟を知らない人なんか、〝一人もいなくなっちゃった〟と思うんだけど……?」

 「えっ!!? そっ! それを言わないでくださいよ!! 私、今でもすっごく恥ずかしいんですから!」

 ……でも、と愛梨さんは続けた。

 「本当は全然よくはないんですけど……いいんです。だって、そのおかげで、泰介さんっていう〝大切な人〟を失わずに済んだんですから……」

 「愛梨さん…………」

 あわわ! となぜか、それを言ってから急に顔を真っ赤にしてしまった愛梨さんは、それを隠すように慌ててポケットに手を突っ込み、何かを探し始めた。

 と、

 「――いたっ!」

 「愛梨さん!?」

 ポケットから引き抜かれた、包帯が巻かれた愛梨さんの右手……その指先からは、今の探し物の際にどこかで擦れてしまったのか、薄く血がにじんでしまっていた。

 「だ、ダメじゃないか、愛梨さん! 気をつけなきゃ……だって、爪がほとんど全部剥がれちゃってるんでしょ!?」

 「あ……はい。ごめんなさい……あれ? でも泰介さん……知ってたんですか? 私の指が貞○さんになっちゃってること?」

 「…………あ、愛梨さん……今はボケるとこじゃないよ? ……あ、うん。いや、まぁ、その……知ってたよ? だって――」


 机の下に、血の付いた爪が散乱してたから……。


 「……」

 「……」

 ご、ごめんなさい……もう一度愛梨さんは謝った。

 「ホント、ボケてる場合じゃなかったですね。机や指もろとも、グロテスクなことになっててごめんなさい……すごく、反省してます……」

 「……う、うん……分かってくれれば、それでいいんだけど、さ……?」

 「「…………」」

 と、ところで! 今度はボクから……いや、今度も、か……とにかくボクは聞いた。

 「何を探してたの? 何か……大切なモノ?」

 「え? あ、はい。すっごく〝大切なモノ〟なんですけど、急いでウチを飛び出してきてしまったもので、いったいどこにしまったのやら……って! ああ!」

 ここか! と愛梨さんは、制服の正面……胸ポケットから、その〝大切なモノ〟とやらを取り出した。

 それは……〝紙〟……いや、〝プリント〟???

 ポケットに入るくらい小さく折りたたまれていたせいで、それが何なのかはイマイチよくわからなかったけれど……とにかく、学校でよく使われている、あの灰色がかった再生紙でできたプリントだった。

 ……ん? でもあのプリント……どこにでもありそうな、ごく普通のプリントであるのに、なぜか……〝どこかで見た〟ような気が……???

 「あれ? わかります?」

 そう呟いてから、ジャーン☆ と愛梨さんは、折りたたまれたそのプリントをボクに広げて見せる。

 瞬間、ボクは……〝愛梨さんがそのプリントを持っていた〟。そのことに思わず恥ずかしくなってしまい、顔を爆発させた。

 だって、そこにあったプリントとは、そう!





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