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 刹那、だった。

 突然鳴り響いた、まるで時代劇のような古めかしいセリフ……だけど、ボクは確かに、その声に〝聞き憶え〟があった……!!

 「甲呀ッッ!!!」

 バツン! ――ボクが叫んだのとほぼ同時だった。

 突然体育館内の照明が全て消され、さらには、ウイィーン! と音を上げ、カーテンが自動的に閉まって行ったのだ!

 暗くなっていく体育館……今日は天気も曇っていたというせいもあって、カーテンが閉まったその場から、もはや真っ暗だ。何も見えなくなってしまっていた。

 それを見て当然のようにザワつき始める生徒、先生たち……だけど、次の瞬間だった。それはまた、強制的に鎮められることとなってしまった。

 バンッ! 再び……しかし、体育館の真ん中だけつけられた照明……そこに浮かび上がったのは、いつの間にか並んで座る生徒たちの間に立つ、〝甲呀〟の姿だった。

 「だ――誰だテメェ!!?」

 叫んだのは長山だ。長山も列の中央にいたことから、照明によってその姿が浮かび上がっていたのだ。

 「初めまして、だな。俺の名は、1―4―38番、山田 太郎……お前にだけは気軽に呼んでほしくはないが……まぁ、〝お決まり〟というやつだ。俺のことは気軽に〝太郎くん〟とでも呼んでくれ」

 甲呀はそう名乗ると、続いてゆっくりと歩き出す……その周りと進行方向……さらには長山の周りにいた生徒たちは急いで場所を空けた。――すると、いつの間にか、結果的に照明に照らされていた範囲内には、〝甲呀と長山の二人だけ〟になってしまっていた。

 「う…ぐ……な、何だ……これは!? いったいどうなって……!!」

 まるで、これから〝劇〟でも始まるのか? と思えるような、不思議な光景……その中で、長山はこの突然の状況に困惑しながらも、しかし真っ直ぐに自分の下に向かってくる甲呀に対して、慌てて体制を立て直し、それを誤魔化すように大声で話した。

 「は……はっ! そうかいそうかい! タロウくんか! こりゃどうも初めまし……いや、んなことはどうでもいい! つかいったい何の用だテメー!? まさかお前もこのオレのことを悪者扱いにするつもりじゃねーだろーなぁ!? ――分かってんのか!? オレには〝ショーコ〟があるんだよ! 〝ショーコ〟がなぁ!!」

 「ふむ……相手が名乗っているのにも関わらず、自分は名乗らんとは何とも礼儀知らずのやつだな……だが、まぁいい。元々俺はお前のことを〝倒す〟つもりでここにきているのだからな……礼儀知らずはお互いさまだ」

 「ハァァーッ!!? 倒すぅ??? ぷっ! ははははは! こいつはケッサクだ! 何かと思えば正義のヒーロー気取りかよ! できるわけねーだろそんなこと――」

 「――うむ。そのまさに〝傑作(けっさく)〟……いや、内容自体は〝駄作(ださく)〟か……それもまぁいい」

 カチャリ。甲呀はいつものように中指で眼鏡を直したと思ったら、突然、ステージに向かってそれとは反対の手を伸ばし、言い放った。

 「〝鏡〟! 〝師匠〟! 出番だ! 用意を頼む!!」

 「りょーかい!」「らじゃー!!」

 すると、これもまた突然の声――と同時に、ステージの上……〝天井〟からは、カーテンが閉まっていった時と同様に、ウイィーン! という機械の音が鳴り始め、そしてさらにはステージの右隣……勢いよく開かれたその放送室の扉からは、あふれ出す光と共に……いつの間にそこにいたのか? お姉ちゃんと鏡さんの姿があった!





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