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 「問〝31〟……え? あれ? 確か問題は全部で〝30問〟だったはず……い、いえ! それ以前に! な、なんですか伊東先生! この問題は!?」

 「うふふ、〝特別問題〟だよ❤ ほらほら~☆ いいから続きを読んでみて?」

 「つ……続きって……!」

 うぅ……なぜだか恥ずかしく思いながらも、でも……今はもしかしたら……き、嫌われちゃったかも、しれないけど……でも、このテストを受けた時点では、泰介さんはいったい私のことをどう思っていたのか? やっぱり、どうしても気になってしまう……そう思った私は、言われたとおり、続けて泰介さんの回答を読んでみた。


 【〝えーと〟、愛梨さんは、とってもスタイルがよくて、優しくて、思いやりのある素晴らしい女の子だとボクは思います。学校でも人気者で、いつも周りのみんなから頼りに――】


 …………う、う~ん…………テストなのに、〝えーと〟、なんて書いている時点で、泰介さんらしいと言えばそうなんだけれど……でも、なぜだろう? そこに書かれてあったことは、いかにも〝他人が他人〟をホメる時のような(うた)い文句……だったせいか、正直、〝ガッカリ〟してしまった。……やっぱり、泰介さんにとって私は、所詮〝赤の他人〟……それ以上でも、それ以下でもなかっ――


 【――じゃ、なくって!】


 ……え?

 突然、文章が変わ――いや、それどころではない。〝じゃなくって〟と、泰介さんはいきなり、今まで書いていたことの〝全て〟を、自ら〝取り消した〟のだ。

 消しゴムを使わないでそう書くところがまた泰介さんらしい……などと言っている場合ではない。私は慌てて、すぐに回答の続きに目を通した。

 そこには、


 【たぶん……〝好き〟なんじゃないかと思います。】


 ドクン! ドクン! ドクン! ――〝恐怖〟を感じて鳴った時とはまるで違う、どこかリズミカルな……〝楽しさ〟を感じている時のような、心の底から〝安心〟できるような胸の鼓動が、私の全身を駆け巡った。

 ――泰介さんは、そこに続けて、こう書いていた。


 【たぶん、〝好き〟なんじゃないかと思います。……だって、愛梨さんはいつも優しいし、みんなから〝変態〟〝変態〟呼ばれているボクに対しても、毎日自然に、おはよう、って声をかけてくれるのです。……ボクはまだ、愛梨さんと出会ってからほんの少ししか経っていないから、はっきりとは言えないけれど……たぶん、愛梨さんのことが〝好き〟なんだと思います。】


 「たいすけ…さん…………」

 ドクン! ドクン! ドクン! ――鼓動が、鳴りやまない。……違う。私自身が、鳴りやませようと〝していなかった〟のだ!

 自分の意志で、私は確かにそう思っていた。

 ――できるなら、〝ずっとこの気持ちでいたい〟!

 ――できるのなら、永遠にこの気持ちを、〝失いたくない〟! ……と!!

 その時だった。伊東先生が突然、私に手を伸ばしてきたのだ。

 私はその手の意味がわからず、不思議に思っていたけれど……伊東先生は、それからゆっくりと、〝満面の笑顔〟で私に言った。

 「うふふ♪ ……その回答を見て、先生、思わず緒方くんのことを〝合格〟にしちゃったんだ。――あ、さてと! それじゃあそれも読んでもらったことだし、〝緒方くんからの伝言〟を伝えるよ? ……こほん」


 「『――愛梨さん、学校にきて。ボクは今日、全てを〝終わらせて〟みせるから……』」


 「……全てを……〝終わらせる〟…………???」

 いったい、何のこと???

 首を傾げて考えていると、伊東先生はさらに、ずずい、と私の方に手を伸ばして話した。

 「ほら、小出さん。小出さんのことを、こんなにも〝大切に想って〟くれている緒方くんの〝ピンチ〟だよ? 助けに行かなくていいの?」

 「〝ピンチ〟……えっ!? い、伊東先生! それってどういう――」

 「急ぎの用事その二! 時間もけっこうギリギリになっちゃったから、話は後! 行くなら外に車を用意してあるから、その中で話してあげる! ――ほら、行くの? 行かないの?」

 ――泰介さんの〝ピンチ〟。

 ……その言葉を聞いて、私がそれを断る理由は……戸惑う理由は、もはや〝何もなかった〟。


 「〝行きます〟!!」


 そうはっきり答えた私は、ガッシリ、と伊東先生の手を掴んだ。




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