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第87話 ナースを探せ!

 現場がある程度進んだ頃、リトに言われました。


「ナースを雇わなくちゃいけません」


 そりゃまた唐突なことで……。

「なんで?」

「そういうお達しが出ました」


 よくわかりませんが、市か国か地域か知りませんが、何人か以上の現場には、ナースを常駐させなくてはならないという条例が出たそうです。


 まあ、現場に怪我はつきものですからね。そういうお達しがあっても不思議ではない。


「募集かけといて」

 話はそれで終わったはずでした。応募したやつをリトに面接させて、雇って、それで終わり。そうなるはずでした。


 応募してきたのはふたり。

 そのうち、ひとりの面接後、K君が反応します。


「今のやつ、めっちゃ好み」

 おまえの趣味なんかしらんわ。

「こいつがカラオケにいたら、毎晩行きそう」

 好きにしろ。君が自分の金で、カラオケ毎晩行こうと、俺の知ったことではない。

「でも、こいつがきたら、俺仕事になんないかも」


 おまえはこいつを雇いたいのか、雇いたくないのか、どっちだぁああああ!


 若いエンジニアにはK君に同調するやつらもちらほら。


 もうひとりのほうはコネ付きです。

 なんかよくわかりませんが、偉い人の押しがあるとか。


「南野さん、どうします?」

 リトが聞いてきました。


 偉い人とのコネをとるか、現場の志気をとるか。


 ええい、コネなんか知ったことか。現場が盛り上がる方がいいよな?


 K君。君のお気に入りをやとってやるから、すこしは素直に俺の言うこと聞けよ、な?


 というわけで、K君好みの美人ナースを雇ったわけですが、偉い人から電話があったらしい。

「なんであの娘、落としたの?」


 めんどくせえええ!

 どんだけ偉い人か知らんが、なんでも自分の思い通りになると思ったら大間違いだ。


 っていうか、病院に勤めろよ。なんでこんなところに来たがるんだぁああ!


 ええ、もちろん偉い人、シカトです。


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