第86話 マニラから助っ人? 第三の男登場
このセブの現場はそこそこ大きな現場です。マニラで最初にプロジェクトマネージャーをやった現場に比べれば相当でかい。
小さい現場ならひとりで切り回せるとしても、大きな現場はそうはいきません。もちろん、ローカルスタッフはたくさんいますが、それを監理する人間がひとりではきつい。
というわけで、私にはひとり日本人の部下がついていたわけですが、まだ若い上、日本から来てまだ数ヶ月しかたっていない、フィリピン新人。
まあ、なんだかんだいって、大変だろ?
めずらしくSさんの優しいお言葉により、マニラから助っ人がひとりやってくることになりました。
日本人最年少スタッフながら、態度はでかいK君です。
この男、現場に来るなりこう言いやがりました。
「なんだ、思ったよりまともじゃないですか? もっとめちゃくちゃな状態かと思ってましたよ。それで呼ばれたのかと。あはははは」
こ、この男はぁああ!
とはいえ、私もこの男にはじつは一目置いています。若いくせにローカルスタッフを使い、現場を切り回してきたのですから。(24歳でプロジェクトマネージャー経験済み)
生意気な反面、部下になれば頼もしいことは頼もしい。
マニラにいたとき、彼の現場に行く機会がありましたが、ひとりで現場を回していました。
窓の位置が間違っていても動揺しません。
「あははは。窓の位置、間違えちゃいました。あのままでもいいかとおもうんですけど、まずいですかね?」
「まずいだろ?」
「まあ、そのうち直しますよ。あははは」
心臓に毛が生えています。
数日でスタッフの性格や能力を把握し、設備担当をこき下ろします。
「Oさんはあいつ使えるって言ってましたけど、だめっすね、あいつ。まあ、Oさんが褒めるエンジニアって、ろくなやついませんけど」
飛ばす、飛ばす(笑)。
さあ、現場に投入されたK君は救世主になるか、破滅の悪魔になるか……。
え、おまえがしっかりしろって? すみません。




