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第81話 我が家にシェフがやってくる

 現場のほうはようやくスタートラインに立ちましたが、日々の暮らしのほうはどうでしょうか?

 寮はまた一軒家を借りましたが、その時点で料理メイドが見つかっていませんでした。

 ひとり入っているので、掃除洗濯には困らないのですが、晩飯を作ってくれる人がいないと、毎晩外食になってしまいます。

 当面は私ひとりだけなのでそれでもいいのでしょうが、この現場もいずれは日本人スタッフが増える予定です。

 料理メイドに関しては、マカティ事務所の事務屋さんが探してくれています。

 ちょっと電話で聞いてみました。


「料理メイド見つかりましたか?」

「う~ん。それがですね。いることはいるんですけど、高いんですよ」

「はあ」

「その人、メイドっていうか、男なんですけど、ホテルの料理人やってた人で、メイドの給料じゃ納得しないらしくて」


 ホテルの料理人が、俺のためにここにきて料理すんの?


 ……俺って、何様?


「あまり高いと、他のメイドから反発食らいますからね。まあ、他にも探してますからもう少し待ってください。もし、どうしても見つからなければそれに頼みますけどね」


 まあ、会社としてはとうぜん経費を抑えたいでしょうが、個人的にはそのシェフがやってくることに興味があります。

 いくらなんでの料理長クラスがくるわけではないでしょうが、ちょっと妄想が膨らみます。

 白衣と白い帽子かぶった料理人が寮で料理する。もちろん、激うま。


 単独でこんなところ来てんだから、それくらいのうまみはあってもいいよな?


 事務屋さんから電話がありました。

「けっきょく、例のやつを雇うことにしました。もし他のメイドから、あいつだけ給料が高いと苦情があったらこう言いますよ。あいつは、シェフだ。おまえらメイドとは違う。料理のプロだ。だから高いんだって」


 そしてついにシェフがやってきました。

 第一印象は、なんか気のよさそうなあんちゃん。

 もちろんコック帽はかぶってません。


 そりゃそうだ。ここでそんな格好してたら馬鹿だよな?


 とりあえずダイニングテーブルに着いて、待っていると、待望のシェフの料理が出てきました。

 正直、今となってはどんな料理が出たか覚えていませんが、食べてみた感想。


 ……普通だな。


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