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第76話 南野、旅立ちの準備に入る

 とりあえず、セブには明日からでも行けということではなく、引き継ぎやいろいろ準備などがあるので、まだしばらくはこっちにいそうな感じです。

 今やってる現場には、引き継ぎのため、日本からニューカマーがやってきました。

 私より年上で、経験豊かな人です。ただし海外経験はありません。

 はっきりいって名前を忘れたので、Xさんということにしましょう。

 とりあえず、短期間のうちに現場のことを引き継がなくてはいけません。

 まあ、この現場は施主がフィリピン人ですし、へんに口を出すより、エドに任せておいた方が問題なく終わるかもしれません。


 ただ、これまでの経緯を説明しておく必要があります。

 たとえば鉄骨階段はメインの鉄骨業者とはべつの業者に発注してますが、それの支払いが生じてきます。

 その話をすると、


「おお、払っちゃれ、払っちゃれ。そういう業者にはちゃんと払ってやらないとな」


 気前の良さそうなおっさんです(おいおい)。

 これはきっと、私の心の奥に澱のように溜っていた予定外出費の不安を、ノリでふっとばしそうな勢いです。

 コンクリートが予定より食ってその分、下請けに見てやらないといけないかもしれないことも話しました。


「まあ、なんとかなんだろ?」


 大好きです、この人。

 私の悩みが2分で解決しました。

 たぶんSさんも、この人には年齢的にあまりうるさいことはいえないはずですし、なんとでもなるでしょう。


 あとはたいして引き継ぐこともありません。エドに任せておけば、この現場普通に終わります。

 Xさん、言葉はたいしてしゃべれませんが、Iさんほどひどくもありません。きっとなんとかなるでしょう。


 夜、Sさんからカラオケの誘いがありました。

「セブに行くこと、Gにもいっておかないといけないだろ?」


 う~む、その問題があったか。


 まあ、なんとかなんだろ?


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