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第74話 日本の技術屋さんがだいじょうぶだと言ってくれた!

 先日のコンクリートの数量問題は、先送りというか、施主に交渉中ということで、現場は進みましたが、さらにべつの問題が発生しました。

 鉄骨の柱を固定するためのアンカーボルトが埋め込まれているのですが、施主サイドがそれをみてこういいだしました。


「このアンカーボルト、細いんじゃない?」


 確かに私の感覚からいっても細いです。

 ただ、私が日本でやってきたような、上に細長い建物じゃなく、横に平べったい建物なので、そんな堅強なアンカーボルトはいらない気もします。


 どうやら基礎をやった業者への信頼はかなり薄くなっているようで、うちにあれでだいじょうぶなのか、聞いてきました。


 知らねえよ、そんなこたぁああ!


 正直に言うと、うちがだいじょうぶだなどといってしまえば、こんどはこっちの責任になりかねません。

 かといって、だめだといえば、とうぜん「じゃあ、どうする?」という話になります。現場が止まりかねません。


 本音を言えば、


「そんな問題に、こっちを巻き込むなっ!」


 だからシカトしてました。「いやあ、ちゃんと計算されているんだからだいじょうでしょう」って感じで。


 しかしよっぽど不安らしく、しつこく聞いてきます。


「いやあ、うちは責任とれないんで、なんともいえません」

 

 はっきりそういったところ、

「いや、責任を押しつける気はないんだ。参考意見でいい。ただ心配なんだ」

 といってくるのでしょうがありません。


 日本本社の技術部にいる後輩に電話しました。

「悪いけど、これ持つかどうか計算できないか?」

「しょうがないなあ。南野さんの頼みだ。詳細、ファックスで送ってください」


 結果はすぐに出ました。

 とりあえず、持つと。

 内心、「ほんとかよっ?」と突っ込みたくなるほど、脆弱なアンカーボルトでしたが、たぶんよこに平べったい構造なので、ほとんど柱脚に引っ張り力が加わらないのでしょう。


 とりあえず、施主にはこう報告しました。

「日本の技術部に計算を頼みました。あくまでも参考ですが、日本の基準ではだいじょうぶです」


「日本の基準で大丈夫なら安心だ」

 明らかにほっとした顔の施主。


 そりゃそうだ。日本の耐震基準は世界一厳しいといってもいいでしょう。

 逆にお墨付きを与えたようなもんです。


 この建物は、日本の地震の基準でも倒れない!


 ……いや、いっときますが、なんかあっても、一切責任は持ちませんからね。


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