第67話 ダークナイト
現代の日本で生活していると、停電なんてほとんど経験することはありません。せいぜい部屋のブレーカーが落ちるくらいのはずです。
まあ、ブレーカーが落ちたときは、「ち、しょうがねえな」とつぶやきつつ、分電盤までいって、ブレーカーを上げれば、たちまち電気は復活。しかも夜であろうと、窓から入る若干の明かり(隣家の照明や街灯)によって、けっこう分電盤の位置が見えたりします。
日本は恵まれていた。
フィリピンでは、しょっちゅうというほどでもありませんが、停電があります。私がいる間に少なくとも数回はありました。
ある夜、私は自分の部屋でベッドに入っていました。
いきなり電気が消えました。
まったくなんにも見えません。
真の暗闇とはこういうことか!
なにせ、部屋の照明はおろか、窓から入る街灯や隣家の明かりすら完璧にないのです。おまけにその日は、曇ってるか、新月か知りませんが、月明かりさえなかったのでしょう。
それこそ、顔の前に自分の手を持ってきたところで、まったく見えません。
やべえな、こりゃ(笑)。
そう、思わず笑ってしまうほどの暗闇。移動することすら不可能と思われる状況です。
子供なら、泣いちゃうぞ、これ。
こういうとき、我々日本人はなんにもできません。
頼りになるのはフィリピン人だ。
メイドさん、どこからともなく、非常用の照明や蝋燭を持ってきて、リビングを照らします。それによって、廊下もほんのり光が差します。
これによって、真の暗闇から、なんとなくものの位置がわかる程度の暗さに昇格。
正直、これでなんとなく安心します。
案外、我々は一寸先も闇という状態には慣れていません。
まあ、それに比べてフィリピン人は停電慣れしてるというか、なんというか……。
たくましすぎんぞ。
最近はどうなんでしょう? 停電減ったのかな?




