第61話 贅沢は敵! 上は勝手なこと言いやがる
新しい現場がスタートしました。
とりあえず、仮設事務所が建設されていきます。トトからは「マネージャールーム、いります?」と聞かれました。
「そんなもんいらねえだろ?」
今までは日本人スタッフが二名以上常駐してましたが、今回は私ひとり。
マネージャールーム=私の個室。
そんな無駄なスペースはいらん。それにいっしょの部屋のほうが、ダイレクトに指示しやすいし。
とりあえず、スタッフの性格も能力もわかってるので、大きな問題はなく進みそうです。
ところが、マカティ事務所から横やりが入ります。
そう、あのSさんです。課長になったSさんは、すべての現場に口を出してきます。
「事務所にエアコンいらねえだろ?」
「は?」
おまえは鬼か? ここはフィリピンだぞ。北海道かなんかと勘違いしてねえかっ!
「壁をな、竹で編んだようなやつにするんだよ。風通しがよくて涼しいぞ」
「もう壁作っちゃいましたけど、コンパネで」
「なにぃ、なに勝手なことやってんだよ?」
やかましいわっ!
「ちっ、じゃあ、しょうがねえな。今度から勝手に動くなよ」
プロジェクトマネージャーって、その程度の権限もないのかい?
まあ、前の現場はSさんも、Iさんにはあまり強くいえなかったんでしょう。私になったとたん、言いたい放題です。
ああ、Iさん。なんの役にも立ってない所長と内心馬鹿にしてごめんなさい(ひでえ)。あなたは役に立ってました。Sさんの防波堤として。
これからは余分な金を使うたびに、なにか言われるに違いない。
しかも下は下で、いろいろ要求してくるだろうしなあ。
なんかプロジェクトマネージャーって、めんどくさい。
案の定、トトが言ってきました。
「パソコン買ってください」
なんかいやーな予感がした。




