第59話 コウモリのスープはいかが?
私とOさんは、パラオでもっとも有名なポイント、ブルーコーナーに向かいました。
ここはジャーマンチャネルとは違い、流れが速く、上級者向きのポイントですが、その分、魚影が濃いことで知られています。
いざ、ボートからエントリーしてみると、すぐに1メートル級のでっかいナポレオンに遭遇。
ナポレオンってのは、でっかい青色の魚で、ちょっと頭にこぶがある感じのやつ。ダイバーでなくてもテレビなどで見て知っているかも。
ちょっとユーモラスな感じがして、マンタほどじゃないけど、ダイバーに大人気の魚です。
流れも速いが、岩にしがみついてないと、ふっとばされるほどでもありません。
透明度もジャーマンチャネルよりよく、20メートル以上ありそう。
私たちは岩をつかみながら移動し、バラクーダなどを堪能すると、ボートに戻りました。
一日のダイビングを終えた後は、ホテルで食事です。
正直、予算の関係もあって豪華リゾートホテルというわけにはいかず、それなりのホテルでした。
ホテルメイドはなぜかフィリピン人です。
フィリピーナ。日本だけじゃなく、ここにも出稼ぎに来てるんかい?
さらにメニューには、シニガンスープ(フィリピンの酸っぱいスープ)まであり、あまりフィリピンの外に来た感じがしません。
「なんかフィリピンぽいよね。パラオならではのものはないのかな?」
Oさんも内心同じようなことを感じていたようです。
やはり初めての国に来たら、その国ならではのものにチャレンジしたくなるではありませんか。
「あります!」
ホテルの人が、こっちの不満を聞きつけ、なにやらアピールしてきます。
「コウモリのスープです」
いくらなんでも、チャレンジャーすぎんだろ?
……でも、ちょっと話の種に食ってみるのも、悪くはないかな……。
「無理!」
Oさん、考える余地なし。瞬間、ギブアップ。
まあ、そうだよね。
私もOさんの反対を押し切って、オーダーする勇気はありませんでした。
まあ、頼めば、あとでK君あたりから、また「日本人捨ててますねえ」と嫌みのひとつでも言われるのだろう。
というわけで、けっきょく、コウモリのスープの味は、謎のままです。




