第42話 南野、G嬢をデートに誘う その1
前回、アポ島で海賊もとい押し売りおばちゃんたちからTシャツを買った話をしましたが、じつはそのときもうひとつ買ったものがあります。
小さな貝殻で作ったイヤリングとネックレス。
あのSさんが、
「こういうのを買っていけば、女は喜ぶんだよ。安くてもいいんだ」
と自信満々に宣言をして、買ったのです。
ほんとかよ?
一抹の疑問を抱いたのですが、まあ、じっさい高いものではないので、ついつられて買っちまいました。
で、マニラに帰ってきてから、例のカラオケ屋にいきました。
とうぜんG嬢を指名し、「おみやげがあるんだ」。
「え、なになに?」
そこで貝殻のアクセサリーを渡します。
「ありがとう」
そういって、その場でつけてみたりしましたが、言葉と裏腹にそんなにうれしそうじゃねえぞ。
Sさん。あんたじつは、あんまりもてないんだろう?
責任のすべてを上司におっかぶせる南野。
その後、たわいのない会話を続けた後、酔いも手伝って、ついこんな発言をしてしまいました。
「ねえ、今度、デートしない」
「え?」
G嬢、明らかに困惑してます。
「ごめんなさい。だめなの。できないの」
え、マジ? 俺今、ひょっとしてふられた?
軽くショック。
なぜなら、私はそのとき、断られるということをまったく想定していなかったからだ。
気を取り直し、その場は楽しく飲み、店を出ました。
しかしこの件はもちろん、心のどこかに引っかかっていました。
つづく




