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第35話 社員研修で一時帰国? ラッキー

 この会社、社員に等級がついていまして、社員2級とか1級とか、技師補とか、ようは経験年数と実績にともなって上がっていくわけです。

 そして上がる際には研修があるわけですが、これは海外に赴任していようと、呼び戻して研修を受けさせるらしい。


 ということで、昇級研修を受けることになった私は一時帰国が許されました。対してあそぶ時間はないと思われますが、ひさびさに日本の地を踏めるのはやっぱりうれしい。


 ぶっちゃけ、研修内容などまったく覚えていませんが、たしか泊まりがけで二日間やっていたような気がします。

 週休研修というと、同期の顔見知りばかりかと思うかもしれませんが、昇級年次に多少個人差があるのと、土木のほうは同期でもほとんど知らなかったりしますので、知った顔ばかりではありません。というか、ぶっちゃけ、私、標準より一年遅れて昇級したので、知らない顔のほうが多い。

 なお、フィリピン組は私の他に土木のほうからひとり来ていました。


 研修中、同じグループになったやつに、フィリピンならぬシンガポール赴任の土木職員がいて、けっこうそいつと意気投合しました。

 まあ、一個下だけどため口叩かれましたが……。


 初日の研修が終わり、みんなで飲みに行こうという話になりました。

 普通に居酒屋かどこかで飲んだ後、二次会という流になりましたが、もうひとりのフィリピン組がこういいやがりました。


「フィリピンパブに行こう」


 おまえはバカか? いつでもいけるだろうが、そんなもん。


 あさってにはフィリピンに帰らなければならないのだ。ここはやはり、ひさしぶりに日本人の姉ちゃんとおしゃべりしたいではないか。


 皆様も、私がそう考えても、無理なからぬと納得してくださるでしょう。(え、そんなこと知らんって? そんな殺生な)


 だが、なぜか他のみんなは「お、いいね、行こう、行こう」という流になってしまいました。


 思わずシンガポール君に愚痴る私。

「あいつフィリピーナとなんていつでも飲めるのに、なんでフィリピンパブなんだよ」


「だよね。我慢しないで言ったほうがいいよ」

 同意するシンガポール君。


 えっと、君が言えば? 人にふらないで。

 日本人の姉ちゃんがいるところに行こうって。

 どうせ、こいつだって日本人の姉ちゃんと飲みたかったに決まってるんだから。


 わからんのは、あいつだ。

 そんなにフィリピンを愛してしまったのか?


 まあ、それでもフィリピンパブで楽しく飲みましたとさ。


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