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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第八十七話

前回のあらすじを三行で


司書たちひそひそ

城に行ってみる

なんか部屋に案内された

 扉の先には兵士と思われる獣人が青いカーペットの左右におり、その先には玉座があり一際迫力のある獣人が座っている。その左右にはみるからに実力者であろう獣人達が控えていた。

どうしたものかと蒼太とディーナが動かずにいると、一番手前の兵士が前に進むよう促してくる。


蒼太はその場で一度ため息を吐くと、覚悟を決め足を踏み出していく。ディーナはその蒼太の斜め後方よりそのあとを着いて行った。王の前までたどり着くとそこで声がかかった。

「そこでいい。待たせて悪かったな」

真っ先に口を開いたのは玉座に座る獣人だった。


「先に自己紹介をしておこう、オレがこの国の王バルドルムだ。見た目じゃ分かりづらいだろうが象の獣人だ、象っていうのは東のほうの大平原にいると言われていた伝説の生き物だ。」

動物種の耳があることから獣人であることは一見してわかったが、象の特徴は持っておらず、だがその見た目に反するほどの重厚感が感じられていた。


「俺はソータ、冒険者だ」

「私はディーナリウスと申します、同じく冒険者です」

二人の反応にバルドルムは笑みを浮かべながら顎を撫でていた。

「ほう、オレを前にしてびびらないその態度はさすがというべきか。お前らはどう思う?」

話を振られたのは左右に控えている獣人たちだった。


「全く物怖じしていないのは、その身にある力に自信があるからこそだと思いますよ。伝承は嘘ではなかったというところですかね」

豹の獣人で、背が高くやや細身の文官が答える。

「そうかぁ? わしには、ただの世間知らずなだけのガキにしか見えんが」

猪族の隻眼の武官は鼻で笑いながら、蒼太を嘲る。

「戦わせてみればわかることだ……」

鷹の獣人は腕を組み目を瞑りながらそれだけ答えた。

「そなたらの言葉にも動じぬ胆力を持っていることは確かだ。私の覇気にもな」

白虎の武人は蒼太から目線を逸らさずに、覇気を放っていた。


「それで、俺は書庫にある本の閲覧希望を出しただけなんだが、なぜ王への謁見ということになったんだ?」

王へと意見を述べる四人を無視して、蒼太は質問を投げかけた。

「くっくっく、不遜な態度だな。オレはそういうの嫌いじゃないがな。お前達はあれだろ? グレヴィンの書いた本が読みたいのだろう?」

蒼太はその質問に意外そうな顔をした。

「そこはちゃんと伝わっていたのか……だったら、尚のこと何故こんな場所につれて来られたかがわからんな」


「そうだったな、ここに呼んだ理由は三つ。一つはグレヴィンという名前をお前が出したから、そしてお前が人族でソータという名前だから、もう一つはオレの好奇心だな。はっはっは」

王は豪快に笑いながらそう言った。

「ってことは、やはり獣人国とグレヴィンには繋がりがあったんだな」

蒼太の言葉に王は頷いた。

「その通りだ、そしてお前が話の通りの男なら本を見せるくらいなら許可してもいい」

どこか含みのある表情でそう言った王に対して、蒼太は何も言わずに次の言葉が出てくるのを待った。


「ただし、お前が本当に伝承にあるソータならな。それを証明できるなら、すぐに書庫を開放しようじゃないか」

蒼太はそれでも黙って王のことを見ていた。ここまで言うからにはその証明が難しいということをわかった上で話していると理解していたから、その次に出る言葉を待っていた。

「くくっ、何も言わないということはオレがこれから言おうとすることに予想がついているんだろ? ならば、言おう。今度この国で開催される武闘大会で優勝すれば、お前が伝承にあるソータであろうと、別人であろうと関係なく書庫を開放しようじゃないか!」

立ち上がり、両手を広げて蒼太へとそう告げた王の顔は満面の笑みだった。

「証明できたとしても何だかんだ言って、大会に参加させるつもりだったろ……」


「わっはっは、その通りだ! この国は強いことこそ正義だ。ならば力を示せ! 優勝してみせろ! さすればお前が正義だ!!」

大仰に言う王に対して、側近は諦め・同意・悲しみとそれぞれの反応をしていた。


蒼太は嬉々とした表情で服の裾をひっぱるディーナに気づき、腹をくくることにした。

「……出るのは出よう。だが、俺にも条件を出させてくれ」

「ふむ、聞こうじゃないか」

王はどかっと玉座に座りなおすと、話を聞く姿勢になる。


「まず、一つ目。参加する際、仮面をつけて顔は隠す、参加名も偽名だ。それから、優勝したなら書庫の本の閲覧だけじゃなく俺が必要な本をくれ」

蒼太の言葉に反応したのは豹の文官だった。

「一つ目はいいとしても、本の持ち出しはさすがに……」

「強いことこそ正義だ! そう言ったのはそこの王様だったが、それは偽りということか?」

蒼太は文官に最後まで言わせずに、先ほどの王の言葉を引用して被せていく。


「いえ、王の言葉は正しいですが……」

それでも文官が簡単には頷けずにいると、王が助け舟をいれた。

「よい、俺が言った言葉だ。それに、優勝できればの話だ。今年の参加者は粒ぞろいだと聞いている。インガルド、そうだったな?」

「左様で、僭越ながら私の息子も参加することになっています。あいつは私から見ても贔屓目なしに天才と言えるかと」

インガルドと呼ばれた白虎の武官が答えた。

「もちろん、息子以外にもSランク冒険者や知名度の高い実力者も多数参加しておりますので、優勝は困難かと」

「だ、そうだ。それだけの中を勝ち抜いて優勝することが出来るなら、本など安いものだ」

王の言葉に、文官は唇を噛みながら黙ってしまった。


「そういうことだ、お前の条件はどちらも飲もう。こちらの条件は優勝しなければ書庫の話はなかったことにするだけだ。どうだ? だいぶお前に有利な条件だろ」

王は挑発的な視線を送りながら蒼太に問いかける。

「そうだな、元々参加するつもりはなかったが、それだけの餌をぶらさげられたら少しはやる気が出てきたよ」

その挑発に蒼太は笑みで答えた。


その後ろでディーナは喜びを何とか隠そうとしながらも隠せずにその表情に表れていた。

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