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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第八十六話

前回のあらすじを三行で


図書館大きい

司書は有能

王城に行ってみる?

「しかし、城へ向かったところで果たしてとりあってもらえるかどうか……」

 蒼太は城に向かうことを考え始めており、武闘大会参加のことはとりあえず保留にしていた。

「通常であれば、城に向かえば入り口で来城理由を尋ねられます。そこで理由を話せば、上手くいけば王へと取り次いでもらえると思います。我が国の王は開かれた政治を……いえ、正直に言えば興味を持ったものには耳を傾けてくれますから」

 蒼太はこの間会ったばかりのエルフの王様を思い出していた。

「何か、似たような王様が多いな……」


「ん? 何か言いましたか?」

 蒼太のつぶやきに司書が反応するが、蒼太は軽く首を横に振った。

「いや、何でもない。色々と教えてくれて助かったよ。とりあえず、城に行ってみるかな」

 蒼太はディーナの顔を見ながら、同意を求めるようにそう言った。

「そうですね、お城に行ってダメだったら武闘大会参加を検討しましょう」

 ディーナはなぜか蒼太の武闘大会参加を願っているらしく、城へ向かうことが徒労に終わるであろうと考えていた。


 席を立ち、本を片付けようとする二人を司書が止める。

「本は私どものほうで片付けておきますので、お二人はどうぞ城にお向かい下さい」

 蒼太とディーナが何か言おうとする前に、別の司書によって本は運ばれ片付けられていった。

「はぁ、何から何まで至れり尽くせりだな。優秀なのか、過剰なのか判断に困るとこだが……ありがとうな」

「ありがとうございます。色々と教えて下さり、助かりました」

 蒼太とディーナは礼を言い、図書館を後にした。


 蒼太達が図書館を出て扉が閉まったのを確認すると、司書達はカウンターに集まっていた。

「まさか、本当にグレヴィン様の本を捜し求める人が現れる日が来るとは驚きですね」

「千年前の予言が現実になるとは……驚きです」

「エルフの方はわかりませんが、あの人族の方は伝承通りの容姿でしたね」

「さてさて、あの方が本当にグレヴィン様がおっしゃった方なのか、それとも……」

 司書達の雑談は、新しい利用客が来るまで続いた……。


「さて、城に行ってみるか。話を聞いてもらえるといいんだが」

「そうですね、何せ街全体がこの雰囲気ですから……話だけでも聞いてもらえればいいですね」

 二人は喧騒の中へと戻り、城へと足を向けた。


 混雑するメインストリートを通り抜け、城へとたどり着くと城門は開かれており入ってすぐのホールまで一般開放されていた。そこには受付があり、出店の許可や嘆願書の受付などをしていた。

 蒼太とディーナは受付前に出来ていた列に並ぶことにする。しばらくすると順番が回ってきた。

「どうもお待たせしました、どういったご用件でしょうか?」

「あぁ、ちょっと書庫にある本の閲覧許可をもらいたいと思って来たんだが……受付はここで大丈夫か?」

 蒼太の質問に受付をしている文官は頷いた。

「はい、こちらで承ります。お読みになりたい本のタイトルなどはわかりますか? 申し訳ありませんが本によっては許可がおりないものもありますので」

 蒼太はしばし考えるが、著者名は覚えていたが本のタイトルを調べていないことに気づいた。


「あー、本のタイトルはわからないんだが、著者名は『グレヴィン』だ。図書館で聞いたら、ここの書庫にしかないというもんでな」

 著者名とここに来た経緯を軽く話すと文官は一度目を見開くと、頷いた。

「なるほど、それでいらしたのですか。それではあなたが……いえ、私が聞くことではないですね。少々お待ち下さい、上の者に話して参ります」

 蒼太が頷いたのを確認すると、席を立ち文官は上の者へと話をしに行った。


 しばらく待っていると、先ほどの文官が上司と思われる文官と共に戻ってきた。

「大変お待たせしました、ここからは私のほうで案内を務めさせて頂きます。まずはお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、俺はソータだ。彼女は俺の仲間のディーナリウス」

「ディーナリウスです。よろしくお願いします」

 二人の挨拶に上司の文官は満足そうに頷いた。

「はい、こちらこそよろしくお願いします。ただいま準備をしておりますので、お待ち頂く部屋へとご案内します」

 蒼太は書庫を見せてもらうことに何の準備がいるのか? と疑問に思ったが、口には出さず文官についていくことにした。


 案内された部屋は広く、貴族などが謁見の際に待機室として使われる部屋の一つであった。

「何で書庫に行くだけのはずが、こんないい部屋に案内されたんだ?」

「……何かまた何かに巻き込まれている予感がしますね。グレヴィンという名を口にした時の受付の方の反応が通常のそれとは違ったように思います」

 蒼太は現状に対する疑問を口にしたが、同様の違和感をディーナも感じていた。ソファに腰を下ろし、呼ばれるのを待つことにしたが、蒼太は揉め事の予感を感じていた。


 しばらく二人は無言で待っていたが、ノックの音が響いたことで立ち上がる。

「失礼します。準備が整いましたのでご案内します、こちらへどうぞ」

 部屋に迎えに来たのは先ほどと同じ文官だった。

 文官の後ろを促されるままについていく二人だったが、途中『書庫』の札のついた部屋の前を通り過ぎたことで、いよいよ本来の目的から外れてきたのではないかとの疑念が強くなっていた、

「な、なぁ、さっきの部屋に……」

「そこの角を曲がった先が目的地となります」

 蒼太が声をかけようとしたが、それは振り返った文官の言葉によって遮られた。


 蒼太の質問は空中に消えてしまったため、仕方なく黙ってついていくことにした。角を曲がった先には重厚な扉があり、人族の城・エルフの城と似た空気を持つそこがどこに繋がっているか説明を受けなくても二人には予想がついていた。



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