第六十八話
前回のあらすじを三行で
大臣大変そう
帰りは馬車二台
そして握手
蒼太達は工房にたどり着くと、ドルス達に礼を言い中へと入っていく。
いつもの生活部屋へ戻ると、アレゼルは大きく息を吐きソファへともたれかかった。
「はーー、やっと帰ってこれたあ」
帰りの馬車の中でも緊張していたらしく、ようやく人心地がついたようだった。
「ソータさん、果物だしてー」
アレゼルの向かいには、既に皿を用意したローリーが座っており、城でもらった果物を今か今かと待ち望んでいた。
「あ、あぁ」
一瞬で準備を整えたローリーに驚きつつも蒼太は果物をバッグから取り出していく。
「やったー、ソータさんありがとー!」
ローリーはこれまた既に用意してあった果物ナイフで上手に皮を剥いていくと、それをカットし皿に並べていった。
「なかなか見事な包丁さばきだな。料理下手とは思えない……」
「包丁は上手なんですよ、包丁だけは。味付けになった途端なぜか壊滅的なことに」
感心している蒼太にナルアスが真実を告げた。
「あー、余計なものを足しこむ系か」
「ですね……いくら教えてもレシピにないものをいつの間にか加えてしまうんです」
蒼太とナルアスが料理の腕前について論じてる間も、本人は次々に果物を飾りつけていた。
蒼太は今後の話をしようと考えていたため、とりあえず盛り付けが終わるのを待ちながら自分の席へとつく。
ディーナとナルアスもそれにならい、腰を下ろす。
「とりあえず、ローリーの作業が終わったら今日のことと、これからの話をしようか」
その提案に二人は頷き、しばしローリーの妙技を見守ることにした。
「これで、最後にくちばしをつけてっと……よし、完成!」
そこには見事な鳥が表現されていた。
蒼太もディーナもナルアスも、疲れ果てていたはずのアレゼルもその出来栄えに目を見張り、言葉を発せずにただぽかんとそれを見ていた。
「ん? みんなどうしたの……なんか怖いよ」
当の本人は何に驚いてるのかわからないといった様子で、鳥の羽を模した果物を一欠け手に取り口に運んでいた。
「「「「あーーーー!!!」」」」
四人が揃って大きな声をだした。
「な、なになに!? どうしたの??」
急に、しかも四人が揃って大きな声を出したことにローリーは驚き、四人の顔を順番に見ていく。
「はぁ……いえ、いいのよ。大声出してごめんなさいね」
諦めたようにナルアスが。
「そうだな、気にするな。仕方ないことだ」
慰めるように蒼太が。
「形あるものはいつしか滅びるんですね……」
どこか遠い目でディーナが。
「こうなったら、みんなで食べましょう。美味しいですよ!」
前向きな意見をアレゼルが、と四者四様の反応を示した。
「うーん、よくわかんないけど……まぁいっか。上手に出来たからみんなでたべよー」
そして、ローリーの言葉を皮切りに皆がそれに手を伸ばした。
カットされたそれらは、一級品の果物でありその味は確かなものであったため、一羽の鳥はあっという間に食べつくされていた。
「美味しかったです」
「確かに、あれだけのものになるとなかなか手に入らないな」
ディーナと蒼太は食休みをし、ローリーは後片付けを、ナルアスは寝入ってしまったアレゼルをベッドへと運んでいた。
食休み中の二人も片付けやアレゼルを運ぶことに名乗りをあげたが、勝手を知る自分たちがやったほうが早いと二人に断られていた。
お言葉に甘えて、と二人は休憩していたが頭の中は今後どう旅を進めていくかがその大半を占めていた。
しばらくすると、片づけを終えたローリーとナルアスが戻り、席へとついた。
「アレゼルは寝たのか?」
「えぇ、だいぶ気疲れしていたみたいで。ベッドに運んでも目を覚ますことなくぐっすりでした」
寝顔を思い出しながらナルアスは微笑んでいた。
「じゃぁ、俺達のこれからの動きを話しておきたいと思う。二人には色々と世話になったからな、それくらいはしておきたい」
「大したことは出来てないと思いますが、そう言って頂けると嬉しいです」
「ローリーさんはみんなのピンチを救ったけどねー」
そう言って胸を張る彼女をナルアスが嗜める。
「あなたは、謙虚という言葉を覚えなさい!」
言われたローリーはペロっと舌を出していた。
「話を戻していいか?」
「す、すいません」
少し困った表情で訪ねる蒼太にナルアスは頭を下げる。
「俺とディーナは、俺の拠点のある冒険者の街トゥーラへ一度戻って、その後旅に出ようと考えている」
「旅にですか?」
蒼太とディーナは頷く。
「俺達は二人とも千年前の魔王との戦いに疑問を持っている。何故俺は送還されたのか? 伝承だと俺が狂って他の勇者を殺したからそれを止めるために送還したという話だったが、ディーナの話だと俺が送還された後にソルディアは刺されている。これだと時系列的に伝承と異なる部分が出てきてしまう」
蒼太は、そうだったな? とディーナを見ると彼女はその通りだ、と頷いていた。
「私のほうは、その謎に加えてあの時に他に人がいた可能性がひっかかっています。刺された状態での兄さんの記憶だから曖昧なんですが、それでもやはり気配を感じていました。兄さんの気配察知スキルはかなり高いレベルのものだったはずですし」
今度は蒼太がその言葉に頷く。
「だから、俺達はその謎を解くために他種族の国を訪れて情報を集めるつもりだ。エルフ族にはディーナがいたように、他の国でも何か情報があるかもしれないからな」
「そう、ですか。私のほうでも何かわかったことがあったら、カレナの店に手紙を送りましょう。お力になれるかはわかりませんが」
「ありがとう、助かる」
「じゃぁ、ローリーさんはソータさんたちと一緒にトゥーラまで行こうかな」
これまでの話を聞いてなぜそんな結論になったかは謎だったが、彼女はそう言った。
「あなたという人は……なぜそうなるのよ。大体あなたはこの国に数少ない錬金術師なんだから、国から出る許可がそうそうおりるわけがないでしょう?」
ローリーは、その問いに得意げな顔で答える。
「ふっふーん、だからソータさん達と一緒なんですよー。あの短剣があればフリーパスで通れるし、仮にわたしが一緒だったとしても強く追求は出来ないはず!」
言い終えると、ピースサインを作った。
「……意外と考えてるな。普段の言動からは想像出来ないところだ。問題があるとすれば、俺が首を縦にふるかどうかってところだがな」
蒼太が悪い笑みを浮かべローリーを試すような発言に対し、これまでとうって変わってローリーは真剣な表情になる。
「エルミアちゃんの手紙を読んで、そろそろ一緒に暮らしたいなあって思ったの。でも、一度この国から出奔した私は国から出るのがなかなか難しいんだよ。かといってエルミアちゃんがこっちに来るのも一人じゃ難しいし、なによりカレナ母さんを残して来るとは思えない。カレナ母さんも私と同じ理由でこっちには来たがらないだろうし……だから、お願いだよ。わたしをソータさん達と一緒にトゥーラまで連れていって!」
そう言うと、彼女は深く頭を下げた。
胸のうちを吐露され、静かになるが蒼太は口を開かずナルアスの言葉を待っていた。弟子であるローリーがいなくなることが、この工房にとってどれだけのダメージなのかわからないが、一人いなくなることは大きな負担になるであろうことは予想できた。
そして、ローリーの心情も理解出来る。その二つが分かるからこそ蒼太はナルアスの発言を待つことにした。
「あなたがそんなことを考えていたなんて……全然わからなかったわ。ここも寂しくなるわね、きっとアレゼルも泣くわよ」
「アレゼルにはわたしから話すよ」
寂しそうな笑顔でナルアスは頷いた。
「そうね、そうしてあげてください。あの子はなんだかんだあなたに懐いていたから」
ナルアスは蒼太へと向き直すと頭を下げる。
「不肖の弟子ですが、どうか同行を許可して頂けませんか? お願いします」
ローリーもナルアスに続いて、再度頭を下げた。
「……わかったよ。元々そこまでされなくても断る気はなかった。強い理由があるのか、遊びで言ってるのか試しただけだ。悪かったな」
その言葉に顔をあげたローリーは満面の笑みだった。
「よかった、ありがとう。ソータさんありがとうね、ディーナ様もよろしくお願いします」
蒼太に決断を任せていたディーナも笑顔になり、差し出されたローリーの手を取り握手を交わした。
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