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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第六十七話

前回のあらすじを三行で


王家の紋章の入った短剣あげる

執事風の男の正体は実は王様

苗木やるよ、王は深く感謝

 終始礼を言っていたアグラディアが出て行くと、部屋の中には安堵の空気が流れた。

「……ディーナ、ありがとう」

「いえ……あれで大丈夫でしたかね」

 蒼太が何に対して礼を言っているのかわかっているからこそ、ディーナはこの言葉を返す。


「あぁ、俺が持ってたら不自然だったからな。あの解答は最適解だったと思う」

 蒼太とディーナは顔を見合わせると、ため息をついた。

「何を出すかと思ったら、アレを出したので私も驚きましたよ。葉だけで大騒ぎになるというのに……」

 ナルアスもあの場面を思い出し、その身を震わせた。


「ま、まぁ短剣をもらえた事だし結果オーライだろ。あの王にあの苗木があれば、エルフの国もこれで少しは改善されるだろ。大臣もそこそこ使えそうなやつだったしな」

「うふふ、あの大臣さんも気苦労多そうですね」

 ディーナが王城にいた頃の大臣と彼が良く似た容貌をしており、その大臣も同じように気苦労の耐えない様子だったのを思い出しついつい笑ってしまった。


「あー、あの人も大変そうだったな……どうもエルフの王ってのは変わり者が多いように思えてくるな」

 大臣の気苦労の原因である王の行動を鑑み、蒼太が以前に会ったことのある王も変わり者だったため、少ない参考ながらそういった印象を持つこととなった。


「それはそうと、もうここには用事がないから帰ってもいいんだろうか?」

 部屋を出て行ったアグラディアも今後のことは何も言っておらず、その後誰かが部屋にくる様子も見られないためここへの登城経験のあるナルアスに蒼太は訪ねた。

「うーん……私たちがここにいた理由も王様からのお土産を受け取るためという話でしたし、行ってもいいんじゃないですかね? 短剣を見せれば通れるでしょうから」

 ナルアスは少し考えてから蒼太の質問に答える。


「それじゃあ、さっさと工房に戻るか。気疲れもしただろうから早く休みたいやつもいるだろう」

 その言葉にアレゼルだけが大きく頷いていた。

「ローリー、そろそろ出る支度をしなさい。そろそろ工房に戻るわよ」

 ナルアスはテーブルの上の茶請けを食べているローリーに出発を促した。

「はーい、ソータさん。こっちのフルーツ、バッグに入れていってもらえるかな?」

 ローリーは食べきれなかったフルーツを抱えて蒼太の下へとやってきた。


「……まぁ、いいか。貸してみろ」

 蒼太はやや呆れながらも、ローリーがかかえているフルーツを一つずつマジックバッグの中へと放り込む。

「ありがとー!」

 ローリーはフルーツを渡し終わると、残ったお菓子を自分の服のポケットに詰め込んでいた。

「いや、うーん、まぁいいんだが。なんというかほんと子供っぽいな」


「そうなんです、あれが欠点なんですけど、あの自由さが面白い発想にも繋がるので強く否定も出来なくて……」

 ナルアスは頭に手をやりながら、首を横に振っている。その動作からもローリーに対する苦悩が伺えた。

「あれで一児の母だというんだからな、エルフも色々いるもんだ……」


 そんなやりとりをしていると扉をノックする音が部屋へと響いた。

「失礼します、お帰りの案内をしたいのですが開けてもよろしいでしょうか?」

 どこか聞き覚えのある声が扉の向こうから聞こえてきた。

「あぁ、開けていいぞ。こっちも準備は出来ている」


 扉を開き、その向こうに立っていたのは来るときの案内役を務めたドルスだった。

「どうもみなさん、帰りも私のほうで案内させて頂きます」

 ドルスは笑顔で頭を下げる。


「あんたか、帰りはあの窮屈さを我慢しなくてすむのか?」

 蒼太は見知った顔だったため、冗談交じりに皮肉を言った。

「ははっ、あれは勘弁して下さい。もう一台用意しましたので帰りは二台に分かれて乗って頂けます」

「ほー、安心だな」

 蒼太はおそらく対応はしてあるだろうと考えていたが、しっかりと指摘される前に準備をしていたドルスに感心していた。


「それじゃあ、早速案内してもらおう」

「わかりました、こちらへどうぞ」

 ドルスは来た際と同じ道を辿り、城の玄関までと誘導する。


「王様との謁見はどうでした?」

「あー、色々あったが結果うまいこと話はまとまった、と思う」

 蒼太はやや自信なく答えた。

「そ、そうですか。なにはともあれ、大きな問題なく帰られるようで安心しましたよ」

 蒼太の性格の一端を見て知っているドルスは、何かあったのだろうと予想し額に一筋の汗をかいていたがあえてそこに突っ込むような真似はしなかった。


 蒼太が会話をする横にディーナは位置し二人の話を聞いており、ナルアスは一歩下がった位置で会話を聞いている。さらにその後ろをローリーはお菓子を食べながら、アレゼルはあたりをきょろきょろと見ながらついてきていた。


 城の入り口まで来ると、既に扉は開かれておりその外には二台の馬車が用意されていた。

 前の馬車には蒼太とディーナが乗り、ドルスが御者として乗車した。後ろの馬車には工房の三人が乗り、御者は城に来るまでの御者と同じ者が担当していた。


「それじゃあ、工房まで頼む」

「はい、承知しました。ほら、頼むぞ」

 蒼太が小窓から御者台に声をかけると、ドルスは返事とともに馬へと声をかけ手綱を操り出発した。


「ディーナ、俺について来てくれるのは嬉しいが今後どうする? ソルディアの敵があいつだったとしても、もう生きてはいないだろうし」

 蒼太の言葉にディーナは真剣な表情で考え込み、しばしの間沈黙が馬車の中を支配した。

「とりあえず、トゥーラっていう冒険者の街に家を持ってるからしばらくはそこでゆっくりするのもいいかもな」

 蒼太が軽口を叩くが、ディーナは考え込んだ表情のままだった。


「……兄さんから送られてきた映像が気になってるんです。やはりあの時、別の誰かがいたのは勘違いじゃない気がするんです。それと人族の勇者の方の表情も何か普通じゃなかったです。あの方は既に亡くなっているのかもしれませんが、何か他にも私たちが知らないだけで真実は別のところにあるような気がします……」

 暗い顔のディーナの頭に蒼太は手を乗せた。


「ディーナが気になるならきっと何かあるはずだ、そもそもソルディア達を攻撃したのが俺じゃないとしたら、何で姫さんは俺を送還したのかがわからない。何故あいつがソルディア達を刺したのか、送還魔法を使った姫さんは一体どうなったのか、他にいたかもしれない誰かは本当にいたのか、いたのなら何ものだったのか」

 蒼太も心のつかえとしてあったものをディーナへと吐き出していく。


「俺の家に戻って、しばらく休んだらその謎を一緒に解き明かしていこう。な?」

 蒼太は笑顔で、その目には強い意志を宿してディーナへと語りかける。この世界でお互いだけが千年前の時間を共有できる唯一無二の存在であることを二人は強く感じていた。

「はい! 私も思いだせる限りの情報を探ってみますね」

「無理はするなよ?」


 蒼太が頭から手を離すと、そのまま二人は強く握手をした。

お読み頂きありがとうございます。

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新作投稿始めました。 五百年後に再召喚された勇者 ~一度世界を救ったから今度は俺の好きにさせてくれ~

本作「再召喚された勇者は一般人として生きていく?」コミカライズ連載中!

配信は電子コミックサービス「 LINEマンガ 」、漫画担当は濱﨑真代さんとなります。

コミカライズ2巻は8月7日発売です! i484554

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