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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第六十五話

前回のあらすじを三行で


蒼太殊勝な態度

貴族の暴言

蒼太キレる

「……それがいいか。わざわざ来てもらったことだし、我々エルフ族が解除することがかなわなかったディーナ殿の封印を解いた功績に褒美をとらせたいと思う」

 耳打ちした大臣の言葉に頷くと、蒼太に対しそう告げた。

「褒美の内容だが……」


「ちょっと待ってくれ、先に言っておくが名誉爵位とかそういうのはいらないからな。むしろそんなのもらったら邪魔だ」

 大臣は聞こえてないはずの自分が言った提案を王が口にする前に、先んじて封じられたことに驚き目を見開いていた。

 王はといえば、口を開いたまま固まっていた。


「それで、何を褒美にくれるんだ?」

 発言を先に潰した蒼太が質問をするが、王も大臣も閉口してしまった。

「……質問に質問を返すことになるが、何か欲しいものはあるか?」

「特にこれといって思い浮かばないが……そうだな、ディーナは俺が連れて行く。それに対する異論を今後言わないでもらえるならそれで十分だ」

 蒼太はディーナの肩に手を置きながら要望を伝えた。


「ふーむ、今回の事案は今のところ我々しか知らないことだし私は構わんが……」

 王はそう答えながらチラリと大臣や貴族を見るが、皆難しい顔をしている。

「皆はどう考える?」

「うーむ、私としてもよろしいかと思いますが、何せ前例なきことゆえ」

 大臣は肯定的な発言だったが、それを強くは言えず。


「しかし、元々はこの国の王族で何か政に関わってもらうべきでは?」

「数百年ぶりの復活であれば、それを大々的に発表すべきでは」

「何を言っておる、そもそも封印された経緯を考えたら追放すべきだろう」

「いや、その経緯自体間違っているという話もあったはずだが」

「そのような曖昧なことを今論じても詮無きことであろう」

 貴族達は様々な意見を各々が発言し、意見のまとまりは見られなかった。


「どっちにしても、俺はディーナを連れてこの国を出るつもりだ。それを許さずに俺を犯罪者とするか、許可して褒美をとらせたことにして、俺との関係を築くかどちらかになるな。友好とまではいかなくても、少なくとも敵対はしないと思うが」

 それまで発言していた貴族達は蒼太の言葉を聞いて黙り込んでしまった。


「それを言われてしまったら頷くしかないだろう。その提案を呑んだところで、こちら側が大きなデメリットを負う事はないから文句の言いようもない。ディーナ殿に関しても我々では手の出しようがなかったからな」

 王はそう答え、大臣もそれに頷いていた。


「むしろ、このことで少しでも友好的にいてもらえるなら儲けたもんだ」

 肩を竦めながらそう言う王が本音を隠さないことに貴族たちは動揺していた。しかし、蒼太はその反応に対して笑みを浮かべていた。

「あんたなかなか面白いな。あんまり王様っぽくないところには好感が持てるよ」

 蒼太と王は視線を交わし、共に笑みを浮かべる。


「文句がなければ、ディーナ殿の今後の行動に関して我が国は口出し無用の立場を貫くことと決定する。今後も彼女やその仲間に対して何かしら敵意の発言や行動をすることを禁止する!」

 その宣言に広間は騒然となりざわざわとするが、声を上げて反対意見を出すものはいなかった。


「なら、俺達はもう行っていいか?」

「あー、そうだな……少し土産を持たせたい、さっきの控え室で待っていてくれるか。あとで届けさせよう」

 少し考えた後、王は含みを持った表情でそう言った。

「欲しいものもないが、くれるというならもらっておくか。面倒なものだったら即返却するからな」

「あぁ、わかっている。それでは謁見終了とする、誰かソータたちを部屋まで案内するように」


 未だに場は騒然としていたが、王の発言で強制的にこの場は解散された。

 蒼太達の近くに一人の騎士が歩み寄り、部屋への案内を請け負った。


 戻る道中、騎士も他の面々も余計な言葉は出さずに沈黙のまま部屋へとたどり着く。

「それでは私はこれで失礼します」

「あぁ、ありがとうな」

 簡単な挨拶を交わし、騎士は持ち場へと戻っていく。


 扉を開け部屋に入ると、アレゼルは大きなため息を吐いた。

「はーー、ソータさんが怒るからどうなることかと思いましたよ」

 そのままソファへともたれかかる。


「悪かったな、ついついイラッときたもので」

 反省していない顔でそう弁解するが、それを見たナルアス、アレゼルはため息を吐いた。

「あそこでソータ殿が貴族に手を挙げなくてよかったですよ。色々と面倒なことになってたでしょうから」

「ほんとですよ、ボクたちまで一緒に国家反逆罪とかで捕まっちゃってたかも」

 二人はげっそりとした表情をしていた。


「まぁ、大丈夫だったろ。あの王様だったら……もしダメだったとしても何とか乗り切ったさ」

 悪びれずに言う蒼太に対して、二人は再度ため息をついた。

「でも、これでディーナもこの国に縛られないんだから、上々の結果だろ」

「ですね、よかったです」

 ディーナは満面の笑みで蒼太に同意した。


「おー、お菓子新しいのが用意されてるー。しかもさっきとは別のやつだ!」

 ローリーは相変わらずでテーブルの菓子をパクついていた。うなだれていたアレゼルもローリーに渡された菓子を口にした途端、元気を取り戻していた。

「師匠、師匠も食べましょうよ。すっごく美味しいですよ!」

 謁見に行く前と同じ風景にナルアスはやれやれといった表情で二人のテーブルに加わった。


 蒼太とディーナもそのソファに座り、用意された菓子に舌鼓を打っていた。

 先ほどの謁見や今までの旅の話などで盛り上がっていると部屋をノックする音が聞こえた。


「失礼します、王の命で皆様への土産をお持ちしました」

 王の話の通りであったため、ナルアスが扉を開けに移動する。

「どうぞ」


 執事の格好をした男性は部屋へと入ると手にもった荷物の布をとり、その中身を蒼太達へ見せた。

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