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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第五十二話

前回のあらすじを三行で


結界を切り開く短剣

十階にディーナがいるの?

あっという間に次は10階


お茶を飲み終えると、蒼太はいくつかのアイテムをナルアスに渡す。

「一応これを渡しておくよ。念のため説明しておくと、こっちが回復薬でこっちが魔力回復薬、それとこっちのは飲んだら身体能力が一時的に向上する薬だ」

「ありがとうございます。でも……これって全部効果の高いやつですよね?しかもいやしの木の葉を使ったレシピの」

 それぞれを二本ずつ取り出したそれを、ナルアスは順番に受け取りマジックバッグへとしまっていく。


「あー、今は別のレシピが主流なのか。話を聞く限り、木の葉はそうそう使えなさそうだからな……まぁ、それは昔作ったやつだから気にせず使ってもらって構わないさ」

 蒼太は恐縮するナルアスに気にしないようにとフォローをいれた。

「値段とか気にせずに使えよ、遠慮してお前に何かあったらアレゼルが悲しむからな」

 ナルアスは自分でも回復薬などは用意していたが、蒼太にもらったものに比べると効果が低く安価なためそちらを使おうと考えていた。

「そう、ですね。ありがたく使わせてもらいます」

 しかし、アレゼルを引き合いに出されたため、その考えを改めたようだった。


 毛皮を亜空庫にしまうと、二人は階段へと向かった。


 階段を一段降りるごとに魔素の高まりを感じる。

 降りきるとそこは広い空間が広がっており、奥に大きな魔水晶があるのが見えた。

「……あれがディーナの封印されてる水晶か」

 光が反射しており中身は見えなかったが、それらしいものは他には見当たらなかった。


「そうですね、おそらく。でも……」

 その視線の先には、多くの魔物が存在していた。

 そして更に中央には三つ首のヒュドラが鎮座している。

「まずはあいつらを何とかしないと、か。ナルアス、どこまでやれそうだ?」


「そうですね、周囲にいる敵なら相手取ることは出来ると思います。ただ……中央のアレはちょっと、私の手には余るかと」

 自分と敵の戦力を元に、冷静な分析を蒼太に伝える。

「なら……あの大物は俺が相手をしよう。雑魚は俺があいつにたどり着くまでに減らしておくから、残りは頼んだぞ」

「わかりま……! な、なんですかそれは!?」

 返事をしようとしたナルアスはその目を疑った。


 蒼太の周りには十を超える火の玉、それと同じ数の氷の玉が浮かんでいた。

「相反属性の魔法を同時に!? しかもそれだけの数を!!」

「行くぞ!!」

 その言葉と共に、魔法は敵の集団へと飛んでいく。

 ナルアスは魔法の行方を目で追っていたが、蒼太は自らの魔法を追いかけるように走り出していた。


 火の玉は着弾すると、更に小さな火の玉に別れ次々に魔物に襲い掛かっていった。

 氷の玉は着弾すると、その箇所を中心に氷の蔦が伸びていき次々に魔物を氷漬けにしていった。

 この時点でその場にいた魔物の半数は倒されていた。


 爆風が立ち込める中、蒼太はそれを意にも介さずその先へと突っ込んでいった。

 魔法によるダメージがないもの、魔法をくらったもののまだ戦闘することが出来るもの、それらが蒼太を行かせまいと進路を封鎖する。

「邪魔だ」

 蒼太は既に抜いていた十六夜でそれらに斬りかかった。


 魔物の身体は熱せられた飴細工のように一刀両断にされていく。

 しかし、その中には硬質化した皮膚を持った魔物がおり、十六夜の刃はその皮膚で止められた。

 止められたと判ると皮膚を滑らせ、そこから刃の向きを変えると別の魔物へと斬りつける。


「すごい……」


 ナルアスはぽかんと口を開けて、蒼太の戦いを見ていた。

 しかし後ろの魔物を斬ろうとした蒼太に目線を送られ、自分がしなければいけないことに気づいた。

「はっ、行かないと!!」

 レイピアを抜き、急いで蒼太の後を追う。


 蒼太の後ろには道が出来ており、ナルアスはそこから外れた魔物へと攻撃をしていく。

「せいっ!」

 武器の特性からか、蒼太のように一刀両断というわけにはいかなかったが、ナルアスは魔物の弱点を突きその命を奪っていく。

 蒼太が斬れなかった魔物も傷ついているところを突くことでダメージを与えていく。

「これで!」

 レイピアが奥まで刺さった瞬間に、魔法を伝導させその体内に炎の魔法を撃ち込んだ。

 ナルアスがレイピアを勢いよく引き抜き魔物から距離をとった瞬間、魔法が弾け魔物の身は爆散した。


「やるじゃないか、伊達に元Aじゃないってとこか」

 ナルアスの動きを横目で確認しながら蒼太も敵を倒していく。

 彼のその身は魔物の血液で汚れていたが、それには気にも留めない。

 しかし、刃の汚れだけは切れ味を鈍らせるため、適宜魔法により汚れを取っていた。


 そして、蒼太はヒュドラの下へとたどり着く。

「やっと、お前と戦えるな」

 ヒュドラはディーナリウスが封印された魔水晶を守っているように位置していた。

「悪いが、お前の後ろに用があるんだ。さっさと退場してもらうぞ」

 蒼太は十六夜を、亜空庫から取り出した竜斬剣へと持ち替えヒュドラへと向かっていった。


 中央の首へ目掛け走っていくが、別の首が横から噛み付きその進路を塞がれた。

 それを避けると、次の首が、それを避けた所に中央の首からブレスが飛んでくる。


 蒼太はとっさに魔力の盾をはることで直撃は避けたが、吹き飛ばされ距離をとることになる。

「やるな、だてに番犬やってないな」

 ヒュドラは距離を詰めてくることはなく、魔水晶の前から動かず、それを守るためここにいるのは明らかだった。


「魔法を試してみるか」

 先ほど同様火の玉を出すと、向かって右の首に放つ。

 氷の玉は左の首に、そして中央の首へは蒼太本人が向かっていった。

 しかし、魔法自体が初級レベルの魔法であるためヒュドラには効かず蒼太は再び距離をとることとなった。


 上級以上の魔法を使えばあるいは、とも思ったが周囲を巻き込んでしまう危険があること。

 そして、最適化中の影響なのか高位の魔法となると魔力を高めることが出来ても、魔法を放てる感触が弱かった。


「ふぅ、さてどうしたもんか……手詰まりとは言わないが、結構強いな」

 20階層あったとして、半分のこの階層でこれだけの魔物が出てくるのは異例だった。


お読み頂きありがとうございます。

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新作投稿始めました。 五百年後に再召喚された勇者 ~一度世界を救ったから今度は俺の好きにさせてくれ~

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配信は電子コミックサービス「 LINEマンガ 」、漫画担当は濱﨑真代さんとなります。

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