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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第五十一話

前回のあらすじを三行で


ナルアス、ドワーフが作った武器持ってる

洞窟への検問で止められる

短剣で結界破る

ナルアスの短剣により結界は切り開かれていった。


「それはマジックアイテムか」

「えぇ、私が作ったものです。切れ味は鈍いので通常の武器としては使うことは出来ませんが、その代わり……このように魔力による障壁を切ることに特化しているんです」

 話している最中も結界を切り開く作業を続け、人一人が通れるだけのスペースを確保していく。


「中に入ったら一度結界は塞ぐので、馬君には結界の手前で待っていてもらったほうがいいでしょうね」

「何かあった時、動きやすいように馬車本体は外しておくか」

 馬車をエドから取り外すと本体を亜空庫へと収納していく。

「エド、また留守番になるけど大丈夫だな?」

 エドは当然だと頷くと、少し道から外れた草の多い場所へと移動しそこへ座る。


「エド君は賢いですね、ソータ殿と会話が出来ている」

「初めて会った頃からこんな感じだ、俺の言葉を全部理解してるっぽいな」

 エドへと視線を送ると、エドは再度頷いていた。


「すごいですね……」

「俺の相棒だからな、それよりさっさと中に入ろうか」

 蒼太は結界の開かれた箇所を指差し先を促す。

「そうですね、入りましょうか」

 中へと入るとナルアスは振り返り、結界を閉じる作業に入った。

 作業と言っても難しい工程はなく、先ほどのナイフに魔力を込め、今度は刃先ではなく柄の部分で結界の切れた部分をなぞっていく。


「この短剣で切った結界であれば、この短剣で修復することが可能なんですよ」

「解除しなくても結界を出入り出来るのは便利だな……そういえば通常の手順だとどうやって結界を通過するんだ? まさか、みんながみんなその短剣を持ってるわけじゃないだろ?」

「通常の方法としては、私のところへこの短剣を借りに来るか、先ほどソータ殿がやろうとしたように魔力で破る方法があります。その場合は修復もしないとですけど」

 修復が終わり、蒼太へ振り向くとそう答えた。


「それ以外にも、色々なマジックアイテムがありますからね。そちらを使う方法が多いかもしれませんね」

「どの方法にしても修復の義務があるから、その短剣が一番楽な方法ってことか」

 ナルアスは頷くと、短剣を鞘にいれ蒼太へと差し出す。

「まだ何本か持ってますから、一つソータ殿にお譲りしましょう。なかなか便利ですよ」

「ありがたく貰っておくよ、使い勝手がよさそうだ」

 蒼太はナルアスが見せた使い方以外に、いくつかの利用方法を考えていた。


 短剣を鞄に亜空庫にしまうと、代わりに十六夜と胸当てを取り出し装着していく。


「それでは先に進みましょうか」

 洞窟に入ると、蒼太は既視感を覚えた。

「この感じは……俺が行った山や、アレゼルと出会った森と同じ感じだな」

「何か異変が起きてるんでしょうか……何もなければいいんですが」

 足を止め、奥に広がる暗闇を見るが、ただ静かな闇が広がっているだけだった。


「まずは、この暗さを何とかしないとだな」

 手に魔力を込めると辺りを照らす光の玉を生み出し、それを頭上より少し前方へ浮かべる。

 光量はやや抑え目にしたが、それでも辺りを把握するには十分な明るさだった。

「こっちの居場所がわかってしまうが。それでも暗闇から襲われるよりはマシだろ」

「そうですね、トラップを見逃す可能性も減りますからね」


 その明かりを頼りに歩を進めていく。

 光の玉はそのまま同じ距離感を保ったまま浮かび続けていた。


「ここはどれくらいの深さなんだ?」

「二百年程前に確認した時点では、確か20階層くらいだったと思いますが。それから広がっていたらもうわかりませんね」

「ディーナはどこにいるんだ?」

「……確か、10階層にいたと記憶しています」

「そうか、それならすぐにいけそうだな」

 蒼太は一度足を止めると進行速度を上げるために、威圧を混ぜた魔力を進行方向に向けて解放し、寄り付いてくる魔物の数を減らす。


「す、すごい魔力ですね。これなら弱い魔物は近寄れませんよ」

「あぁ、少し走るからついてこいよ」

 蒼太はそう言うと、右手に十六夜を構え走り出した。

 洞窟という閉鎖された空間では風の流れを読むのが容易く、風魔法によっておおよそのつくりを把握していた。

 ゆえに、蒼太の足に迷いはなく一直線に階下へと続く階段へと向かっていった。


 道中に逃げ遅れた魔物や、蒼太の魔力を感じ取った上で襲ってくるものもいたが十六夜によって斬り伏せられていった。

「これほどとは……私の出番はなさそうですね」

 ナルアスは苦笑いを浮かべた。

「なんか言ったか?」

 戦いながらも手と足は止まることなく、進行速度も全く落ちることはなかった。


 2階、3階、4階……と順調に進んでいく。

 途中強力なモンスターが現れることもあったが、それも蒼太やナルアスの相手ではなかった。

 なかには蒼太の一撃に耐えたものもいたが、次のナルアスの一撃で絶命していった。

 その間二人は一言も発さずに進んでいた。


 蒼太は目的地に向かうために無駄口を叩かず、ナルアスは驚異的なスピードで進んでいく蒼太に置いていかれないよう必死だった。

 9階から下へと降りる階段にたどり着いたところで蒼太はその足を止めた。


「よく遅れずについてきたな、さすがは元Aランク冒険者ってとこか」

「はぁはぁ、必死、ですよ」

 それだけ言うと、一度大きく息を吸い、吐き出す。


「ふー、まさか休憩なしで一気に駆け抜けるとは思いませんでしたよ」

「全てのフロアで階段一直線だったから、時間にしたらそんなにかかってないだろ?」

 蒼太の言葉にナルアスは肩を落とした。

「はぁ、まあそうなんですが……とりあえずソータ殿が規格外だと言うことは良くわかりましたよ」


「ナルアスの話だと、次の階にディーナがいるんだったか……ここからでもわかるくらい強力な魔力を感じるな」

「えぇ、ここまでの敵とは比べ物にならないですね」


 蒼太は階段手前に毛皮を二組敷くとそこへ腰を下ろした。

「まずは、少し休憩してから進もう」

 カップにお茶を注ぐと、向かいに腰を下ろしたナルアスの前に差し出した。

「疲労がとれるはずだ、少しいやしの木の葉が入っている」

「!?」

 今のいやしの木の葉の値段を考え、一瞬噴出しそうになるが、それこそもったいないと飲み込む。

「昔、大量にもらっていたやつがあるんだよ。まさかこんな貴重な代物になるとは思ってもみなかったがな」

 いやしの木の葉は様々な薬の材料として使われ、単独でも疲労回復に大きな効果があった。

「そ、そうですか。最近では国内でも流通が少ないものですから、少し驚いてしまいました」

 ナルアスは口元を拭き、手元のなんの変哲もないカップに入っている飲み物の稀少さを考えていた。


「それを飲んだら、ディーナ奪還作戦開始だな」

 蒼太の視線は階下へと向けられていた……。

お読み頂きありがとうございます。

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配信は電子コミックサービス「 LINEマンガ 」、漫画担当は濱﨑真代さんとなります。

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