第四十九話
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助け出したい
ディーナは西の洞窟の中
「な、なんてことを……場所を教えてくれ、俺が行って来る」
「そう言うと思ったからお話しするのを躊躇ったのです……あの場所は昔は、そう七百年前の当時は魔物の少ない洞窟だったんですが、今はそれが一変してしまってるんですよ」
「なんか同じような話をここ最近何度か聞いた気がするが……まあいいさ。危険は承知の上だ、俺は行く」
蒼太の決意は固く、ナルアスは止めても無駄だとため息をついた。
「はぁ仕方ありませんね、私も一緒に行きましょう。案内します」
「いや、危険なんだろ? 場所だけ教えてもらえば一人で行って来るよ」
「アレゼルの恩人を危険とわかっている場所に一人いかせるわけにはいきません」
「ソータさん、師匠は元Aランク冒険者だからすっっっっっごく強いんですよ!」
自分のことではないはずなのに、なぜかアレゼルが胸を張っていた。
「それに、今あの洞窟への道は通行制限がかかっています。ですが、私がいれば通行許可は下りるはずです」
「ついて来てくれるのはありがたいが……検問でも思ったが何故二人はこの国で優遇されているんだ? それともエルフ全員がそうなのか?」
ナルアスはアレゼルの顔を見た、見られた当人は視線を逸らして額には汗を浮かべている。
「アレゼル……ソータ殿に助けられてからだいぶ時間があったのに説明してないのか?」
「い、いやあ、ボクも言わなくちゃなあとは思ってたんですけど……内緒にしておいて後でびっくりさせようかなあって思ってたらここまでずるずると来ちゃった、みたいな?」
「みたいな? ではない! 全くお前というやつは……はぁ、私から説明します」
力を落とし視線を蒼太へと戻した。
「この国にも昔は錬金術師が多くいたのですが、いやしの木の葉問題でエルフ以外の錬金術師は強制的な国外退去処分を受けることになりました」
蒼太は頷き、続きを促す。
「エルフの錬金術士の中でも他種族に肩入れするものや、いやしの木の葉の流出に手を貸していたものは軒並み国外退去となりました」
「カレナもそうなのか?」
ナルアスは首を横に振った。
「あの子はこの国の閉鎖的な空気に嫌気が差して飛び出していったんです……ある意味では他種族に肩入れしたとも言えるんでしょうけど」
アレゼルが蒼太の近くにより、耳元を貸せとポーズをとっていた。
「カレナ様の今の旦那様は人族の方なんです、それで二人で人族領へとかけおちをしたんですよ」
「アレゼル、あなたは余計なことを言わないように。それが事実だとしてもだ」
注意されたアレゼルは、小さく悲鳴をあげると蒼太の後ろに隠れた。
「話を戻しましょう。その結果国内に残る錬金術士は減少の一途を辿ることになり、その希少性から一定の権利を得られることになったのです」
「弟子をとってどんどん増やせばいいだけだろ?」
当然の疑問を蒼太は口にした。
「そもそもエルフという種族は長命であるがゆえに、子孫を残そうという意識が人族に比べだいぶ薄いのです。それゆえに人口が少なく、その中で錬金術を学ぼうとするものとなると限られてしまうのですよ」
「国がテコ入れすべきだと思うが、それも種族性ってやつなのか」
「毎日錬金術士への依頼があるわけではないですし、今でも周っているので危機感が薄いのでしょうね」
「まぁ、事情はわかった。アレゼルは正式な錬金術士ではないからナルアス程の権利は持ってないってことか」
アレゼルはやや下を向き、肩を落としていた。
「見込みはあるので後は今後の修行次第でしょうね。それと、もう少し慎重さが欲しいところです」
二人がアレゼルを見ると、顔は下を向いたままだったがその顔はにやけていた。
「そういうわけで、私が一緒なら洞窟へ入ることが出来ると思います。私もディーナ様にお会いしたいという下心もあるので連れて行ってもらえると嬉しいです」
「ボクも! ボクも行きたいです!! ボクもディーナ様に会ってみたいです!」
ナルアスは蒼太が誘いやすいように理由を付け足し、アレゼルは思ったことをそのまま口にしていた。
「ダメだ、アレゼルにはあの場所は危険過ぎる。お前は誘拐にあったばかりだろう、もう少し危機感と言うものを持ちなさい」
ナルアスはそう言い、アレゼルを嗜めた。
「で、でもでも、うー……いいじゃないですかあ。ソータさんも師匠も強いんだから平気ですよね? ね?」
自分の師匠を突破出来ないと思った彼女はすがるような視線を蒼太へと送った。
「ダメだ、はっきり言っておくが自分で自分の身を守れないやつが一緒だと足手まといだ」
「そ、そんな、そんな風に言わなくても……」
思わず強い否定を受けたアレゼルは目に涙を浮かべていた。
「いいか、仮に一緒にいったとして危険にさらされた時、毎回お前を守れるとは限らない。お前だけが危険な目にあうのなら自業自得でいいかもしれない、だがナルアスはそれを黙ってみてると思うか?」
アレゼルは口を真一文字に結び、涙をこらえながら首を横に振った。
「だろう? その時にナルアスは必死にお前を助けようとするだろう。そこで大怪我を負うかもしれない、自分の身なら守ることが出来るのに、お前を助けようとした結果だ。そうなってもいいのか?」
「い、いやでず」
鼻声でなんとかそれだけ振り絞るように口にだした。
「だったら待っていられるな? どうせディーナを助けたらここに戻ってくることになるだろうから、そこで会えばいいだろ。帰って来た時にゆっくり出来るよう準備を整えておいてくれ」
蒼太はアレゼルの頭をくしゃっと撫でた。
「……はい! ボク待ってます」
アレゼルから見えない角度でナルアスは頭を下げていた。
「それじゃ、ナルアスの準備が出来たら出発するか」
「そうですね、装備を取って来ます」
蒼太が手を離そうとすると、もっと撫でてくれとせがむため、結局ナルアスが戻ってくるまでの間、蒼太はアレゼルの頭をなで続けることになった。
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