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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第四十三話

前回のあらすじを三行で


腹減った。

広場を作る。

メシが熱い。

 翌朝も森は暗く今が一体何時頃なのかわからなかったが、蒼太は早朝と呼べる時間帯に合わせて目が覚めていた。

 アレゼルとエドがまだ眠っているのを横目に蒼太は朝食の準備を始めた。


 まな板の上で野菜や肉を切っていき、灰汁の強い野菜は水をはったボウルにつけておく。

 具材を切っている間に、あまっていた野菜くずをいれて煮出すことでだしをとっていく。

 切り終えると、だし汁の中に野菜を入れ鍋に蓋をし煮込んでいく。


 蒼太は鍋の中の野菜が煮えていくのを、鉄の剣の手入れをしながら待っていた。


 しばらくするとエドが目を覚ますが、アレゼルがまだ眠っているのを確認すると声は出さず顔の動きで蒼太に挨拶するだけに留めた。

 蒼太も声は出さず、頷きだけ返す。


 鍋が煮立ち、野菜が柔らかくなってきたところで肉をいれる。豚汁をイメージしている為、肉はボアの肉を使った。

 ボアの肉は猪よりもやや豚に近い味をしている。

 肉に火が通ったところで、味噌によく似た調味料を溶いていく。


 豚汁もどきの香りがあたりに漂ってきたところで、匂いに釣られてアレゼルも目を覚ました。

「ふあ、あれソータさん起きてたんですか? おふぁよーございます」

 アレゼルは欠伸をしながら身体を起こした。


「おはよう、朝食っぽいのが出来るまでもう少しかかるからまだ寝ててもいいぞ」

「いえ、ボクも起きて何か手伝います。というか朝食っぽいものってなんですか? 朝食を作ってるんじゃないんですか?」

「俺にとってはこういうのを朝食で食べるのは普通なんだが、アレゼルには食べなれないかもしれないと思ってな」

 火にかけた鍋の蓋を取り、中身を見せる。


 多量のゆげと共に、豚汁もどきの香りが一気に解放される。

「うわー、いい匂いですね。美味しそう!」

 アレゼルは身を乗り出して中を覗こうとするが、蒼太は蓋を閉じてしまう。

「まだ、な。もう少しすれば食べごろだ。その前に、そっちの桶に水を張ってあるから、顔を洗うといい」

 エドの飲み水用とは別に、少し小さめの桶に水をいれ、タオルも用意してある。


「ありがとうございます。何から何までしてもらって、恩ばかりが増えてくなぁ……」

 後半は蒼太には聞こえないくらい小さい声で言った。


 アレゼルが顔を洗い戻ってくると、エドは既に食事を始めていた。

「ソータさん、ボクにも何か手伝えることありますか?」

「いやもう作り終わったから大丈夫だ」

 アレゼルは恩人にだけ仕事をさせてしまっていることを申し訳なく思い落ち込みうな垂れた。


「あー、食べ終わったら片付けを手伝ってもらえると助かる。腹いっぱいで洗い物は面倒だからな」

「はい、洗い物は得意だから任せて下さい!」

 アレゼルは勢い良く顔を上げると、胸をはり、ドンと拳で叩いた。

「いつも錬金術で使った器具の掃除はボクの仕事なんですよ!」

「そいつは頼もしいな」

 錬金術には精密な器具もあるため、それを任されるということはただ雑用をやらされているというだけではなく、扱いが丁寧であるということを示していた。


「そろそろ煮えたから食べようか。ほらこれを持って座って」

 アレゼルにそう促し、蒼太は器に豚汁もどきをよそっていく。

 豚汁もどきと一緒に焼きたてのパンとジャムを取り出しアレゼルに渡す。

 日本にいた時によく朝食で食べていた組合せだが、蒼太は意外とこれが好きだった。


 アレゼルにとっては初めてのそれをゆっくりと口に運ぶ。

「熱い! でも……美味しいですね。なんか、ほっとする味」

「もしかして、猫舌なのか? 昨日の夕食の時もだいぶ熱がってたが……ほら、水も飲むといい」


 手渡された水を少し口に含み、舌の痺れを紛らわせる。

「はい、昔から熱いものはちょっと……」

 舌を出し、手で仰ぐ。

「さっきまで鍋にいれてたものだから少し冷ましてから食べるといい」


 蒼太にそういわれ、器を置くとパンに手をつけた。

 パンも焼きたてのものを買っていたので、ほかほかだったが火傷をするほどではなかった。

「すごく柔らかくて美味しいですね。ふわふわでほかほかで、すごいですねそのバッグ」

「まぁ、な。そのスープもパンに合うと思うからゆっくりと食べてくれ」

「はい!」

 アレゼルはふーふーと冷ましながらそれを口にする。

「うん、やっぱり美味しいです! パンをつけたら美味しいかな?」


 手に持ったパンをちぎり、豚汁もどきに浸してから口に運んでいく。

「おいしー、このスープ初めて食べただけどいいですね! ソータさんの故郷の味なんですか?」

「そんなもんだ、よく家で作ってたんだよ。具材とか味付けは少し違うけどな」

「うーん、料理が得意っていいですね。ボクなんて全然です……」

 アレゼルは落ち込みながらも食事の手を止めない。


「作るようになればいつの間にか出来るようになってるもんさ、アレゼルはまだ若いんだから練習してみろよ」

 エルフは二十歳くらいまでは人族と同様の年のとり方をし、そこで一度成長が止まる。

 その後は人それぞれだが、カレナのように数百年経っても若いままのエルフも多くいる。

「うん、ですよね。がんばります!」

 その後パンのお代わりもし、二人は空腹を満たしていった。


 食前の宣言通り、洗い物はアレゼルが担当した。


 洗い物が終わると、食器を仕舞い旅立つ準備をしていく。

「さて、忘れ物はないな。そろそろ出発しよう」

「はい! 今日こそは森を抜けたいですね。多分ですけど、距離的にはそろそろだと思うんですが」

「そうだな、あんまり時間がかかったらお前の捜索部隊とか出てきそうだ」

「そ、そうですね。なんとかその前に……」

 アレゼルは額に汗を浮かべた。


 荷物の確認が終わるとアレゼルは先に乗り込み、蒼太はたき火に水をかけ、その上に土を被せ消火をした。


「さぁ、出発だ」

 エドは蒼太の言葉に鳴き声で返事をすると出発する。


 森の中は相変わらずの雰囲気だったが、だからといって何かおこることもなく順調に歩を進めていく。

 それからしばらく進んで行くと外の光が見えた。

「あ、ソータさん。外ですよ! やっと出られますね!!」

「あぁ、久しぶりの太陽の光だな」

 二人と一頭は昼になる前には森を抜けることが出来た。


 森を抜けた先は草原が広がっており、その遥か先には渓谷がその姿を見せていた。

「あの谷を抜ければ、エルフの国か」

「はい、渓谷の入り口に検問があるので、そこを抜ければあとはスムーズにいけると思います」

 蒼太はそれを聞いて、ため息をついた。

「はぁ、その検問が問題ってことか……」

「大丈夫ですよ! ボクもいるし、手紙もあるんだからきっと大丈夫です!」


 アレゼルはそう強く言うが、蒼太は不安を覚え遠くの山並みを見つめていた。

お読み頂きありがとうございます。

これで森パートは終わりです。

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配信は電子コミックサービス「 LINEマンガ 」、漫画担当は濱﨑真代さんとなります。

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