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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第三百二十四話

前回のあらすじを三行で


魔導大砲を準備

離れろ!

塔崩壊!!

「いつつつつ」

 蒼太は塔の崩壊に巻き込まれるのは避けることができたが、転がったことで土にまみれて全体的に汚れてしまった。

 なんとか体勢を立て直すが、遅れて来た爆風によって蒼太は更に後方に吹き飛ばされてしまう。

「うおおおおお」

 思ってもいなかったため、蒼太は珍しく変な声を出しながら風圧に吹き飛ばされていた。


 勢いが弱まり、地面に叩きつけられることになるかと思った瞬間、蒼太は柔らかいものに受け止められる。

『大丈夫か?』

 その声はアトラだった。彼は蒼太が魔力を使い切っていることを察して、蒼太の救出に向かったのだ。

「あ、あぁ助かったよ」

『ならば、離れよう。掴まっていてくれ』

 蒼太は姿勢をなおすとアトラにまたがり、その背中に掴まった。

 魔導大砲の攻撃による余波はすさまじく、いまだ塔の崩壊は続いており、いつまた瓦礫が落ちて来ても不思議ではなかった。


 その場から走り出したアトラは蒼太を乗せてディーナたちのもとを目指す。

 ディーナたちはというと、塔からかなり距離をとっており、その崩壊を遠くに眺めていた。

「すごいなあ」

 レイラが思ったことを口にする。それは全員の心境を一言で表していた。

「ソータさん!」

 アトラに連れてこられた蒼太を見て、心配そうな表情をしたディーナが名前を呼んだ。


「おう、無事だったか」

 アトラの背からおりながら蒼太は声をかけていく。アトラの背中にいる間に亜空庫から出した魔力回復薬を飲んだ蒼太はいくぶんか回復している。

「ソータさんこそ大丈夫でしたか? まさかあんなにすごい威力だなんて……」

 塔の崩壊よりもそれを実行した蒼太のことが心配だったディーナは不安そうな表情で彼を見ていた。

「なんとかな……クリーン。これで汚れは取れたな」

 土にまみれた自分と、汚れた蒼太を乗せたアトラの汚れを魔法で綺麗にすると再度塔へと視線を向ける。


「しかし、ディーナの言うようにすさまじい威力だったな」

「お前がそれを言うのか?」

 自分でやったことだろう? と言いたげな表情で本郷が蒼太に突っ込みをいれた。

「まあそうなんだがな……思っていたよりもすごいのを作ってしまったみたいだ」

 予想以上の威力に蒼太はやりすぎてしまったなと頬を掻いていた。


『かっかっか、やはりソータはものすごいのう』

 イシュドラは愉快だと言わんばかりに楽しそうに笑っている。

「あれだな、まず宝石の数が多かった。それと魔法陣を三重にしなくてもよかったかもしれないな……あとは俺の魔力が強すぎたな」

 自分の作った魔導大砲について蒼太は冷静に分析するが、本郷たちはそれを見て呆れていた。

「少し自重というものを覚えたほうがいいんじゃないか?」

「お前が言うな」

 本郷の突っ込みに蒼太は目を細めて突っ込み返した。


「というか、本郷。お前が俺たちとある程度話をする気があってよかったよ。もし話すことなどない、塔で待つから来い! とかってタイプだったら、戦う前に俺が塔をさっきのあれで吹き飛ばして終わりだったろうからな。いくら中が空間魔法でいじられているとはいえ、外の塔自体が崩壊してたら困っただろ?」

 それを想像した本郷たちは目の前の塔の崩壊を見ながら身震いをしていた。

「エルダ……ホンゴー様が対話をされる方でよかったです……」

 ナルルースはさきほどのディーナの話を思い出して慌てて名前を呼び直した。

 きちんと話をする性格の本郷だったからこそナルルースたちは彼に付き従ってきたのであって、もし彼がそういう人物でなければ今の自分たちはいなかったであろうと考えていた。


「……俺もたいがいやりたい放題やってきたと思っていたが、お前はそれ以上だな」 

「そうか? 少なくとも命に関わる迷惑はかけてこなかったと思うがな」

「うぐっ」

 蒼太の言葉に色々と心当たりがある本郷は妙な声をだした。

「さっきのを見てもらってわかったと思うが、今後は俺と敵対しないようにしてくれよ? 手加減できそうにないからな」

 にやりと笑う蒼太に再度本郷たちは身震いすることになる。


「さて、そろそろ行こうか。と言いたいところだが、おいそこにいるやつ出てこい!」

 蒼太が声をかけた方向には誰もおらず、何の反応もなかった。だが蒼太は警戒を緩めることはない。

「出てこないなら……」

 蒼太の頭上に火の玉がいくつも浮かびあがる。

「ま、待って! 待って下さい!」


 そこへ慌てて姿を現したのはダグラスだった。

「そ、それ、早く引っ込めて下さい」

 蒼太の頭上を指差しながらダグラスは怯えていた。

「最初から素直に出てくればいいんだ。ほら、これでいいだろ?」

 魔法が消えたことにダグラスは胸を撫でおろす。


「はあ、とんでもない方ですね。あれだけの数の魔法を無詠唱で一瞬のうちに使うなんて」

 何もなかったかのようにダグラスは自然と本郷たち側に移動していく。

「おい、勝手に加わるな」

 しかし、それを安易に許す蒼太ではなかった。いつの間にか姿を消していて最後にちゃっかりまた仲間に加わるような人物を見逃すことはしない。

「えっ? 何か駄目でしたか? 僕はエルダード様の部下ですので……」


 何がおかしいのかといった様子のダグラスの言葉に蒼太は静かに首を横に振った。

「エルダードはもういない。そして、お前はこいつらを見捨てて逃げたんじゃないのか?」

 ブルグは最上階に現れたがダグラスはやって来ず、今頃になって姿を見せたため、蒼太は眉をひそめた。

「い、いえいえ、私は逃げたわけではなくて、もしエルダード様に何かあれば一矢報いようと……」

「ダグラス、すまんがエルダードは死んだ。今の俺は本郷だ、それと一矢報いるのは諦めろ。こいつらは……強い、いや強すぎる」

 エルダードだったころの彼とは明らかに違う穏やかな雰囲気とその言葉にダグラスは唾を飲んだ。


 自分が心から崇拝し、これまで最強だと思っていた本郷がそう評する蒼太たち。

 ダグラスは何を冗談を、そう笑おうとも思ったが、本郷の顔があまりに真剣なのでその笑いを言葉ごとごくりと飲み込んでいた。

「これは冗談でもなんでもない。こいつらは強い」

 真剣な表情で本郷は彼に納得してもらうために再度同じ言葉を口にする。

「ダグラスさん、ホンゴー様の言葉は全て事実です。私たちが拠点にしていたあの塔、見えますか?」

 ナルルースが指差した方向に本来見えるはずの塔はどこにもなかった。瓦礫の山が転がるだけの風景が広がっていた。


「え? もしかしてさっきのすごい音って……」

 困惑しているダグラスの言葉に本郷たちが頷いた。

「というわけだ、主導権は俺たちにある。俺たちに敵対するなら、それでも構わない。もし投降するなら、こいつらと一緒に罰を受けてもらうことにしよう」

 蒼太は選びようのない二択をダグラスに突き付けた。

 死に物狂いでなんとか逃げ出したのにこの場に出て来てしまったことを今更ながらダグラスは後悔していた。

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