第三百三話
前回のあらすじを三行で
ブレスVSブレス
紫の槍VS雷の剣・炎の剣
ブラオード止めを刺す!
『強がりを言いおって、こんなもの力を込めれば!』
しかし、ブラオードの闇の槍はどれだけ力を込めて押してもピクリとも動かない。
『ふむ、少し本気を出させてもらおう』
それを見たイシュドラは自身の抑えていた魔力を開放し、装備にも魔力を流している。
彼の場合は元々の能力が高いため、防具の効果は肌が露出している部位の防御力をも強化していた。
『な、なんだと!』
とてつもない大きさの魔力の奔流に押され、ブラオードは数歩後ろに下がる。
『かっかっか、我はお主よりも長い時を生きている。その中でも自らの研鑽を積むことをやめなかった。更に言えば、強力な仲間がおるからのう。修行の相手には事欠かんかったわ』
そう楽しげに言ったイシュドラの身は強力な魔力に包まれていた。
『お主の仲間にも強そうなやつがおったのう。固そうな鎧だったが……我とどっちが固いかのう!』
イシュドラはそう言うと、更に防具の能力を発揮していく。イシュドラの身は元々銀の鱗をしているが、その輝きが増していた。
『そ、そのような見掛け倒しを!』
ブラオードはそういうが、明らかに焦りをみせている。
『ふむ、これだけではお主の攻撃が効かないだけだ。であるならばこちらも攻撃に転じなければいけないな』
そう言うとイシュドラは先ほどまで使っていた雷と炎の剣を消す。
『一体何を?』
ブラオードは怪訝な表情でイシュドラの行動を見ている。
『見ておれ、いくぞ!』
鎧のほかにもアクセサリとしてイシュドラは両手首にブレスレットを、そして首にはネックレスをしており、そのどれにも巨大な宝石の竜王玉がはめ込まれていた。それがちょうど三角形になるよう位置する。
すると、竜王玉が三角形の魔法障壁を作り、そこから巨大な剣が現れる。
『かっかっか、これならお主の槍と戦っても見劣りはせぬだろうのう!』
笑いながらその剣を手に取る。それは先ほどと同じように炎の剣だった。そして刃の部分は雷を帯びている。
『なんだ、なんなんだそれは!』
サイズもさながら、込められている魔力も異常だった。
『ん? ただの剣だがのう。少しばかりサイズは大きいが』
それは古龍が両手で持っても大きいサイズだった。しかし竜王玉を媒介にした魔力で作られた剣であるため、重さはほとんどなかった。
『ただの……ええい、それならこちらも本気だ!』
今までも十分ブラオードにとって本気だったが、それでは駄目だと判断した彼は持てる手段の全てを出していく。
彼の闇の槍は更にサイズが大きくなる。イシュドラの剣に比べるとサイズは見劣りするがブラオードの持てる限界を詰め込んだものだった。
更に言えば彼の槍は、先端の刃の部分に風を纏っていた。
『かっかっか、闇対炎、風対雷といったところかのう』
イシュドラはブラオードが更なる手を持っていることを嬉しく思っていた。
『何が、おかしいんだ!』
笑われたと感じたブラオードはたかぶる感情のまま槍で突きを繰り出す。先ほどまでは狙いどころを考えての攻撃だったが、怒りに飲まれているため威力と速度だけを重視したものになっていた。
『ほう、いい攻撃だのう』
しかし、イシュドラは巨大化した炎雷剣で難なくその攻撃をいなしていく。
『だがそれくらいではまだまだ足りないのう。こちらの攻撃を受けてみろ!』
その瞬間、イシュドラは剣を思い切り振り、槍にぶつけていく。
『なっ!?』
ブラオードは驚愕の声をあげた。自分の持つ槍が剣を受けた場所から真っ二つにされていたからだ。
魔力の剣であるため普通であればすぐに元通りに戻るものだが、それ以上に強力な魔力剣で斬られたため、同時に魔力のつながりも切断されていた。
『それでは使い物にならんだろうのう。もう一度同じものを作り出せばいいのだが、その魔力が残っているか?』
イシュドラの指摘通り、既にそれは槍の体をなしておらずただの魔力の棒に成り下がっていた。
『くっ、こんなものに頼らずとも!』
ブラオードは槍を消すと、後方に飛び距離をとる。
『竜ならば、これで勝負だ!』
最初の魔力を使ったブレスとは異なり、今度は体内にある竜力を高めていた。
『ほうほう、面白いのう。それならば我も本気で受けさせてもらおうかのう』
そう言うとイシュドラも魔力の剣を消去し、自身の竜力を高めていく。
『魔力では貴様が上かもしれんが、竜力では負けん!』
彼の言葉通り、古龍種が持つ竜力は強大であり、強力なブレスが放たれることは想像に難くなかった。
『よい、よいのう! こちらも本気と言ったからには、それなりのものでは済まさんのう!!』
イシュドラは腕輪とネックレスを引きちぎると、それがまるで意思を持ったかのように目の前に浮かぶ。それがそれぞれに埋め込められた宝石が光を放ち、三角形の魔力フィールドを形成していく。
『これが我の武器だのう。まあ一度しか使えんが』
他の者は刀であったり、爪であったり、牙であったり、蹄であったり何かしらの直接的な武器が作られた。しかし、本来のイシュドラの武器は肉体であるため、下手な武器は邪魔になると蒼太は考えた。
実際には魔力の武器を使ったわけだが、それでも竜種の最大の武器であるブレスを活かすための装備を用意していた。
『これで、終わりだ!』
『これで、最後だ!』
最初の言葉はブラオードのもの、自分の持てる最大で最後の技を使うからこそ、これで終わりにできると考えていた。
次の言葉はイシュドラ、自分の持ちうる力に加えて信頼する仲間の装備を駆使したこの攻撃で倒せないものはいないだろうと考えていた。
ブラオードのブレスは最大に高まった竜力の全てが込められ、力強くイシュドラに向かっていく。
対するイシュドラのブレスは口から放たれたあと、魔力フィールドを通過しその威力を何倍、いや何十倍にも高められていた。フィールドを形成するために使われた宝石は、竜力を最大に高められるよう強力な魔力石が使われていた。
二つのブレスが衝突した瞬間、その余波で周囲に爆風が吹き乱れた。
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