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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第二百八十六話

前回のあらすじを三行で


将軍の持つ戦力

将軍様は素晴らしい!

こいつどうしよっか?

 洞窟から出たところで蒼太は男を亜空庫から取り出したデカイ箱に入れて放置することにした。

「これでいいだろ、目覚めたら真っ暗で慌てるだろうが少し暴れればこの箱も壊れるはずだ」

 ぽんぽんと箱を軽く叩いた蒼太はあらかじめ壊れやすいように少し古めの箱を使用している。

「罰ってこんな軽いのでいいの?」

 彼女にとってこれくらいのことは大したものではないと思ったらしく、レイラが疑問を口にするが蒼太は頷いて返す。


「あいつの実力は底が知れているからな、どうってこともないだろ。仮に上に報告されたとしても、あいつに俺たちのことがばれているなら既に上にもばれていそうだ」

「あー確かに。あの人、黒幕演じたかった三下って感じだったもんねえ」

 レイラの表現があまりに的確だったため、ディーナは思わず吹き出してしまう。

「ぷっ、ふふふっ、すごくピッタリな表現です」


「まあ、あいつのことよりも将軍のほうが問題だな。ここに来たのもそいつと話すためだ。だが、どっからアプローチをかけたものやら……」

 蒼太はもうこの場所には用事はないと出口の方へと歩きながらも腕を組んで考え込んでいた。

「あっ、それなら冒険者ギルド宛に届いた手紙を使えばいいんじゃないですか?」

 隣を歩くディーナは名案と手をポンッと打って提案するが、蒼太は首を横に振る。

「あの手紙は大した情報もなかったしもういらないかと思って全て処分してしまったんだ……あの時の俺は浅はかだった」

 最初にミルファが持って来た一枚以外にも手紙はあったのだが、最初の手紙とほとんど内容が変わらかったこともあって蒼太は捨ててしまっていた。いつもならば何でもアイテムを亜空庫に入れて持っている蒼太だったが、さすがに同じような手紙ばかりくるということもあって保存することを失念していたようだ。顔を片手で覆い後悔するが、時既に遅しといった状況だ。


 だが、ディーナは得意げな笑顔で蒼太を見ている。

「ふっふっふ、こんなこともあるかと思って一枚とっておきました!」

 そう言ってディーナが自分のバッグから取り出したその手紙には確かに見覚えのあるマークで封がしてあった。

「おぉ! いつの間に……」

「昔からいつもアイテムをため込むソータさんが捨てるのを見て珍しいなと思って、受け取ってすぐに捨てたのを一枚拾って置いたんです」

 蒼太は驚きと感謝の気持ちで手紙を受け取ると封を開けて中身を確認する。


「最初のしかちゃんと中身を見ていないが、あとのやつも全部同じ内容なんだろうか?」

 蒼太が確認すると、最初の手紙よりは幾分落ち着いた様子でシンプルに会ってみたいという文字がそこに書いてあった。差出人も同様に将軍であった。

「……大丈夫そうだな、ギルドで依頼達成の報告を終えたら向かってみるか」

 外に出てみると、まだ日が高いため城に向かっても大丈夫だろうと考えていた。

「そうですね、お城はギルドからそんなに離れていないみたいですから、でも……手紙をもらったとはいえ、いきなり訪ねても大丈夫なのでしょうか?」

 その疑問は当然のものだった。一介の兵士であっても任務に従事していれば、時間をとることは難しい。それが将軍であればなおのことだった。


「ふーむ……あまり色々と広めたくはないんだが、ここの冒険者ギルドのギルドマスターに渡りをつけてもらうというのも手かもしれないな」

 蒼太はそう口にはしたが、できれば関わりたくないとも思っている。

「……別の手も検討しましょうか」

 その表情が如実に嫌だということを物語っていたため、ディーナはそれ以外の方法を選んだほうがいいだろうと口にした。

「そう、だな。とりあえず、戻ってから考えるか」

 

 結論を先延ばしにした蒼太はしばらく歩いたところで、周囲に気配がないことを確認して馬車を取り出しエドに装着していく。

『直接乗り込めばいいのではないかのう』

 小竜の姿で古龍が言うが、もちろんその案は却下だった。

「それはさすがに危険すぎるし、そもそものところ話をするのが最優先事項だから最初から敵対というのは勘弁だ。それに、将軍だけが敵になるのなら構わないが、帝国全体を敵に回すことだけは避けたいからな」

『むむむ、人というのはなかなか面倒なんだのう』

 人の社会を知っているとはいえ、そういった細かい機微を理解する気はなく、古龍は考えるのに飽きたのか馬車に乗り込んでいく。


「城に直接乗り込むのがまずいのであれば、将軍の家に直接向かうというのも悪くないかもしれないですね」

「それも面白いが……なんにせよ街に戻ってから考えよう」

 ディーナの提案はなるほどと頷けるものではあったが、蒼太が結論とするまでのものではなかった。

 馬車が帝国へと向かうなか、蒼太とディーナがあれこれと話していたがレイラにとってこの話は小難しいと考えたらしく、話には加わらずにアトラと古龍と一緒に今回の洞窟での探索の反省点などを馬車で話しているようだった。


 結局次の一手が思い浮かばないまま、一行は帝国にたどり着き冒険者ギルドへと報告に向かうこととなった。

「俺のほうで報告に行ってくるから、馬車の番は任せてもいいか?」

「はい、私たちはここで待っていますね」

 ディーナとレイラはギルドの外で待機することにする。あえて二人を残したのは蒼太が何か感じるものがあったからだった。


 ギルドに入ると、一瞬注目が集まる。それは誰が入っても集まるものだったが、蒼太はその中に一つ強い視線があることを感じていた。だが、あえてそれを無視して依頼の報告に受付へと向かった。

「依頼の完了報告をしたいんだがいいか?」

 受付は受領の際と同じ女性だった。

「あ、おかえりなさい。早かったですね。それではまずカードの提示をお願いします」

 言われるままに提示すると、彼女はそれを魔道具でチェックする。


「はい、大丈夫です。受けている依頼はおひとつですね。依頼の品物の提出をお願いします」

 蒼太はマジックバッグから依頼の品物を、必要な数だけ取り出していく。

「いち、にー、さん……」

 彼女はカウンターの上に乗せられたそれを数えていく。それを依頼書と照らし合わせ、二度目のチェックを終えると蒼太に向き直った。

「はい、依頼の品物は大丈夫です。これで依頼達成となりますが……他のお二人の分はどうされますか? いらっしゃらないようですが」

「二人には外で待ってもらっている。二人もいないとまずいか?」

 蒼太の質問に受付嬢は首を横に振った。


「いえ、リーダーの方がいらっしゃれば報酬はお支払いできます。ただお二人は依頼達成扱いにならないので、昇級などのための評価になりませんが……」

 それでも大丈夫かと蒼太に視線を送る。

「それは構わない。とりあえず完了報告だけさせてくれ」

 何か事情があるのだろうと察した彼女は、てきぱきと手続きを始めていく。


お読み頂きありがとうございます。

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配信は電子コミックサービス「 LINEマンガ 」、漫画担当は濱﨑真代さんとなります。

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