第二百八十一話
前回のあらすじを三行で
エド強い
エドとアトラとレイラ
休憩しよう
「ふわあ、あれ? あたし寝ちゃってた?」
レイラはもたれかかっていたアトラから身体を起こしてあたりを見回しながらそう口にする。
「ん? 起きたか。おはよう、そこの桶に水いれといたから顔洗ってこい、手ぬぐいも横に置いておいたからな」
「ふわーい」
あくびまじりで返事をしたレイラは素直に桶の場所へと向かった。
レイラが戻ってくると、全員分の軽食が既に用意されていた。
「レイラの分もそこにおいてあるから食っていいぞ。それ食ったら出発だ」
蒼太が用意したのはホットドッグのようなものだった。途中の露店で購入したそれは、目に入って、匂いを嗅いだ瞬間に当たりだと感じ取っていた。
「おいしー!!」
一番最初に反応したのは、一番遅く来たレイラだった。口いっぱいに頬張って嬉しそうに咀嚼している。
「ソータさん、これすっごい美味しいよ!」
その反応に蒼太は満足し、ディーナたちに視線を移すと彼女たちも笑顔になっていた。
「美味しいです!」
その返事を聞いてよかったと蒼太は頷いていた。
「やはり買っておいて正解だったな。ここの国は露店の料理もなかなかレベルが高いみたいだ」
蒼太は自分もそれを口にして、口いっぱいに広がるおいしさに自分の判断は正解だったと喜んでいた。
一つ食べただけでは満足のいく量ではなかったが、これから先まだ戦いが続くことを考えると軽くすませたほうがいいとの判断だった。
「こっからはペースを上げていくから……吐くなよ?」
蒼太はレイラを見ながらにやりと笑った。
「ひっ、は、はい!」
レイラは一つでは足らなかったため、別の料理を自分のバッグから取り出そうとしていたがその手を止めた。
「後半は本気だからな、さっさと依頼を終えるぞ。休憩に入ってから結構時間がたってるからな、ここからは少し急ぎ足でいく」
実際、レイラが眠りについてから三時間ほどが経過していた。その間、蒼太たちは交代でこのフロアの探索を行っていた。そのため、このフロアの魔物のほとんどは倒されていた。
それも、この先素早く進むための準備であった。
「は、はい!」
蒼太の少し急ぎ足という言葉が、額面通りではないことを感じ取ったレイラは気を引き締めていた。
しばらくして、全員が食べ終わり、お茶を飲んだのを確認してから蒼太が声をかける。
「さて、みんな食い終わったかな? 休憩前にも言ったがレイラとアトラは後ろに下がって、俺とディーナが前に出る。古龍は……討ち漏らしたやつらの掃除を頼む」
『承知したのう、まあ出番はなさそうだがのう』
古龍は返事をしつつも、二人の実力を信じており自分にまで回ってこないだろうと口にしていた。
『私も了解した。背中は任せてくれ』
アトラは後方に下がっても気を抜かずにいることを宣言する。主にはレイラによる後方にあるトラップの発動を未然に防ぐ係といったところだったが、これが意外と重要な任務かもしれなかった。
「がんばろー!」
レイラもやる気を見せるが、これまでの経験上、アトラにしてみれば彼女には静かにしていてもらいたいという気持ちが強かった。
「それじゃ、行きましょうか」
ディーナは蒼太から受け取った弓を装備して準備万端であった。
「よし、行くぞ!」
蒼太も片手剣を装備して、先頭を進む。本気装備の代わりに用意したこれらの装備だったが、全て竜鉄が使われており、性能からいえばカモフラージュになるか怪しいものだったが、見た目はただの鋼鉄の剣にも見えるつくりをしている。なのでよほど素材に精通しているものではなければわからなかった。
「お前たち、ちゃんとついてこいよ」
そう口にした蒼太は颯爽と走り始める。ディーナは彼がそう動くことがわかっており、一歩後ろをついて走っている。
「えっ、ちょっ、ちょっと!」
一方で完全に予想外の動きだと、レイラは慌てており動き出しが遅れてしまう。
『レイラ殿、慌てずとも良い。二人は戦いながら進むのだ、こちらも急げばすぐに追いつけるだろう』
既に二人の背中から距離が離れていたが、落ち着いて追いかけるよう促す。
「う、うん、わかったよ。いこう!」
アトラはそう言ったものの、先行する二人の速度は全くといっていいほど衰えを見せなかった。エドも走る速度はアトラに遜色なかった。
襲い来る魔物たちを蒼太は片手剣で真っ二つにしていく。ディーナは走りながら矢を放ち、しかし全て敵に命中させていく。討ち漏らしというほどのものではなかった、息絶える寸前の魔物に古龍がとどめを刺していく。
この三者の動きは見事な流れであり、魔物たちは次々に倒されていく。付け加えて、蒼太は風魔法を使い、洞窟内のマッピングをしているため、迷うことなく真っすぐ階段へと進んで行く。
「ちょ、これ、速いよ!」
泣き言をいいながらもレイラは置いていかれまいと走り続ける。この段になってはアトラもフォローはいれず遅れないように走り続けるだけだった。
それでも何とかついて行くあたりがさすがだったが、目的の階にたどり着いた頃にはレイラの息も絶え絶えだった。
「到着っと」
目的の階への階段を下りたところで蒼太は軽やかに足を止める。
「だいぶ早く着きましたね」
隣で涼しい顔をしているのはディーナだった。
「はぁ、はぁ、はぁ、ちょっと、やすま、せて」
そして、ただ走ってついてきていただけだったのに息が切れているレイラはその場に座り込んでしまう。
「仕方ない、いったん休憩するか」
蒼太はカバンから飲み物を取り出すとみんなに配っていく。配り終えた蒼太は立ち上がる。
「あ、あれ? ソータさんどこか行くの?」
「あぁ、目的のものを集めにな。俺が集めてくるから終わったら戻ろう、みんなは休んでいて構わないぞ」
レイラの質問に答えた蒼太は、ギルドの依頼を達成するためにフロアの散策に向かった。
依頼の品はそう難しいものではなく、蒼太はすぐに集め終えてみんなのもとへと戻ってきた。
「あ、ソータさん。早いですね」
「あぁ、すぐに見つかったよ。数も少し多めにとってきたから問題はないはずだ」
蒼太が亜空庫から取り出して素材の一つを見せようとすると、そこへ誰かが階段を下りてくる足音が聞こえてきた。
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