表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

260/421

第二百五十九話

前回のあらすじを三行で


情報収集開始

喜ぶ司書たち

色々わかった

 翌日


 一行は昨日と同じように朝から二手に分かれて行動していく。蒼太たちは昨日の続きをするために図書館へ、レイラたちは冒険者ギルドへ依頼を受けに向かっていた。

 蒼太とディーナの調べ物は順調に進み、帝国に関する情報は集まってきていた。

 レイラたちの依頼も昨日とはうってかわってすんなりと達成することができていた。


 昼過ぎにそれぞれの用事が終わり、途中で合流することができたため、蒼太たちは全員で食事をしようとゴルドンの店で少し遅めの昼食をとろうと話していた。

「ん? なんだろ、何かあったのかな?」

 その移動をしている一行の前方が何やら騒がしい様子だったため、レイラが遠くに目を凝らしながら疑問を口にしていた。

「……街の入り口に人がたくさん集まっていますね……小人族の方々のようです」

「一人二人ならわかるが、大人数でいるとなると変だな。集落から出てくることはそうそうないはずだ。行ってみよう」

 人より目のいいディーナが現状を伝えると蒼太の興味は小人族へと移ったため、昼食は一旦お預けとして街の入り口へと向かうことにした。


「た、助けてくれ!」

「街に入れてください!!」

 すっかり怯えた様子の百人以上はいるであろう大勢の小人族たちは街に入りたいと入り口を管理する衛兵にそれぞれ必死に詰め寄っていた。

「ちょ、ちょっと落ち着いてください! 入国審査を、あと身分を証明するものをお願いします!」

「そんなもの持ってない! 俺たちは命からがら逃げてきたんだぞ!」

 衛兵は手順通りに対応しようとするが、小人族の面々は口々にそれどころではないと数多く入り口に押し寄せていた。


「これは一体……」

 蒼太たちがその様子を見ているとその中に見知った顔がある。対するその顔の持ち主も蒼太が目に入ったのか助け舟といわんばかりに表情が変わった。

「おーい、ソータ殿!」

「あいつは、最初に行った集落の長か……これは何とかしないとなんだろうなあ」

 蒼太に声をかける長、そして衛兵たちはすがるような視線を送っていた。


「あの、すいません。知り合いならちょっと話してもらえませんか? 中にいれてくれと言うだけでこちらの話を聞いてもらえないんです。私の権限では身分の確認もせずに勝手に通すわけには……」

 蒼太は衛兵の言い分も理解できたため、やれやれといった表情で頭を掻きながら長に近寄って行く。

「やはりソータ殿! 何とか我々を助けてもらえませんか?」

 長は蒼太を近くで確認したことで、これで助けてもらえるかもしれないと希望を抱く。

「仕方ないな、それで一体何があったんだ? と聞きたいところだがまずはこの状況を何とかしないとだな……まず悪いが無条件で街の中に入れることはできないそうだ」


 蒼太の言葉に長はショックを隠しきれない。周りの小人族たちもざわざわと不安そうな様子だった。

「そんな! なんとかなりませんか!?」

 そう言われても、それが蒼太の心境だったが衛兵達と小人族の視線を一身に受けていては投げ出すこともできなかった。

「そうだなあ……領主に相談をしてみるか。お前たちは街の外に待機していてもらえるか?」

「……仕方ありませんな、ソータ殿何とぞよろしくお願いします」

 ここでダダをこねても解決しないだろうと考えた長は蒼太に任せるのが、今の段階で一番の近道だと判断していた。


 長は率いてきた小人族に話をし、一旦は中に入りたい気持ちを抑えて街の外に移動していく。

「あ、ありがとうございました。一度にあんなに来ることがなかったもので、もうどうしていいやら」

 問題が一時的であっても解決したことに衛兵が蒼太に礼を言う。この街は人の出入りが少ないわけではなかったが、それでも同時にこれだけの人数が来ることは彼が衛兵になってから一度もなかった。

「気持ちはわかるが、もう少し冷静に対応できるとよかったな……ふう、俺は領主の館に行くからこいつらのことは頼んだぞ。一応は街の外で待機してくれるとのことだが、それでも困ることはあるだろうからな」

「了解しました!」

 蒼太が解決への道を示してくれたことで感謝の念を抱いており、それはどこか尊敬が混じっていた為、彼は敬礼で蒼太たちを見送る。


「一応食料くらいは用意してやるか……」

 蒼太は小人族が待機する場所に移動する。

「おぉ、ソータ殿。どうかしたか?」

「腹が減ってるだろうからこれでも食っててくれ」

 亜空庫から果物が大量に入った樽をいくつか取り出して渡す。

「これは助かる!! みんなソータ殿が食料をわけてくれた、全員分あるから順番に並んでくれ!!」


 その様子を見て大丈夫だなと頷くと、ここでやっと蒼太は仲間に振り返る。

「と、いうわけで俺はこの街の領主エルバスの屋敷に行ってくる。みんなは昼食にいってもらって構わないぞ」

「ついて行っても大丈夫なら私はソータさんと一緒に行きます」

 そっと首を横に振り、心配そうに小人族を横目に見ながらディーナは蒼太とともに行くことを選ぶ。

「あたしはご飯かなあ、依頼がんばっちゃったからお腹ペコペコー」

 身体を動かしたことによりお腹の虫がなり始めたレイラは腹を押さえて、食事に行くことを選ぶ。


「そうか、じゃあディーナはついてきてくれ。レイラたちはゴルドンのところに行っててくれ。早く終われば俺たちも向かおう、終わらなかったら帰ってていいぞ……ほれ、これが家の鍵だ」

 魔法の鍵ではなく、通常の玄関の鍵は蒼太が複製しておりその内の一つをレイラへと投げて渡す。

「はーい、じゃあ二人とも行こうか」

 それを軽々とキャッチしたレイラはアトラと古龍をお供に食事へと向かった。

「さすがに領主の館に行くのにあいつらを同行させるわけにはいかないからなあ。許可はおりそうだが、だからこそな」

「そうですね、それに……レイラ一人じゃちょっと不安です」

 レイラたちを見送りながらディーナは蒼太とは別の意味でアトラたちを連れて行かないことに賛成していた。


 蒼太とディーナは領主の館に向かった。入り口ではいつもの衛兵がおり、エルバスへの取次ぎをスムーズに行ってくれた。

 応接室に通された二人が待っていると、ほどなくしてエルバスがやってくる。今回もエリナを伴っての登場であった。

「やあやあソータ殿、とそのお連れのお嬢さん。よくぞ来てくれた、ささ座っとくれ」

「エルフのお姉さん、はじめまして、領主エルバスの孫エリナと申します。よろしくお願いします」

 ふんわりと自然な笑顔と共にしたエリナの礼は礼儀正しくも柔らかく、ディーナも自然と笑顔になっていた。

「はい、よろしくお願いします。私の名前はディーナリウスです、ディーナと呼んで下さい」

 領主の孫として立派に挨拶をしている様子に内心誇らしさを感じながらエルバスもそのやりとりを微笑ましく見ていた。


お読み頂きありがとうございます。

誤字脱字等の報告頂ける場合は、活動報告にお願いします。


ブクマ・評価ポイントありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿始めました。 五百年後に再召喚された勇者 ~一度世界を救ったから今度は俺の好きにさせてくれ~

本作「再召喚された勇者は一般人として生きていく?」コミカライズ連載中!

配信は電子コミックサービス「 LINEマンガ 」、漫画担当は濱﨑真代さんとなります。

コミカライズ2巻は8月7日発売です! i484554

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ