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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第二十五話

 翌日、約束通り昼前に蒼太は領主の館の応接室へとやってきていた。

 少し待たされたが、程なくしてエルバスがやってくる。今日はダンではなく、執事服の男性がついてきた。


「待たせてすまんかった。エリナと一緒にリハビリをしておっての」

「いや、茶菓子がうまかったから構わない」

 そう言いながらも出された菓子に手を伸ばす。


「そういってもらえると助かるよ」

 蒼太が気を使ったと思ったエルバスは微笑みながらそう言う。

「それで、報酬の話だが俺はあの家の足らない分の金貨を出してもらえれば十分なんだが……金貨200枚だったかな」

 蒼太の言葉にエルバスは驚いて身を乗り出す。

「とんでもない! 孫娘の、エリナの命を救って頂いて、しかも貴重ないやしの葉まで用意してもらったというのに、金貨200枚では全く足りません!!」

 エルバスの迫力に蒼太は気おされ、菓子を食べる手を止める。


「そ、そうか。俺は構わないんだが……まあ貰えるものは貰っておこうか。何をくれるんだ?」

「……それなんだが、一体何を渡せばいいのか悩んでおる」

 エルバスは腕を組み難しい顔をする。

「ちなみに、爵位とかあんたのとこで雇われるとかそういうのはなしだからな。あと人もいらん」

「……うーむ、逆に聞くが何か欲しいものはあるかの? 家以外で」


「そうだなあ……」

 今度は蒼太が腕を組み考え込む。

「とりあえず何でも言ってくれ、用意出来るかどうかはその後返答するから」

「うーむ……物じゃないが、あんたの権力の及ぶ範囲でいいから俺のことを守ってくれると助かる。恐らく他の冒険者や貴族ともめることもあるだろうから」

「ふむ、それならお安い御用じゃ。ふむ……それと家の代金に金貨200枚、更に金貨1000枚を追加報酬で出そう。それでもいやしの木の葉の料金には程遠いじゃろうが、その分は何か困ったことがあれば力になるということでとりあえず勘弁してもらえると助かる」


 蒼太は頭を掻く。

「いや、勘弁も何も元々俺は金貨200枚でいいと言ったんだが……まあ貰えるものはもらっとくよ。あー、それから俺のことは他の奴に漏らすなよ。あんたはもちろんだが、孫娘もこの家の使用人もあのダンって騎士も含めて全員だ」

「それはもちろんじゃ。エリナの命の恩人の情報を漏らすことは決してせん」

 エルバスは厳しい表情でそう言ったが、蒼太は話半分で聞きながら、人の口に戸は立てられないということわざを思い出していた。


 人が多ければそれだけ情報は漏れやすい、これくらいなら大丈夫、これならばれない、そんな心の甘さからいつの間にか広まってしまう。

 だが、その時こそ先ほど言った「守ってくれ」という約束が効力を発揮するとも考えていた。


 噂として漏れた場合、信憑性を確かめるために絡んでくるものも出てくるだろう。冒険者なら色々やりようがあるが、貴族の手の者がやってきた場合には面倒なことになる。

 その時に、伯爵からお話(・・)をしてもらうだけで、収まる話もあるはずと考えていた。

 全てが無理であっても、回避できる可能性を少し増やすのが狙いであった。


「じゃあ、そういうことで頼む。破った場合はどうなるかは知らんからな……それと、金の方は今貰えるのか?」

「あぁ、用意しておるよ。どんな条件を出されてもこの金貨だけは渡そうと思ってたんじゃ。足らないと言われてたら、その分は後日になってしまったがの」

 エルバスの視線を受け、後ろに控えていた執事がテーブルの上に金貨を置く。

「ソータ様、こちらが金貨1200枚になります……それから、私からもお礼を申し上げます。お嬢様をお救い頂き真にありがとうございます」

 執事は深々とお辞儀をする。


「礼はいらん、と言っても気がすまないんだろ? 受け取っておく」

 執事が頭を下げたのを見るとそれだけ言い、金貨を鞄にいれる。

「さて、報酬の話も終わった。俺はこれで帰らせてもらおうか」

 蒼太は腰を上げるが、エルバスがそれを止める。


「待ってくれんか、エリナが君に会って改めて礼を言いたいとそうなんじゃ。会っていってくれんかの?」

「ふぅ、仕方ないな。じゃあ部屋に寄ってから帰ることにしよう」

 部屋の場所を覚えていた蒼太は、エリナの部屋に向かおうと応接室の入り口へと向かう。

 両開きのその扉は蒼太が開けようとする前に開かれていく。


「こんにちは、ソータ様。昨日はエリナのために薬を持ってきて頂きありがとうございました」

 そこにはスカートの両端をつまみながらお辞儀をするエリナがいた。

「もう歩けるのか。元々の筋力が高ければそれも可能か……だが、まあ無理はするな」

 そう言いながらエリナの頭に手を乗せると、エリナは少しくすぐったそうな表情をする。


 蒼太の手が離れると、とびきりの笑顔で返事をする。

「はい、まだおうちの中だけで練習してます。お外に出るのはもっと元気になってからにしますね」

「あぁ、がんばれよ。それじゃ俺は行く、また機会があれば会おう」

 そう言うとエリナの横をすり抜け部屋を後にし、領主の館を出て行く。


 エルバス、エリナ、執事の三人は後を追いかけ玄関まで行き、深いお辞儀をして蒼太を見送る。

これで石熱病関連はとりあえず終わりですかね。

次は家の話になるかな?

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