第二百五十六話
前回のあらすじを三行で
レイラは冒険者ギルドに
掲示板見てたら絡まれた
レイラちょっときれる
「それで、どこに行けばいいんだろ?」
意気揚々としてギルドを後にしたレイラは、同行者の二人にその質問を投げかける。
『知っててその依頼を受けたのでは?』
アトラが驚いて返事を返す。
『まさか……何も知らないで受けたのかのう?』
やれやれと古龍は呆れていた。
「えへへ、勢いで受けてみたものの、この魔物がどのへんにいるか確認してなかったなあって」
先ほどまではしっかりとした冒険者のように見えていたが、蒼太とディーナがいないため今回のようなミスが出てしまった。受けた任務のランクが低いということもあってすっかり油断していたようだ。
『戻って確認したほうがいいのでは?』
「うーん、でもなあ……」
アトラの質問にレイラは何かを悩んでいる様子だった。
『何か問題でもあるのかのう?』
「いや、問題っていうか……なんか恥ずかしくない?」
レイラが口にした理由にアトラと古龍はすっかり呆れていた。
『そんなことを言っている場合なのかのう? このままでは依頼失敗になってしまうぞ』
古龍の指摘にレイラは唸ってしまう。
「うーん……」
『失敗したほうが恥ずかしいかと。ソータ殿やディーナ殿に、恥ずかしくて情報を聞けなかったから依頼失敗したと報告することを考えたら……』
追い討ちをかけるようにアトラがそこまで言うと、レイラは早足で冒険者ギルドへと戻って行った。
受付の女性は最初驚いた顔をしていたが、事情を話すとレイラの力になってくれた。まず、彼女は依頼対象となる魔物の特徴を知ってもらうため、近隣の魔物の図鑑を持ってきた。そして、その生息図も一緒も見せてくれたので目的の魔物の特徴・居場所の両方の情報を手に入れることができた。
「ありがとうございました」
レイラが深く頭を下げて礼を言うと、受付の女性も同じく頭を下げてレイラのことを微笑ましい表情でみていた。
「またいつでも来て下さい」
「はい、また来ます! それじゃいってきます!」
元気な挨拶をして再度出て行くレイラに、ギルドの職員たちは手を振って見送っていた。
「さあ、今度こそ出発っ!」
行く先は、トゥーラを出て北西に進んだ平野だった。大した依頼ではなかったが、蒼太やディーナに頼らず自分一人で行動するのは初めてだったため、好奇心からわくわくしていた。アトラと古龍がお目付け役としてついていたが、レイラにとってはあの二人に頼らなくてもひとりでできるんだということを示せるいい機会であった。
それをわかっているからこそ、アトラと古龍は動き出しに関してはレイラに任せるようにしていた。
レイラたちは街を発つと目的の場所へと向かっていく。
平野にたどり着くとレイラは目標の魔物を狩りはじめる。彼女が選んだ依頼とはこの平野にいるホーンラビットの角の採集だった。ホーンラビットは広大な平野のあちらこちらに生息しており、平野の中に踏み込まなければ襲われることもなかった。
見た目の特徴としては、大型犬サイズの身体に大きな角が一本頭の中央に生えている。その身体の大きさの割りに動きが素早く、角による攻撃は強いため一人でこの魔物を倒すことができれば冒険者として駆け出しを卒業できるといわれている。
「よっし、とりあえずあたし一人でやってみるから二人は手を出さないでね!」
レイラはそのことを他の冒険者が話していたのを聞いており、訓練を行っている今の自分であればこの程度の依頼は簡単にこなせるであろうと考えていた。
『ふむ、まあ装備もしっかりそろえているし大丈夫だろうのう』
この平野に来てから、レイラは装備をマジックバッグから取り出してフル装備にしていた。
『お気をつけて、レイラ殿』
アトラの声に手をあげてこたえると平野の中に入っていく。
レイラは周囲の気配を感じ取りながら、ゆっくりと歩を進めていく。気配を強く出してしまってはホーンラビットに逃げられてしまうため、気配を抑える方法を自然と行っていた。
『どう見る?』
レイラの様子を離れた場所から見ていた古龍がアトラに尋ねる。
『ふむ、実力的には何も問題はないと思うが……実力がありすぎることがあだになる可能性も』
その返答に古龍は頷く。力が強すぎるがゆえに、細かいコントロールができないのではないかと考えたためだった。
再度視線をレイラにうつすと二人の心配は的中していた。
「あ、あれ?」
目的のホーンラビットを発見し、訓練同様に攻撃をしたレイラであったがその威力が強すぎたためホーンラビットは四散してしまった。
「よ、よーし、次はちょっと手加減をしてっと」
威力が強すぎたと反省したレイラは、力の加減をし次の標的へと攻撃を繰り出した。
しかし、次の攻撃も強すぎたため先ほどと同様の結果になってしまった。
「お、おかしいなあ。こ、今度こそ!」
更に力を加減して、別のホーンラビットに攻撃をするが今度は力が入っておらず避けられてしまう。
「もー! 避けるなあ!!」
避けられたことに腹をたてたレイラが再度攻撃をすると、これまた力が入りすぎてやりすぎてしまった。
『どうにも細かい力加減というものが難しいようだのう』
『不器用なのか、強者しか相手にしたことがないゆえなのか……』
二人は散々な結果をやはりこうなったかと、呆れを通り越し遠い目でみていた。
「もー! なんなのよ! 弱すぎるよ!!」
今度は癇癪をおこし、ホーンラビットにあたりちらしていた。
『はあ、あれではダメだな』
アトラが見るに見かねてレイラへと近づいていく。
『声をかけるとするかのう』
古龍もアトラに続いた。
『レイラ殿』
「なにさ!!」
イライラしているレイラはそのままの勢いでアトラにも槍を向けてしまった。
『……』
当たらないことがわかっていたのでアトラは無言で目前に迫る槍の穂先を見ている。
「あっ、ご、ごめんなさい!」
自分のしでかしたことに気づいたレイラは慌てて頭を深く下げ謝罪した。
『そんなに興奮していては、魔物を上手く倒すことはできない』
アトラは向かって来た槍のことは気にせずに、静かに事実だけを告げる。その瞳にはふざけた様子などなく、真剣にレイラを見すえていた。
「うっ、だ、だって……」
言い訳をしようとしたが、アトラから鋭い視線を受け口ごもってしまう。
『お手本を見せてやると良いのではないかのう』
いつも間にか二人に近寄ってきた古龍の提案にアトラはしばし考えたのち頷いた。
『そうだな、私のほうで一つ手本をお見せしよう』
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