第二百四十話
前回のあらすじを三行で
じゃあ、明日出発するよ!
古龍、で、でかい!?
森を越えていきましょう
森から関所へとゆっくりと向かい、前回同様途中で昼食休憩をとりながら進んだため、到着したのは夕方になってからだった。
「そこのやつら止まれ!」
前回同様関所の衛兵たちは物々しい様子だった。みないつでも武器を出せるように構えている。この場の責任者の男に顔で合図され、衛兵の一人が馬車の中を覗いて確認する。
「隊長、中には女性が四人、エルフの方が一名に人族が三名、それにドワーフ族が一名です!」
確認した男は声を張り、隊長へと一行の人数を伝える。彼は若く、蒼太たちがエルフの国を後にしてからこの関所の勤務になったため蒼太はもちろん、ディーナの顔を見たことがなかった。そして、カレナ一家は三人とも偽装の腕輪をつけていた。
「エルフが一名……? し、失礼しました!」
隊長と呼ばれた男も馬車の中を確認する。そこには見知った顔があったため、彼は敬礼をしディーナへと挨拶をした。
「ディーナ、あれを出してくれるか?」
ディーナは関所の隊長に一礼してから馬車を降りるとカバンから取り出した短剣を蒼太へと渡す。
「どうぞ」
蒼太の意図をくんだディーナに蒼太は頷きながらそれを受け取った。
「この間も会ったが、あんたがここの責任者だろ? これを見てくれ」
関所の隊長に向かって蒼太は以前エルフの王からもらった短剣を見せた。
「しょ、承知しております。ディーナ様一行ですね、この短剣を持つ方たちはお通しするよう言われておりますのでどうぞお通り下さい」
短剣とディーナの顔を見て関所の隊長は蒼太の顔を思い出し、慌てて通行の許可を出した。その場の衛兵たちに指示を出すと、次は奥の入国管理所へと走っていき、通行の許可の話をつけにいく。
事情を知らない衛兵たちは、その様子を怪訝な表情でみていたが隊長の慌てた顔を見て何かがあるのだろうと納得し、蒼太たちの邪魔をしないようにと道をあけていく。
「さあ、行くぞ」
蒼太は当然のように進んでいくが、ディーナ、ローリーを除く蒼太の仲間たちは驚いていた。
「あ、あんた一体何をしたんだい?」
この国の通行許可はなかなかおりないことを良く知っているカレナが一番驚いており、その質問を口にした。
「あー、ちょっとずるをしたんだよ。前にちょっともらったものがあってな」
蒼太は身を乗り出しているカレナに向かってチラリと短剣の王家のマークを見せた。
「それは!? な、なんでそんな物を」
「持っているのかって? ここだと色々な耳があるから落ち着いたところで話そう。大した理由じゃないけどな」
物が物だけに蒼太は話を中断して、先に進むことを促した。カレナもそのことに思いいたり頷くと馬車の中へと戻っていく。
ほとんどノーチェックで関所を通っていく蒼太たち一行は、上方にいるエルフたちからも注目されていた。自分たちの存在が注目されていることを感じ取っていたカレナ一家は偽装の腕輪を使っていても安心できないらしく、身をひそめていた。
ただし、これまた一名を除いて。
「うーん、なんか久しぶりの帰国だなあ」
ローリーは御者台に近寄りそこから顔を出して周囲を眺めていた。
「あたしは初めて来るからわくわくだー!」
レイラは手綱を握ったまま、わくわくと身体を揺らしていた。その興奮は神聖樹が見えてきたところで最高潮に達する。
「な、なにあれ!! すごい! ソータさん、ディーナさんすっごい大きい木があるよ!!」
「あれは神聖樹です。私がいた頃にはもっと小さかったんですが、長い月日のうちにあそこまで成長したみたいですね」
ディーナが解説をしたが、レイラの耳にはその半分程度しか届いていなかった。
また、職人たちも同じように驚いておりアントガルとボグディは歩きながらも口をぽかーんとあけている。アリサも馬車の中から神聖樹を見て同様に口をあけていた。
そこからは何の障害もなく順調に進み、一行はエルフの国の首都『ギルノール』へと到着した。
「さて、じゃあとりあえずナルアスの工房に向かうか。いればいいんだが……」
「うーん、お城に呼ばれていなければ多分師匠はいると思うよー。基本は研究してることが多いからね」
最近のナルアスとの生活はローリーが一番長いため、その言葉を信じて工房へと向かうことにする。
「まあ、いなかったとしても鍵は持ってるから安心してね」
そして、この言葉が背中を後押しする。
「ナルアス、アレゼル、いるか? 入るぞ」
ナルアスの家の扉は開かれており、声をかけてから中に入って行く。地下におりるとリビングから声が聞こえてくる。この段階でカレナ、ローリー、エルミアの三人は偽装の腕輪を外していた。
「こっちにいるのか」
蒼太は馬車を前回と同じ場所においておくとエドの頭を撫でてからリビングの扉をノックする。それに反応して中から返事が返ってきた。
「はーい……誰だろ?」
その声はアレゼルだった。
「よう、アレゼル。今度は大人数で来てみたぞ」
蒼太に声をかけられたアレゼルは目を見開いて驚いている。
「アレゼルどうした……ソータ殿! ソータ殿ではないですか!!」
アレゼルの頭越しに扉の向こうを覗いたナルアスが蒼太に気づき声をあげた。
「やっほ、ただいま」
「師匠、お久しぶり」
今度は蒼太の肩越しにローリーとカレナがナルアスへと声をかける。
「ローリーに……カレナ!!」
ナルアスの驚きは蒼太が会ってから今日までで最大のものだった。
「えっ!? か、カレナ様!!」
アレゼルはカレナにも憧れがあり、その本人が目の前にいることに驚いて、それ以上は口をパクパクとさせて声がでなくなっていた。
「あー、とりあえずこの二人以外にも人数いるから中に入れてもらっていいか? 全部で……九人で来ている」
その人数を聞いて、ナルアス、アレゼルの二人は再度驚いたが、蒼太の意見も最もだと中へと一行を通した。
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