第二百三十七話
前回のあらすじを三行で
全員合流
それぞれの予定
蒼太はギルドの依頼
翌朝、朝食を終えるとそれぞれ予定が分かれているため別行動となる。職人三人が道に迷わないかと心配したが、一度通った道は忘れないというボグディの特技によってそれは解決されていた。
エドの訓練については、事前に蒼太が説明しエドも納得していた。蒼太と旅をしている中でエド自身が徐々にその力を増していくのを感じ取っていた。それは古龍もアトラも同じだったようで、今回のエドの訓練へと繫がっていた。
念のため蒼太は昨日の言葉通りに回復薬を何本か用意して置いていった。
蒼太たちは依頼を受けるため、朝から冒険者ギルドへと向かう。一行がギルドの中に入ると、どよめきがおこる。昨日登録に来た際も二人の容姿にフロアにいた冒険者たちは目をひかれていたが、今日はそこに男が混ざっているということで余計に注目されていた。
そして、その男というのが一時期注目されていた新人冒険者の蒼太だったため、それを覚えている者は余計に驚いていた。
「今日もいつも通り騒がしいな……とりあえず二人に合いそうな依頼を探そう。念のためもう一度言っておくが、二人の実力に見合う依頼じゃなく、ランクに合った依頼を選ぶんだぞ?」
「承知してます」
「りょーかい」
ディーナは真面目に、レイラはどこか軽い口調で返事をしていた。
「どれがいいかなあ」
「FランクかEランクの依頼は……この辺ですかね」
ディーナが指し示したあたりに低ランク向けの依頼が掲示されており、他の冒険者たちは見向きもしないため選び放題になっていた。
「簡単な依頼だったらいくつか受けても大丈夫だぞ」
悩んでいる二人に蒼太が後ろから声をかける。パーティで一つの依頼を受ける、と考えていた二人にはいい提案だった。
「じゃあ、あたしとディーナさんで一つずつ選んでそれを一緒にやろうよ」
「いいですよ」
二人は順番に依頼を見て、首を捻ったり、うーんと唸ったりしながらもそれぞれが依頼を選んでいく。
「これで!」
「決まりました」
決まったところで、それの内容を覚えて受付へと向かう。空いている列に並んだはずだったが、今日も受付のカウンターに立っているのはアイリだった。
「いらっしゃいませ、ディーナさん、レイラさん、本日は早速ご依頼の受領ですか?」
アイリは親しい者に対する柔らかな笑顔で受付をする。昨日ディーナとレイラを担当したのもアイリで、その際に打ち解けており仲良くなっていた。
「はい、今日は三人で依頼を受けようと思って来ました。この二つをお願いします」
「アイリさんよろしくー」
ディーナが依頼内容を書いたメモをアイリへと渡す。
三人の仲の良さに蒼太は内心戸惑っていたが、女性同士通じるものがあるのだろうとそれを表には出さないようにしていた。
「くすっ、昨日レイラの登録の時の担当もアイリさんだったんですよ」
しかしディーナにはばれていたようで、そんな補足が入った。
「あ、あぁそうだったのか」
内心を察せられた蒼太は焦り、どもってしまう。なぜかいつもディーナにはばれてしまうので彼は苦笑して誤魔化すしかなかった。
「はい、どちらも大丈夫ですよ。お二人のランクにあったものだと思います……えっとソータさんもご一緒に受けるということでよろしいですか?」
Dランクの蒼太が入ることでパーティランクが上がるため、アイリが確認をする。
「あぁ、一応三人で受けるつもりなんだが……大丈夫か?」
蒼太は急に話を振られたので何か問題があるのか、そう考えていた。
「Fランクがお二人、Dランクがお一人なのでEランクパーティ扱いになります。持って来た依頼が二つともEランク依頼なので問題はありませんね」
パーティ登録し実績を残せば、個々人のランクにとらわれずパーティとしてのランクが認定されることがある。しかし、この三人でのパーティは初めてなので、平均をとってEランクとなるのだ。
「それじゃ、この三人でのパーティ登録とそのパーティでの依頼受領を頼む」
蒼太たち三人はそれぞれギルドカードを提示する。
「承知しました」
アイリは手馴れた様子で依頼の手続きをしていく。
「はい、完了しました。これが依頼受領証になります。達成報告の際に、一緒にお持ち下さい。念のため言っておきますが再発行は有料になりますので、その辺をご了承下さい」
その念押しに三人は頷く。
「それではお気をつけていってらっしゃいませ」
アイリの見送りの声を受けて蒼太たちはギルドを後にする。
「それじゃあ、早速行ってみるか」
「はい」「うん!」
蒼太の言葉に二人は返事をし、蒼太のあとをついていく。
二つの依頼はどちらも魔物の素材収集であった。どちらの素材も蒼太は持っていたが、このメンバーで新しく素材を収集し依頼を達成することに意味があるため、それは口にせず収集場所へと歩を進めた。
★
蒼太たちが依頼に出かける一方で、職人三人は今日もカレナの店を訪れていた。カレナ、ローリー、アントガル、ボグディ、アリサは今日もリビングでテーブルを挟んで向かい合い、ディスカッションを交わしていた。
「昨日も言いましたが、それだと大掛かりになりすぎる。今回は依頼者が依頼者だから大丈夫かもしれませんが、一般的に流通させるにはあまりにも高価だ!」
今回は蒼太たちのために作るが、職人たち、特にボグディはこの技術をもっと一般的に普及させていきたいと考えていた。
「あんたの言いたいことはわかるけど、そもそも私たちが手伝うということがどういうことかわかっての言葉なのかい?」
カレナ、ローリー、そして二人の師匠であるナルアス。この三人は今世界にいる錬金術師の中でもかなり高い技術を持つ錬金術師であることは明白であり、仮に今回の蒼太の求める装備が作れたとしてそれを他の錬金術師が再現できるかというと疑問符が浮かぶ。
「わかっています。でも、お金のある人にだけ作れる装備じゃ意味がないんです。もっと一般的にも使えるような物じゃないと……」
ボグディは今回の依頼の更にその先を見ていた、がカレナやアントガルはまずは今目の前の問題を解決して作り上げないと、その思いに食い違いが生まれていた。
「ふう、まああんたの心意気もわからないではないよ。そのあたりのかかるコストの問題はソータや私たちの師匠がいる時に考えようじゃないか。今、ここでこの面子ではこれ以上出ないかもしれないからね」
カレナの提案は最もだった。現状、論議はなかなか進まず、ここに新しい風をいれることで話が進む、誰もがそう期待していた。
「さあ、出かけるための準備をしないとだから私はこのへんで出かけさせてもらうよ」
この街を空けるためにカレナがやらなければならないことがあるため、そこで話し合いは中断することとなった。
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