第二百三十一話
前回のあらすじを三行で
作業終えてきた
空飛んで移動
道が違う?
数日経過の後、蒼太たち一行は街にたどり着く。街中に入るため蒼太とレイラは偽装の腕輪を身につけておく。
「ここが俺の住む家があるトゥーラの街だ」
レイラ、アントガル、ボグディ、アリサはその紹介にぽかんとしている。入場のチェックの際から薄々何かが違うとわかっていたが、街に入ったことでそれは確信に変わった。
「エルフの国は?」
アリサが四人を代表して口にしたが、蒼太は笑顔で両手を広げるだけだった。
「とりあえず、お屋敷に行ってみましょうか」
今はディーナが御者台にのっており、エドに話しかけ屋敷への道を選択した。
「頼む、フーラのとこに寄って鍵をもらってくれるか?」
「わかりました」
二人のやりとりは戸惑っている面々を置いてけぼりにしたまま進んでいく。
『ソータ殿、私は一度来ているから問題ないが、四人には多少の説明があっても良いのではないか?』
アトラが見るに見かねて蒼太へと進言した。
「まあ、その驚いた顔が見てみたかったから黙ってただけなんだけどな。ただまあ、家に帰りたかったからこの街に来たわけじゃないんだ」
蒼太はにやりと笑いながら言外に家に帰る以外の目的があると告げていた。それは答えにはなっていなかったが、自信があるような蒼太の表情に何か意味があるのだろうと、職人たちはどこか納得させられてしまう。
フーラの店に寄ってから家に戻り門までたどり着いたところで、職人三人は驚かされる。家の大きさ、は蒼太のパーティメンバーの凄さから予想できる範囲のものだった。しかし、門の施錠に使われている技術は未だかつてみたことのないものだったため目を丸くしていた。
「お、おい今のどうやったんだ?」
アントガルは蒼太が手に持つ鍵を指差して質問する。ボグディとアリサも何度も頷いていた。
「ん? あぁ、さっきの鍵か。これはマジックアイテムで、登録してある場所に対して鍵をかけるものだ。俺が昔手に入れたものでずっと使っていなかったけど、家を手に入れたから防衛のためにな」
そう言うと蒼太はその鍵をアントガルに投げて渡す。
「お、おっと……何の変哲もない鍵に見えるが……魔法式が組み込まれてるのか?」
アントガルは首をひねるとそれをボグディに渡し、ボグディも一通り確認するとアリサへと手渡す。
「うーん、わたしにもわからないわね。細工の技術はまあまあだけど、それはこの鍵の機能とは全く関係ないわよねえ……」
アリサも鍵から情報を得ることはできず蒼太にそれを返した。それを受け取る蒼太の顔はどこか照れているようでもあった。
「? ソータさんどうかしました?」
「い、いや何でもない。みんな入ってくれ」
ディーナだけは蒼太の変化に気づき声をかけたが、蒼太はそれを隠すように敷地内へとずんずん進んでいった。
エドはいつも通り自分の馬房へと移動し、そこで休息する。
その他の面々は家の中に入り、リビングへ通されるとそこで蒼太の話を聞くこととなった。
「とりあえず、今日はうちで休んでくれ。もちろん街に散策に出てもらっても構わない」
レイラは既にうずうずしていたため、蒼太の言葉を聞いてぴくんと大きく反応していた。
「俺たちも国から出たことなんてほとんどないから、この街を見て回るのはもちろん楽しみなんだが」
「そうです、この街に寄った理由を聞かせて下さい」
アントガルとボグディが蒼太に理由を尋ねる一方でアリサはレイラと同様に街への散策を楽しみにしていたため質問はせず早く出かけたい様子であった。
「約二名ほど早く出かけたいやつがいるみたいだから、簡単に説明をしておこう。俺がこの街に来た理由は二つ、一つはエルフの国に行くまでの途中にここがあるから久しぶりに家に寄ろうと思ったから。もう一つが最大の理由になるんだが、この街にはエルフの国にいる凄腕の錬金術師の弟子が二人いる」
それを聞いたディーナがぽんっと手を合わせる。
「なるほど、カレナさんとローリーさんですね……あー、そういうことですか」
ディーナは蒼太の考えを察し、蒼太はディーナに頷いてみせた。
「ど、どういうことですか?」
二人だけで頷きあう様子を見て、早く説明してくれとボグディが質問する。
「俺が最初に言った凄腕の錬金術師っていうのはエルフの国にいる。だがそれだと一人だ。あんたらは三人だろ? 今回作ってもらいたいものはかなりの難易度になると思っている。だからそれぞれに錬金術師がついたほうが円滑に作業が進むんじゃないかと考えたんだ」
その意見には職人三人も同意したようで、それぞれが納得した様子で頷いていた。
「まあ、声をかけてみないことにはどうなるかわからないが、それでも話してみる価値はあると思っているんだが」
「それはいいわね。頼みに行く時は私たちも一緒に行きましょう。職人同士通じ合うものがあるかもしれないし、何より力を貸してもらうのは私たちなんだからね」
アリサはボグディとアントガルの肩をぽんっと叩きながらそう言った。
「そうだね、何でもかんでもお膳立てしてもらうのは申し訳ない。それくらいは自分たちでも動くべきだ」
「あー、まあよくわからんが……まあお前たちが行くなら俺も行こう」
その様子を見て蒼太は、その姿勢に安心する。
「そう言ってくれると助かる。とりあえず興味は持ってくれるとは思う……ただ、エルフの国についてきてくれるかどうかはわからんな。分かれてもいいが、全員がひとところにいたほうが細かい調整もしやすいだろうし」
「そうね、サイズや希望なども逐次確認できたほうがいい物ができあがるはずよ」
今までの経験からアリサが蒼太の意見に賛同する。
「あ、あのー!」
そこにずっと口を閉ざしていたレイラが挙手をする。
「なんだ?」
「あ、あたしはもう出かけてもいいかな? 錬金術師の話って関係ないと思うし……」
後半はやや声のトーンが落ちる。
「あぁ、構わない。と言っても迷子になると困るからディーナ一緒にいってやってくれるか? 俺たちはカレナの店に行ってくる」
「わかりました。レイラさん、行きましょう」
「うん!!」
ディーナが笑顔でレイラに言うと、何倍もの笑顔でレイラは返事を返した。
二人が外に出るとそのあとを無言でアトラがついていった。
お読み頂きありがとうございます。
誤字脱字等の報告頂ける場合は、活動報告にお願いします。
ブクマ・評価ポイントありがとうございます。
再召喚された勇者は一般人として生きていく? 9/10発売です!




