第二百二十話
前回のあらすじを三行で
いつからグレヴィン?
アトラデカッ!
で、なんでゴーレムに?
「ここに来られる者は限られておる。その中でもわしの仲間じゃった者たち、もしくはそれに関係する者たちが第一候補じゃろ。ここにあるアイテムはどれも癖があるものや取り扱いが難しい物じゃからな、その説明にはわしが直接言うのが早いと思ったのじゃ」
本来のここに来た目的を思い出した一同はその理由に納得する。
「知り合いであれば、会うのも楽しみじゃしな。現にソータ、ディーナ、アトラの三人にはこうやって会うことができた」
その言葉からは親しい者に対する柔らかい口調になったのが伝わってきた。
「もし、他のやつが来てたら?」
「それはもう、わしが直々に鉄槌を食らわしてやるわい」
握りこぶしをつくって振りかぶるふりをしながら答えたグレヴィンからは全て蒼太がこの世界に戻ってくるであろうことを織り込み済みでの行動だったことが窺えた。
「……封印されていたディーナもそうだが、グレヴィンもなんで俺がもう一度召喚されると思ったんだ?」
いつの間にやら会話に復帰していた蒼太がディーナとグレヴィンへと質問を投げかけた。
その問いにきょとんとした表情でディーナとグレヴィンは顔を見合わせる。
「えっと、それは……」
「だって、のう?」
その後蒼太を二人とも注視する。
「な、なんだよ?」
「私はソータさんなら何とかして戻ってくるんじゃないかなあって信じてました。自力なのか、偶然なのかわかりませんけど……きっと戻ってきてくれるって」
優しく微笑みながらのディーナの言葉からは蒼太への強い信頼が感じられた。
「わしも似たようなもんじゃよ。わしは送還されるとこを見ておったしのう。信頼、というのもあったがそれ以上に戻ってきて欲しい、あの戦いをあんな結末のままにしないで欲しいというわしの願望もあったんじゃろうな」
しみじみとそういうグレヴィンに、うんうんと同意するディーナ。
「そういうものか……なんにせよ信じてくれてよかったよ。そのおかげで二人に会うことができたんだからな。いや、レジナードにも会えたから三人か」
「おうおう、レジナードにも会えたのか。ということは竜人族の聖地にも行ったんじゃの。そっちの嬢ちゃんは竜人族の娘さんか、うむうむ今の竜人族とも良好な関係を築けているようじゃの」
レイラがいることから、竜人族からも仲間を得られていることに満足していた。
「良好かはわからんが……色々と揉め事もあったしな」
蒼太はそう言うとレイラに視線を送るが、彼女は思い当たる節があるのか口笛を吹きながら視線を外していた。
「まあ、レジナードの弟のガインに会うことはできたよ。少し揉めた以外は概ね好意的な印象ではあったな」
「ならいい。本来ならソータは魔王を倒した英雄としてもてはやされてもおかしくないんじゃ、できれば辛い目にはあってほしくないからのう……そう思って真実を告げた物語も書いたんじゃが、うまくはいかなかった」
ゴーレムの姿のまま肩を落とす姿はどこか滑稽だった。
しかし、蒼太は真剣な表情でグレヴィンと向き合う。
「読んだよ。グレヴィンが書いた本は色々な場所で見つけることができた。獣人族の城の蔵書が一番多かったけどな……あんたがあれらを書いてくれたおかげで、俺を信じてくれるやつも少なからずいたよ。ありがとう」
そう言って、深々と頭を下げた。
「よ、よしてくれ。わしは当然のことをしただけじゃ、そもそもソータはこの世界の人間ではないのに、全ての罪をソータに被せるような物語が出回ってるおることに憤って、勝手に書いただけじゃ」
「あぁ、わかってる。だから、ありがとうだ」
今度は顔をあげて、笑顔で再度感謝の気持ちを伝えた。
「全く、お主は昔から変なところで律儀じゃな。礼は受け取っておこう……ところで気になったんじゃが、色々な場所で見かけたというのは一体……」
蒼太に質問するグレヴィンの声色はどことなく慌てているような空気をはらんでいた。
「色々はそのままの意味だ。グレヴィン、あんたが書いた本は何冊も見つけることができたんでな、持って行っていいと言われたものは全て所有してるよ」
グレヴィンはそれを聞いてまるで若い頃の汚点を知られたかのような恥ずかしさからかその場で転がっていた。
「うおおおおお、あれを読まれたのかああああ!!」
ところが巨大なゴーレムの姿で転がっているため、ちょっとした地震が起きているかのごとく床が揺れ、ちょっとした壁や天井の隙間からは塵が降ってきていた。
「おい、おい! 止まれ! 暴れるな!!」
蒼太が声をかけても、グレヴィンは止まる様子がなかったため蒼太は古龍に目配せする。
『ふう、仕方ないのう。これ、暴れるのをやめんか!』
古龍は声をかけると、ゴーレムを掴みその動きを止めた。
『ぬおおお、こやつ意外と、力が、強い、のう!』
先ほどの戦闘でも古龍を吹き飛ばすほどの力を持っていることはわかっていたが、今のゴーレムは無意識下で動き回っているため力にリミッターはかかっておらず、古龍でもその動きを制止するのは骨だった。
「仕方ない」
蒼太はそう呟くと、古龍に身体強化を付与する。
『おおおお、これは、力が沸いてくる!』
力がみなぎった古龍は、ゴーレムに再度掴みかかりその動きを止めた。しかし、それでもゴーレムの動きを止めるには労力を要したようで、古龍の呼吸は乱れていた。
「うおおおお、す、すごい力に止められた気が」
正気を取り戻したグレヴィンは、古龍の力に驚いていた。
『はあはあ、なんというパワーだ。すごいものを作ったもんだのう』
古龍はグレヴィンを止めたことによる疲労のため、端へ移動して休むことにした。
「ふむむ、まあ読まれてしまったものは慌てても仕方ない。それで、ソータは何のためにここに来たんじゃ?」
やっと本題に戻る。年齢でいえば竜人族のレジナードのほうが大きかったが、グレヴィンは年齢なみの風格があったため勇者たちのまとめ役になる。はずだったが、その実、話の脱線が多く、今のように突発的な感情の爆発がみられたため、結局は蒼太がまとめ役を買ってでていた。
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再召喚された勇者は一般人として生きていく? 9/10発売予定です。




