第二百十九話
前回のあらすじを三行で
蒼太VSゴーレム
蒼太一方的
本気の一撃?
「なんでこんな回りくどいことをしたんだ?」
蒼太の疑問は最もだった、ここに残ったのが蒼太でなければ怪我を負うことも考えられた。最悪の場合には命を失う危険もあったであろう。
「すまんな、起動から今の状態になるまで時間がかかるんじゃよ。最初の人格はゴーレムとして付与した擬似的なものじゃ。途中まではゴーレムの人格がわしの記憶を見ながら喋っておったんじゃ」
ゴーレムの姿で頭を下げる姿は滑稽だったが、蒼太は笑わずに目を細めた。
「それで……一体どこから今の状態になっていたんだ?」
「あー、いや、それはじゃなあ……足を斬られたあたりからじゃ……な」
気まずそうに言うグレヴィンは、無機物であるゴーレムの身体でありながら頬を雫が伝っていた。
「足を斬られたことは覚えてるんだな……つまり?」
蒼太の言葉にグレヴィンは天を仰いだ。
「えーい、わかったわい! 古龍と戦ってたあたりからこの状態になっておるわ!」
「やはりか……」
蒼太はカマをかけただけだったが、グレヴィンにそれを白状させることに成功した。
「かっはっは、まあいいじゃろ。成長したソータの力を見ることができたから、むしろよかったじゃろ」
うんうんと頷くグレヴィンに蒼太は肩をすくめたが、その表情はどこか嬉しそうだった。
「それで、本当にグレヴィンでいいのか? 数百年前に死んだと思っていたが」
「ふむ、こんな姿じゃが一応ソータたちと共に魔王と戦ったグレヴィンであっておるぞ。しかし、数百年とな? すまんが魔王との戦いからどれくらい経過してるか教えてもらっていいかね」
巨大なゴーレムの姿のグレヴィンは座り込み、腕を組んで蒼太に質問する。
「あぁ、俺たちが魔王と戦ったのは今から千年前らしい、俺自体は元の世界に戻って三年経過してから再召喚された。今回は他のやつらの召喚に巻き込まれた形だがな」
蒼太の答えにグレヴィンは驚きを見せる。
「そんなに経っておるのか……ソータも再召喚とはな。ところで、そっちの二人というかそのウルフと古龍がソータの今の仲間かね?」
「あぁ、他にも二人いるが。それよりもウルフって、あいつはアトラだぞ? あんたと契約してたんじゃないのか?」
アトラと聞いたグレヴィンは目を見開いた、ような感情の動きを見せた。
「アトラじゃと!? それにしてはでかくなったような……わしといた頃はもっとこう普通の狼サイズじゃったぞ?」
グレヴィンは昔の記憶を呼び起こし、アトラのことを思い出すがどの記憶を辿っても今のサイズよりも遥かに小さかった。
『私はアトラだ。グレゴール殿が亡くなってから私は様々な場所を旅した。そこで多量の魔素を吸収したり、他の魔物を倒したりしたことで成長したようだ』
「喋るのか!? これは……ものすごい進化を遂げたようじゃのう。じゃが、また会えてよかったよ」
ゴーレムであるため表情は変わらないが、声色の変化は感じ取ることができた。
『私も会えてよかった。今はソータ殿の獣魔として契約している、それは構わないか?』
「うむうむ、ソータなら何も問題はないじゃろ。ソータも幾分か成長しておるようじゃが、その顔立ちから根は変わっていないことがわかるからのう」
グレヴィンはその大きな頭を何度も縦に振り、アトラの判断を肯定する。
「話を戻そう、どうしてこんなことになっているんだ? さっきも言ったがあんたは死んだと聞いているぞ?」
蒼太の言葉にアトラも頷いている。
「うむ、その話じゃったな……お、誰か来たみたいじゃな」
アトラとは別の通路からやってきたのはディーナとレイラだった。
「ディーナにレイラ。無事だったか」
「ふむ、ディーナは昔の記憶のままじゃな」
どこかから聞こえた声にディーナはきょろきょろと辺りを見回す。
「ディーナ……信じられないかもしれんが、そのゴーレムがグレヴィンらしい」
「えっ?」
ディーナはポカーンとした顔でゴーレムを見つめる。
「うむ、久しぶりじゃな。ディーナはソータやアトラのように大きな変化はないようじゃが、それでも懐かしいのう」
ディーナは目を見開いたまま、涙が零れ落ちていた。
「ほ、本当にグレヴィンさんなんですか。ほ、ほんとに……うぅ」
「お、おぉ、泣かんでくれ。ディーナに泣かれるとわしは困ってしまう」
ゴーレムがおろおろと慌てるという光景は見ていて面白いものだったが、蒼太は一向に話が進まないので軌道修正する。
「とりあえず、ディーナはこれで涙を拭いてくれ。グレヴィンは何でこんなことになってるのか、いい加減説明してくれるか?」
蒼太はハンカチをディーナに渡し、グレヴィンに先を話すよう促す。
「そうだったのう、先に言っておくがわしが既に死んでいるというのは事実じゃ。このゴーレムは、まあ言わなくてもわかると思うが仮初めの身体なんじゃ。ゴーレムのエネルギー源はダンジョンにおる精霊たちから少しずつもらった魔力を集めて使っておる。じゃから、お主らと話していられるのも限定的なんじゃ」
ディーナはそれを聞いて、一層悲しそうな表情になる。
「でも、なんでこんなことをしたんだ? 人格の移植? 記憶の転写? それとも魂の移し変えなのか?」
「ふっふっふ、なかなかいいとこを突きよるわい。わしは自分の魔力や記憶をゴーレムの核に込めていったんじゃ、それによってわしの人格の一部を核に複製することに成功したんじゃよ。まあ、今のわしはグレヴィンそのものというより、グレヴィンの欠片といったところじゃろうな」
蒼太はそれを聞いて色々と思案に耽りだす。
「それでここまでの人格を? いや、だが元の核の品質次第ではいけるのか。だが……」
『ソータ殿? ……ソータ殿は声が届かないようだな。ふむ、それなら私から聞かせてもらおう。先ほどもソータ殿が聞いたがなぜそのようんなことをしたのだ?』
「あぁ、言っておらんかったな。すまんすまん、わしがゴーレムに人格の複製を行った理由じゃったな。それは……」
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再召喚された勇者は一般人として生きていく? 9/10発売予定です。




